【アルフレートの時計台】そこは邂逅の街。運命と出会うとき、あなたはどうする?摩訶不思議なファンタジー【小学校高学年以上】

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アルフレートの時計台 斉藤洋/作 森田みちよ/絵 偕成社

小児科医クラウスは、子どもの頃暮らしていた、なつかしいイェーデンシュタットに帰ってきた。さびれた公園にある壊れた時計台は、親友アルフレートとの思い出の場所だった。クラウスは、そこで再びアルフレートと会うことになる……

この本のイメージ 幻想的☆☆☆☆☆ 運命とは☆☆☆☆☆ 人生とは☆☆☆☆☆

アルフレートの時計台 斉藤洋/作 森田みちよ/絵  偕成社

<斉藤洋>
日本のドイツ文学者、児童文学作家。亜細亜大学経営学部教授。作家として活動するときは斉藤 洋と表記する。代表作は「ルドルフとイッパイアッテナ」「白狐魔記」など。

<森田みちよ>
愛知県生まれ。絵本の作品に「うとうとまんぼう」「ぷてらのタクシー」、児童書の挿絵に「どくろじるしのかいぞくドルク」「しりとりこあら」など。

アルフレートの時計台 斉藤洋/作 森田みちよ/絵 偕成社

 「ルドルフとイッパイアッテナ」「白狐魔記」の斉藤洋先生の幻想小説です。初版は2011年4月。

 ファンタジーと言うより、「幻想小説」と言ったほうがぴったり来る小説で、えもいわれぬ魅力があります。しかし、怖いお話ではないので、ホラーではありません。でも、ゴシック・ファッションや幻想的な物語が好きなら、惹きつけられる物語です。

 「ドローセルマイアーの人形劇場」では、数学者エルンストが数奇な運命でドローセルマイアーと出会うお話でしたが、「アルフレートの時計台」は時間軸としてはその後のお話になります。

 あとがきで斉藤先生が書かれていますが、このシリーズの舞台、架空の街「イェーデンシュタット」は「邂逅の街」、つまり「運命の分かれ道」となる場所のようです。

 ストーリーは……

 小児科医クラウスは、子どもの頃育ったイェーデンシュタットの病院に勤めることになりました。子どもの頃、親友のアルフレートとともによく遊びに行った、公園の時計台を訪ねると、不思議なことに閉鎖されていたはずの時計台の扉が開き、中へ入れたのでした。

 クラウスは、その時計台の中で、不思議な体験をします。そして、なつかしいアルフレートと再会するのでした……

 ……と、いうのがあらすじ。

 これ以上詳しく書くと、完全なネタバレになってしまうので書けませんが、クラウスはここでアルフレートと再会します。そして、この時計台とアルフレートが、自分の運命を変えたのだと再確認するのです。

 運命を変えた、と言うと受動的な表現になるので正確ではないかもしれません。

 「ドローセルマイアーの人形劇場」のエルンストも、「アルフレートの時計台」のクラウスも、自分の意思と自分の判断で運命を選択しています。現れるのは「分かれ道」なのです。

 この本は、2011年4月に出版されており、あとがきは平成22年(2010年)となっているので前年には準備されていた本だとは思うのですが、出版された時期を思うと、非常に運命的なものを感じます。

 当時、多くの人々が大切な人を失い、強制的に「運命の分かれ道」に立たされました。

 いきなり自分の前に出現した「分かれ道」にどう対処するか、哀しみを乗り越えてどんな道を選んでゆくのか……ふつうであったら、人生でそう何度も出会うことのない問題に、多くの人が直面せざるをえなかったときでした。

 「アルフレートの時計台」は、出会いとは、哀しみとは、人生とは、運命とは、そんな問題について、決して声高にはならず、淡々と描いています。

 ヨーロッパの架空の街が舞台だからか、萩尾望都先生の短編幻想漫画を思わせる雰囲気があるので、モー様がお好きな方なら惹かれると思います。ゴシックファッションとかがお好きな方にもおすすめ。児童文学というジャンルではありますが、ちょっと大人っぽくて哲学的なお話です。

 これを読んで、斉藤先生のバンパイアものが読んでみたくなりました。
 「白狐魔記」で不老不死の存在を描いた斉藤先生が、イェーデンシュタットを舞台に書いたら、雰囲気たっぷりのお話になりそうです。

 イェーデンシュタットシリーズは、独特の雰囲気があるので読者を選ぶ物語ですが、好きな方のハートにはストライクだと思うので、ぜひ、お手にとってみてくださいね。

 動物ファンタジー、時代劇アラビアンナイト、西遊記と、縦横無尽にジャンルを横断する斉藤先生のストーリーテリング力に魅了されます。次は西遊記にも挑戦しようか……これもロングシリーズですねえ……

 読書は道のりが遠いほど楽しい。このシリーズは続きも楽しみです。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 大切な人との別れと、運命の分かれ道について描いた物語です。哀しみの中にある人の心に寄り添うお話なので、そんなときにおすすめします。HSPやHSCの方のほうが多くのことを感じ取れると思います。

 非常に淡々としたお話なので、傷つきやすくなっているときや、立ち直りかけているときに読んでみてください。弱っている心を殴りつけるような描写は無いと思います。

 静かな雨の週末に読みたい物語です。
 読後は、濃く淹れたコーヒーとプレッツェルでひとやすみしてくださいね。

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