【もりのちいさなしたてやさん】お姫さまのドレスをつくる、小さな小さな仕立て屋さんのおはなし絵本【4歳 5歳 6歳】

2024年3月18日

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もりのちいさなしたてやさん こみね ゆら/作 らいおんBOOKS 風濤社

森の奥に、小人の三姉妹が暮らしていました。彼女たちは、森の仕立て屋さん。森の動物たちや小鳥や虫たちのために、ドレスを作ります。ある日、お城からお使いがやってきて……

この本のイメージ ほのぼの☆☆☆☆☆ かわいい☆☆☆☆☆ お裁縫は魔法☆☆☆☆☆ 

もりのちいさなしたてやさん こみね ゆら/作 らいおんBOOKS 風濤社

<こみね ゆら>
イラストレーター、人形作家。東京芸術大学、同大学院修了。1985年、フランス政府給費留学生として渡仏、エコール・デ・ボザールで学ぶ。「さくら子のたんじょう日」(文・宮川ひろ、童心社)と「ともだちできたよ」(文・内田麟太郎、文研出版)で日本絵本賞受賞。「オルゴールのくるくるちゃん」(講談社)で第47回講談社出版文化賞絵本賞受賞。そのほかの作品に「ちいさなおひっこし」(偕成社)、「おさんぽ」(作・江國香織/白泉社)、「トリッポンのこねこ」(作・萩尾望都/教育画劇)「しいちゃんふうちゃんほしのよる」(佼成出版社)、「にんぎょうげきだん」(白泉社)、「ミシンのうた」(講談社)などがある。

 またしてもかわいらしい絵本を見つけてしまいました。これは、女の子向けの絵本です。
 こみねゆら先生の「もりのちいさなしたてやさん」。初版は2017年です。

 ストーリーは……
 ある森の奥で、かわいい小人の三姉妹が森の動物たちや鳥たち、虫たちのための仕立て屋さんをしていました。その森のずっと向こうには、人間の街があり、お城にはお姫さまが住んでいました。

 でも、お姫様はドレスが大嫌い。だって、ドレスはみんな暗い色で重くて窮屈だったから。ある日、窓辺に来た小鳥が、素敵なお洋服を着ていることに気づいたお姫さま。「あなたのおようふく、とってもいいわ」と言うお姫さまのつぶやきを聞いて、お城の家来は、森へ馬を走らせます。

 お城のお使いから、五日後のお姫さまのお誕生日に着るドレスの注文をうけた三姉妹は、薄くて綺麗な綿毛を編んだ布や、自然の様々なものから、美しいドレスを作ります。

 もうすこしでドレスが出来上がるころ、小人の女の子は夢の中でお姫さまに出会います。
 お姫さまと三姉妹は、一緒に夜空の星をとって遊ぶ夢をみました。

 目が覚めた三姉妹は、ドレスを夜空色に染め、星のようなビーズを飾ります。

 出来上がったドレスは飛んでいきそうなくらい軽く、お姫さまは大喜び。お姫さまと小人たちは大の仲良しになりました。

 ……と、言うのがあらすじ。

 お裁縫って、わたしたちの親や祖母世代だと、女性なら誰もができていないといけない、基本的な技能でした。
 お料理とお裁縫、お洗濯とお掃除ができて初めてお嫁にゆくことができる、それが我々の親世代の感覚です。いやはや、たいへんですね。

 というのも、戦前は便利な家電がほとんどなくて、洗濯機ではなくたらいと洗濯板、炊飯器ではなく鍋、掃除機ではなくほうきとちりとりで家事を行っていたからです。そして、服はたいてい、手づくりでした。

 服と言うのは、布を買ってきて、縫って作るものだったのです。
 お金がある家は、仕立て屋さんでお洋服をつくってもらうことができますが、そうでない家は、家でお母さんが作るのが仕事でした。昔の「お洋服やさん」と言うのは、お洋服を作ってくれるお店だったのです。

 戦後のデパートで、何着もの「完成したお洋服」がハンガーにかけられて売り場に並べられたとき、最初にその光景を見た人たちはかなり衝撃だったようです。
 それまでは、服は人間のサイズを測ってつくる、「人間にあわせたもの」でしたが、サイズ別につくられた服を買って着る文化によって、「人間のほうが服にあわせる」時代になりました。

 わたしは文化の移行期の人間なので、残念ながらお裁縫はぜんぜんまったくうまくありません。(本当にはずかしい)
 最近のミシンは性能がいいらしいので、がんばれば少しは縫えると思いますが、子どもの頃は、一生懸命練習しても、下糸が突っ張ったり、縫い目がひんまがったりして、なかなか綺麗に縫えないぶきっちょでした。一世代まえなら、確実に「女性失格」です。
 だいたい、手と足を同時に動かすなんて、エレクトーンかい、と思いますよねっ。(←負け惜しみ)

 昭和から平成になって、コミックマーケットでアニメファンたちがコスチュームを作って華やかに装うようになったときに、ふたたび「お裁縫」が脚光を浴びるようになりました。お店で売っていないお洋服を着るためには、作るしかないのです。

 かつて女子の必須科目だった被服は、趣味のための特殊技能になりました。ですから、こだわる人は男子でも自力で衣装を作るらしく、今ではお裁縫の上手な男子も多いようです。まあ、そもそも、デザイナーの世界は男女関係ないですしね。

 また、現在、コロナ禍の影響で外食せずに自炊している人たちが増えているように、布を買って自分で縫えば安く上がることも多いので、もしかしたら再びお裁縫が復権するかもしれません。タイツなどは破れてもつくろえば長く使えますし、しみや穴ができた服もリメイクすれば使えます。

 この絵本は、お裁縫の魅力や、お洋服をつくるわくわくした気持ちを伝えてくれる絵本です。
 ごはんやお菓子を食べることより作る楽しみ、お洋服を着飾るより作る楽しみを知れば、人生がずっと奥深く、楽しくなります。たとえ、上手ではなくても。

 自分で作れなくても、作り方を知れば、モノに対する気持ちも変わってきます。

 三姉妹のつくるドレスは、自然のさまざまな恵みで作られた、森のドレス。わたしたちの食べるものだけでなく着るものも、こんなふうに自然から分けてもらっているのだと感じることが出来るのです。

 お洋服をつくるって、こんなに素敵なことだったんだ、と気づかせてくれる絵本です。
 女の子におすすめなのですが、お姫さまではなく「服を生み出す」三姉妹のほうが主人公なので、もしかしたら男の子も楽しく読めるかもしれません。

 クリエイティブで内向的なお子さまにおすすめです。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素はありません。誰かのために何かを創る喜びが伝わる絵本です。この世界に浸って、読み終わったらハンドメイドがしたくなるかもしれません。

 おうち時間を楽しむ、内向的なお子さまにおすすめです。女の子向けですが、男の子でも好きな子はいるかもしれませんね。

 

商品紹介ページはこちら

 

 

お裁縫に興味があるお子さまには「なんでも魔女商会」もおすすめです。

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