【名探偵カッレとスパイ団】児童文学の古典名作! 名探偵になりたい少年カッレくんの冒険小説完結編【小学校中学年以上】

2024年3月18日

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名探偵カッレとスパイ団 アストリッド・リンドグレーン/作 尾崎義/訳 挿絵/エーヴァ・ラウレル 岩波少年文庫

カッレ、アンデス、エーヴァ・ロッタの仲良し三人組と、ライバルたちで遊ぶ「バラ戦争」のさなか、ラスムセン教授とその息子ラスムスが犯罪に巻き込まれ誘拐されそうになるのを目撃します。とっさにエーヴァ・ロッタがラスムスを助けようと無謀な行動に出て、カッレたちは救出作戦に向かいますが……

この本のイメージ 本格サスペンスアクション☆☆☆☆☆ 危機一髪連続☆☆☆☆☆ 危機を呼ぶ幼児☆☆☆☆☆

名探偵カッレとスパイ団 アストリッド・リンドグレーン/作 尾崎義/訳 挿絵/エーヴァ・ラウレル 岩波少年文庫

<アストリッド・リンドグレーン> 
スウェーデン生まれ。小学校の先生や事務員をしながら数多くの作品を発表し続けた。国際アンデルセン賞受賞。作品に「長くつ下のピッピ」など。

 「名探偵カッレくん」からはじまる、カッレくんシリーズの完結編です。原題はKalle Blomkvist Och Rasmus.
 原書初版は1953年。日本語版初版は1965年です。

 カッレくんシリーズは、一話完結なので、どこから読んでも楽しめるのですが「名探偵カッレくん」から読み始めると、カッレくんたちの成長がわかるので、よろしければ、「名探偵カッレくん」からお読みください。

  「名探偵カッレくん」のレビューはこちら。

 白バラ軍と赤バラ軍にわかれて子供同士の真剣な戦いに明け暮れていたカッレくんたち。
 「名探偵カッレくん」では宝石泥棒事件を解決し、「カッレくんの冒険」では高利貸し殺人事件の犯人からエーヴァ・ロッタを守り、と活躍を続けてきたカッレ君ですが、今回は、本格的な犯罪集団が相手です。

 カッレくんたちが「バラ戦争」で戦っているさなか、特殊な研究をしている工学博士のラスムセン教授とその5歳の息子ラスムスが誘拐される場面に出くわします。

 エーヴァ・ロッタはとっさの機転でラスムスたちと一緒に誘拐される覚悟を決め、悪漢たちが気づかぬうちに車に乗り込んでしまいます。

 カッレたちの救出を信じて、石やヘアピンを道中に落としてゆくエーヴァ・ロッタ。

 はたして、カッレたちは、エーヴァ・ロッタとラスムセン親子を救出できるのでしょうか?

 ……と、言うのがあらすじ。

 最初は「名探偵になりたいふつうの男の子」だったカッレくんたちですが、三作目にして、大掛かりな犯罪集団と戦うことになります。それにしても、エーヴァ・ロッタの度胸がすごい。

 男勝りで、やんちゃで、なんでもできるエーヴァ・ロッタですが、小さい子どもを見ると「お母さん」の気持ちになってしまうのです。小さなラスムス坊やが誘拐されるのを黙ってみていることができず、危険の中に猛然と飛び込みます。

 しかし、このラスムスと言う子が、とんでもない幼児で、と言うか、あまりにも幼児らしい幼児で、読んでいてイライラする人もいるかもしれません。カッレたちくんの堪忍袋の緒が切れないのは尊敬に値します。

 ラスムス坊のキャラクターは、物語が深刻になりすぎないよう、適度なユーモアを与えるためにそうしたのでしょうが、そういうメタ視点で読まないと我慢し切れなくて、たまに拳をきつく握り締めてしまいそうな場面があるんですよ。ようするに、クソガ……げふんげふん。

 ラスムスくんを助けるためにカッレたちは命がけの行動をしているのに、その邪魔をして危機に陥れようとするのが常にラスムス。

 この、幼児特有の後先考えなさや、空気の読めなさ、勝手さ、考えの浅さなどが、さすがは女流作家、小さな子どもをよく見ているな! と、いう感じです。
 幼児あるあるのリアリティがありつつ、「ちょっと黙ってなさい!」と怒鳴りたくなるような(実際、お父さんのラスムセン教授は怒鳴っていた)5歳児なのですが、顔は天使のようにかわいらしいので、なんとも憎めない。憎たらしいところとかわいらしいところの配分が絶妙なのです。

 ラスムスくんが巻き起こす数々の危機を乗り越えて、カッレくんたちが、いかにラスムセン教授とラスムスくんを救出するのかがポイント。

 前二作とくらべて、あまりにも敵が本格的なので、ハラハラしどおしです。

 今なら、携帯電話やスマートフォン、インターネットがあるから簡単に解決できることも、この時代だとたいへんなことだらけです。

 大昔の児童小説だからとあなどるなかれ、本格的なスパイ冒険活劇です。エーヴァ・ロッタは勇敢で、アンデスはかっこよく、カッレくんは頼りになる。

 どんなに追い詰められても、カッレくんのように考えて考えて、最適の答えを出せるようになりたいと思った秋の日でした。

 カッレ君のシリーズは、子どもから大人まで楽しめる、健全で正統派の冒険物語です。「名探偵コナン」や「トム・ソーヤーの冒険」オタバリの少年探偵たち「都会のトム&ソーヤ」などが好きならおすすめです。
 どきどきわくわくしたい気持ちのときは、ぜひどうぞ。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 今回は危険な物語なので、何度か危ないシーンはありますが、気をつけて書かれているので、驚くほど残酷シーンや暴力シーンはありません。(あるにはあります)

 たぶん、今の少年漫画よりずっとマイルドだと思うので大丈夫でしょう。しかし、物語の内容は本格派のサスペンス&アクションです。大人も楽しめる内容です。

 いつも、瞬時に考えて最適な判断をするカッレくんの、「あきらめない」そして「考える」姿勢には見習うべきものがあります。作中で何度も登場する「アサマブドウ」は、おそらくブルーベリーかリンゴンベリーでしょう。

 読後はリンゴンベリーのジャムとトースト、そして熱いココアでひとやすみ。

 

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Posted by kagurat