【黒ねこサンゴロウ旅のつづき】孤独な船乗り黒ねこハードボイルド。忘れられた島の冒険【ほのおをこえて】【小学校低学年以上】

2024年3月18日

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ほのおをこえて 黒ねこサンゴロウ旅のつづき 3   竹下文子/文 鈴木まもる/絵  偕成社

おれの名はサンゴロウ。わけあって、やまねこ島のクルミに会いにいったところ、長老の息子に捕らえられてしまった。ナラジロウとクヌギ兄弟の後継者争いに巻き込まれたおれは……

この本のイメージ サスペンス☆☆☆☆☆ ハードボイルド☆☆☆☆☆ ねこ☆☆☆☆☆

ほのおをこえて 黒ねこサンゴロウ旅のつづき 3   竹下文子/文 鈴木まもる/絵  偕成社

<竹下文子>
竹下 文子(たけした ふみこ、1957年2月18日~)は 日本の児童文学作家。夫は画家の鈴木まもる。福岡県生まれ、東京学芸大学教育学部卒業。大学在学中より執筆を行う。1978年「月売りの話」で日本童話会賞受賞。1979年『星とトランペット』で第17回野間児童文芸推奨作品賞受賞。1985年『むぎわらぼうし』で絵本にっぽん賞受賞。1994年『黒ねこサンゴロウ<1>旅のはじまり』『黒ねこサンゴロウ<2>キララの海へ』で路傍の石幼少年文学賞受賞。2009年『ひらけ!なんきんまめ』で産経児童出版文化賞フジテレビ賞受賞。2020年『なまえのないねこ』で日本絵本賞、講談社絵本賞受賞。(wikipediaより)

<鈴木まもる>
1952年、東京都に生まれ。「黒ねこサンゴロウ」シリーズで赤い鳥さしえ賞を、『ぼくの鳥の巣絵日記』で講談社出版文化賞絵本賞を受賞。

 竹下文子先生と鈴木まもる先生の最強タッグ、黒ねこサンゴロウシリーズの続編シリーズです。初版は1996年。

 

お話が、一応、一話完結の形にはなっていますが、全体の構成がしっかりしていて、大きな流れは続いているので、まずは「黒ねこサンゴロウ」の第1巻、「旅のはじまり」から、順番にお読みになることをおすすめします。

↓「黒ねこサンゴロウ 旅のはじまり」のレビューはこちら

 今回のお話は、「黒ねこサンゴロウ3 やまねこの島」の後日談となります。このおはなしだけでも充分楽しめるのですが、「ほのおをこえて」を読む前に「やまねこの島」をお読みになることをおすすめします。

 ストーリーは……

 友達の医者、ナギヒコに頼まれて、サンゴロウはかつておとずれた「貝がら島」のクルミに荷物と手紙を届けにゆきます。ところが、貝がら島は、長老カシザエモンが死に、後継者争いの真っ最中。

 後をついで長老になったナラジロウだが、彼はサンゴロウをとらえて、やらせたいことがありました。マリン号を分解して、同じ船をつくろうと言うのです。

 絶体絶命のサンゴロウですが、クヌギとナラジロウの争いに乗じて脱出します。一人、同行者を連れて……

 ……と、いうのがあらすじ。

 「黒ねこサンゴロウ」は全五巻、「黒ねこサンゴロウ旅のつづき」も全五巻で、全部で10巻のおはなしですが、非常に重厚で詳細なバックグラウンドがあることがわかってきます。

 サンゴロウの先祖が「貝がら島」に深く関っていたことや、サンゴロウの失われた記憶など、まだまだ解明されていない謎はありますが、うみねこ族、やまねこ族、閉ざされた貝がら島、交易の中心地三日月島、船乗りの地うみねこ島と、緻密に作りこまれた世界観のなかで、サンゴロウたちが冒険する、壮大なファンタジーなのです。

 たとえるなら、昭和のテレビシーズアニメや、なつかしのNHK人形劇のような雰囲気。
 そう、昔のアニメーションのように、サンゴロウが様々な島に立ち寄るアニメがあったら、おもしろそうです。

 絵は、鈴木まもる先生のまるっとした絵なのに、サンゴロウはかっこいい。そして、仕草やプロポーションがちゃんとねこしているのもすごくいい。ねこのプロポーションは、いっさいディフォルメされていなくて、本当に「ねこ」なんです。

 表紙の装丁はクラシックでとてもおしゃれです。読んだ後、リビングに飾っても。

 冒険ものなので、男の子におすすめですが、絵がかわいいので女の子も楽しく読めそうです。ねこなのにサンゴロウはハードボイルドでニヒル。ラストはサンゴロウが粋なことしてくれます。かっこいいぞ、サンゴロウ。

 このブログで、何度も主張していますが、「ハードボイルドは若者の特権」だとわたしは思っています。
 歳をとってしまうと、大人って、子供の頃思っていたほど大人でもないし賢くもないしかっこよくもないって、わかってしまうからなんですよ(トホホ……)。なにしろ、その筆頭が自分ですからね。

 なので、クールでニヒルなハードボイルドを楽しむのは、若い時がいいんです。

 ニヒルなねこのハードボイルド児童小説……スバラシイ。児童小説なら、大人のわたしも読んでいるあいだは子ども心にもどって楽しめます。大人が読んでも面白い、本格ファンタジーです。

 字はほどよく大きくて、総ルビなので、50音さえ読めればコツコツ一人で読みきることが出来ます。サンゴロウの一人称なので、もし、読み聞かせをなさるならぜひ、お父さまにかっこよく読んでいただきたいですよね。

 お子様がひとりで、親子読み聞かせで、そして大人が一人で。
かっこいい黒猫の、ニヒルで小粋なハードボイルドをお楽しみください。ねこだけど。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素はあまりありません。貝がら島が閉塞した島なので、すこし重苦しい雰囲気がありますが、そのぶん、サンゴロウの過去など、ミステリアスな部分の謎解きがちょっとだけされて、わくわくします。

 冒険ものなのですが、設定がとても詳細で、幻想的な描写も多いので、HSPやHSCの方のほうが楽しめると思います。考察系の方は楽しいと思うので、男の子だけでなく深読みの好きな女の子にもおすすめ。

 読後は、青いブルーハワイのソーダでひとやすみ。

 

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