【イーゲル号航海記】謎の潜水艦に乗って、冒険の旅へ! 斉藤洋のファンタジック海洋冒険小説。【小学校中学年以上】

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イーゲル号航海記 1 魚人の神官 斉藤洋/作 コジマケン/絵 偕成社

その日、カールはいつもと違う道を歩いてみたいと思った。そして、出会ったんだ。カールの運命を変える、不思議な潜水艦に。思わず飛び乗った潜水艦で、カールは冒険の旅に出る……

この本のイメージ ファンタジー☆☆☆☆☆ 潜水艦☆☆☆☆☆ 地底の国☆☆☆☆☆

イーゲル号航海記 1 魚人の神官 斉藤洋/作 コジマケン/絵 偕成社

<斉藤洋>
日本のドイツ文学者、児童文学作家。亜細亜大学経営学部教授。作家として活動するときは斉藤 洋と表記する。代表作は「ルドルフとイッパイアッテナ」「白狐魔記」など。

<コジマケン>
1964年東京都生まれ。イラストレーター、マンガ家。1990年第5回MOEコミック大賞のコミック賞を受賞し、マンガ家デビュー。書籍の仕事に「森博嗣の浮遊研究室」シリーズ、「キャドック王国とリンボのオオカミ」の装画・挿し絵など、マンガの作品集に「月の男」がある。

イーゲル号航海記 1 魚人の神官 斉藤洋/作 コジマケン/絵 偕成社

 「ルドルフとイッパイアッテナ」「白狐魔記」の斉藤洋先生がおくる、ファンタジック海洋冒険小説、「イーゲル号航海記」第一巻です。

 主人公はカール・キリシマ・キルシュ。日本人とドイツ人のハーフの男の子。父親とは別れ、いまは母と二人暮らしですが、母とも距離感があります。そして、学校もそんなに楽しくありません。

 そんなカールがある月曜の朝、右に行けば学校、左に行けば港という分かれ道で、たまたま、左を選んだことで、不思議な潜水艦と出会います。

 とっさの行動から潜水艦に飛び乗ってしまったカール。不思議な潜水艦の旅に同行することになりました。

 艦長は天才科学者ハインリッヒ・フォン・ローゼンベルグ博士。
 乗組員は博士の執事、フランク・クラフト。謎の多いコック、ハンス・ハンス。ジャーマン・シェパードのラインゴルド、そしてカールと言うメンバー。

 潜水艦は、ヘルゴラント島海域で、巨大な渦に飲み込まれ、不思議な世界にたどりつきます。そこで、見たこともない魚人たちと出会い、彼らの国へ招待されるのでした……

 と、いうのがあらすじ。

 どうやら、このお話、この潜水艦でヘルゴラント島海域から渦に入り、様々な世界へ冒険に行くシリーズのようです。

 そう、つまりは地球空洞説。レトロでファンタジックな響きです。

 ひょんなことから不思議な潜水艦に迷い込んで一緒に旅するところはジュール・ヴェルヌの「海底二万里」、マッドサイエンティストに誘われて海底の別の国に行くのは「地底旅行」みたいな雰囲気です。
 海底の世界は、現実の世界とはまったくちがう世界なので、異世界ファンタジーのテイストもあり、それが楽しい。

 主人公のカールは、お母さんと二人暮らし。そのお母さんとも少し距離感がある、微妙な年頃の男の子。
 彼が、いつもの朝、いつもの道の曲がり角を、気まぐれに違う方向に曲がったときから、カールの運命は動き始めます。

 「ドローセルマイアーの人形劇場」と同じはじまりですが、斉藤先生の運命論ですね。運命は、こういう、些細なきっかけで動き始めるのだ……と言う。

 ほんのちょっとした偶然ととっさの判断の積み重ねで、カールは潜水艦に乗り込むことになります。
 なりゆきで乗り込むことになった潜水艦ですが、この旅の中で、カールは少しずつ成長してゆくことになるのでした。

 登場人物は変人ばかり。マッドサイエンティストのローゼンベルグ博士、強くて頼りになるフランク、正体不明のハンス、そして、斉藤先生の作品にはおなじみのジャーマン・シェパード。今回の犬、ラインゴルドも、「くのいち小桜忍法帖」の半守(はんす)同様、人間の言葉が理解できるようです。ラインゴルドもある日突然しゃべりそう。

  登場人物たちは癖が強い人たちですが、どの人も子供には優しいところがいい。マッドサイエンティストのローゼンベルグ博士ですら、子どもに対してだけは常識的なやさしさを示します。
 大人が大人としてしっかりしているなかで、子どもが勇気を持って困難に立ち向かうお話なのです。スバラシイ。まさに王道。

 もちろん、大人が全員いい人ばかりというわけでもなく、カールの親や学校の先生など、なんとなく、「ちゃんとしていない」大人もいるような雰囲気がほんのり書かれているので、もしかしたら現実社会の大人たちのなかにはダメな大人もいて、その「ふつうの世界」に適応できないイーゲル号の面々のほうが案外まともなことを考えている、と言うようなお話なのかもしれません。

 勝手に潜水艦に乗り込んでしまったのはカールのほうなのに、ローゼンベルグ博士は、どうすれば彼を無事に家に送り届けられるか考えて、ちゃんと提案してくれるんですよ。最後もちゃんと家に帰してくれる。
 「地底旅行」のリーデンブロック博士なみにいい人です。名前も似ているし、やっぱりモデルのような気がする。

これが抄訳版「海底2万マイル」

 「イーゲル号航海記」は、ごくふつうの男の子が荒唐無稽な不思議世界に迷い込み、様々な挑戦や冒険を乗り越えておうちに帰ってくるという、正統派の冒険小説です。

 文章はカールの一人称で読みやすく、難しい漢字には振り仮名が振ってありますので、小学校中学年から。コジマケン先生の絵も、わくわく感をそそります。「ルドルフとイッパイアッテナ」が読めたら、こちらもぜひ。

 もちろん、大人も楽しめますよ。「海底二万里」「地底旅行」を知っている大人なら、にやりとするかもしれません。

 まだまだ冒険の旅は始まったばかりです。変人ぞろいの乗組員たちの過去も謎だらけ。もちろん、カール自身のことも、ほとんど語られていません。

 これからカールの旅がどうなるのか、追ってゆこうと思います。楽しみです。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素はありません。楽しい空想科学冒険小説です。男の子にも女の子にもおすすめです。全部読めたら、ジュール・ヴェルヌの「海底二万里」や「地底旅行」に挑戦してみましょう。完訳版は中学生向けなので難しいかもしれませんが、「海底二万里」は子供向けの抄訳版もあります。

 読後はソーセージとキャベツのスープが食べたくなるかも。ばんごはんは、決まりですね。

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