【クローバーと魔法動物】運の悪い女の子クローバーの初めてのお仕事は、森の奥の魔法動物紹介所。新感覚ファンタジー開幕。【運のわるい女の子】【小学校中学年以上】

2024年3月18日

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クローバーと魔法動物 1   運のわるい女の子  ケイリー・ジョージ/作 久保陽子/役 スカイエマ/絵 童心社

「わたしって運がわるい」。クローバーは運が悪い女の子。ペットを飼うと、どういうわけかみんな逃げ出してしまい、夏休みの乗馬キャンプは自分だけ外れ。そんなクローバーが、森の奥で偶然見つけたのは……

この本のイメージ ファンタジー☆☆☆☆☆ はじめてのおつかい☆☆☆☆ 運って?☆☆☆☆☆

クローバーと魔法動物 1   運のわるい女の子  ケイリー・ジョージ/作 久保陽子/役 スカイエマ/絵 童心社

<ケイリー・ジョージ>
カナダの児童文学作家。ブリティッシュ・コロンビア大学で児童文学の修士号を取得。絵本や読み物を数多く手がけている。邦訳は「ハートウッドホテル」シリーズ(童心社)がある。本書はカナダで高い評価を受けており、第1巻はOLA Best Bets Award Winner, 2016を受賞し、ドイツ、ルーマニア、イスラエル、中国で翻訳出版されている。

<久保陽子>
鹿児島県生まれ。東京大学文学部英文科卒業。出版社で児童書編集者として勤務ののち、翻訳者になる。訳書に「ハートウッドホテル」シリーズ(童心社)「カーネーション・デイ」(ほるぷ出版)「ぼくってかわいそう!」「明日のランチはきみと」「うちゅうじんはいない?」(いずれもフレーベル館)「わたしのペットはまんまるいし」(ポプラ社)などがある。

<スカイエマ>
東京都生まれ。児童書・一般書の装画や挿絵など幅広く手がけている。第46回講談社出版文化賞さしえ賞を受賞。おもな作品に「ぼくがバイオリンを弾く理由」「幻狼神異記」シリーズ「忍剣花百姫伝」シリーズ(いずれもポプラ社)「林業少年」(新日本出版社)「アサギをよぶ声」シリーズ(偕成社)「ぼくらの原っぱ森」(フレーベル館)などがある。

 初読です。
 こんなかわいいファンタジーがあったんですね。

 原題はThe Magical Animal Adoption Agency シリーズ。第1巻タイトルは、Clover’s Luck. 初版は2015年。日本語版初版は2020年です。

 原題のThe Magical Animal Adoption Agencyは直訳すると、魔法動物養子縁組機関。魔法動物紹介所のことです。
 魔法動物が欲しい魔女や妖精たちと、持ち主や飼い主のいない、魔法動物……ペガサスやドラゴン、サラマンダーなどをマッチングするところです。魔法動物たちは、もともと別の飼い主に飼われていて、不幸な生活をしていた生き物ばかり。

 クローバーは、友達のエマと夏休みに行くつもりだった乗馬キャンプに自分だけ入れなかったことから、ひょんなことで知ったこの動物紹介所でボランティアをすることになりました。

 ペットを飼えばことごとく逃がしてしまう、友達と乗馬キャンプに行こうとしたら自分だけハズレ、何をしても上手くいかない、ちょっと不運なクローバーが、偶然見つけた不思議なボランティア。

 ところが、この紹介所の所長、やさしいジャムズおじさんは、翌日突然、遠くに出張に出かけてしまいます。いきなり留守番をまかされたクローバー。

 さて、この奇妙な動物紹介所で、クローバーは無事、留守を守ることができるのでしょうか?

 ……と、いうのがあらすじ。

 第1巻のテーマは「運ってなんだろう?」。

 わたしが若いとき、初めて働いたバイト先の先輩が教えてくれた金言があります。

 「仕事をしていると、先輩や上司があなたに愚痴を言ってくることがあるわ。ちゃんと聞かないと相手はへそを曲げるから、そういう話は聞かないとダメ。でも、安易に同意してしまったら、人間関係のいざこざや、派閥争いに巻き込まれるわ。だから、『あなたはどう思う?』と聞かれても、同意しちゃダメ」
 「じゃあ、どう言えばいいんですか?」
 「『運が悪かったですね』と言うのよ。そう言えば、だれも悪者にならないから」

 この助言のありがたみは、その瞬間はわからなかったのですが、歳をとるごとに、しみじみとわかってきました。
 そして、実際に、人と人のいざこざなんて、たいていはそんなものなのです。どこかに極悪人がいて退治をすれば解決するわけではなくて、価値観の相違や、運やタイミングの悪さが原因のことのほうが、はるかに多いのです。

 若いときにこの助言をもらえたわたしも運が良かった。

 クローバーは、ツイてない女の子。動物がだいすきなのに、いつも運悪く逃がしてしまい、ちゃんと飼えたことがありません。夏休みは親友のエマと乗馬クラブで思いっきり楽しもうと思っていたのに、自分だけ入会できませんでした。

 でも、乗馬クラブに入れなかったことで、不思議な動物紹介所で働けることになります。
運が悪いってなんだろう、運がいいってなんだろう。本当にクローバーは運が悪い子だったのでしょうか。

 これは、現実にもよくあることで、その日だけ目覚まし時計がなぜか鳴らなくて、運悪く遅刻してしまったら、いつも乗る電車が脱線事故を起こして運よく災難を免れたとか、風邪をひいて楽しみにしていた遠足を休んだら、その遠足はスズメバチに襲われていたとか。

 一見不運にみえたことが幸運だったり、幸運にみえたことが不運だったりするんです。

 「運は自分の受け取め方しだい」と言う、ポリアンナ的解釈もありますが、「悪い運のなかに幸運が隠れていて、幸運の中には災難がひそんでいる」と言う考え方もあります。わたしは、自分が元気なときはポリアンナになりますが、元気が出ないときは、後者の「人生万事塞翁が馬」みたいな気持ちになります。

 クローバーは、ふつうにペットを飼って楽しく暮らしたり、ふつうに親友と乗馬クラブに行ってふつうの夏休みを楽しんだりする運はなかったけれど、どうやら魔法動物たちと不思議な大冒険をする運はあったみたい。

 ジャムズおじさんの残したメモを読みながら、しっかりと留守を守って働くクローバーは、だんだん自信がついてきて、しっかりとした行動が出来るようになってゆきます。小さな子どもの始めてのお仕事ストーリーの側面もあって、とてもほほえましい。

 途中から宿敵みたいな人が現れるのですが、この人の設定やラストの展開も、「こうきたか!」と言う感じで、面白いんです。誰も不幸にならない、ゆかいで幸せなハッピーエンドです。

 字は程よく大きく、難しい漢字には振り仮名がふってあるので、小学校中学年から。読み聞かせなら低学年からでも大丈夫。魔法動物たちがたくさん登場するので、映画「ファンタスティックビースト」シリーズが好きならおすすめ。

 魔法と動物が好きな子なら、大好きになること間違いなしのファンタジーです。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素はありません。内向的なお子様、HSPやHSCにおすすめのファンタジーです。ゆかいで楽しくて、悪役にもちょっぴりクスっとしてしまう魅力があって、憎めません。

 読後は、ジャムズおじさんの大好きな、おいしいシナモントーストでティータイムを。

 

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