【ナンシー・ドルーミステリ】90年前から愛される、少女探偵ナンシーの冒険を電子書籍で。シリーズ第八弾【ナンシーの謎の手紙】【電子書籍】【小学校高学年以上】

2024年3月19日

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ナンシーの謎の手紙 ナンシー・ドルーミステリ 8   キャロリン・キーン/作 渡辺庸子/訳 創元推理文庫 少女探偵ナンシー

寒風で凍えそうな郵便配達夫を見かねて、自宅で暖をとらせたナンシー。しかし、その隙に、玄関先に置かれたカバンから配達中の手紙が盗まれてしまった。盗まれた手紙にまつわるミステリーに巻き込まれたナンシーは、謎を解くために立ち上がります……

この本のイメージ 遺産相続☆☆☆☆☆ 結婚詐欺☆☆☆☆☆ 解説ははやみねかおる☆☆☆☆☆

ナンシーの謎の手紙 ナンシー・ドルーミステリ 8   キャロリン・キーン/作 渡辺庸子/訳 創元推理文庫

<キャロリン・キーン>
エドワード・ストラテマイヤーが設立した、「ストラテマイヤー工房(シンジケート)」が生み出した作家チームのペンネーム。チームには、エドワードの娘ハリエットを含めた複数の作家が所属している。

チームキャロリン・キーンがおくる、少女探偵の事件簿シリーズ、ナンシー・ドルーミステリの第八巻です。原題は、Nancy’s Mysterious Letter.初版は1932年。この日本語版の初版は2012年です。

 「ナンシー・ドルー」シリーズの作者、「キャロリン・キーン」は、「ストラテマイヤー工房」の作家たちのチームペンネームです。メインメンバーのなかには、エドワードの娘ハリエットも参加していました。

 1人の総合監督が全体設計を作り、設定書やあらすじを共有して複数の作家がシリーズを執筆する方法は、テレビドラマシリーズの手法にある方法です。
 アメリカの長期連続テレビドラマシリーズでは「ショーランナー」と言う、全体構成とあらすじを決める作家がいて、その全体構成にあわせて、複数のシナリオライターが執筆する形になっています。

  小説の世界ではドイツの「宇宙英雄ペリー・ローダンシリーズ」や、アメリカの「サーティーナイン・クルーズ」などが同じ手法で行われています。日本では、「グインサーガ」が作者の死後、この方法で現在続行中です。

 今回のお話は……

 寒風の中、凍えそうな郵便配達夫を自宅で暖を取らせたナンシー。ところが、この善意が仇となり、玄関先に置いた郵便カバンから、中の手紙が盗まれてしまいます。。

 盗まれた手紙の追跡に乗り出したナンシーは、同姓同名のナンシー・スミス・ドルーが遺産相続と結婚詐欺がらみのトラブルに巻き込まれていると知ります。

 名前しか知らない、もう一人のナンシー・ドルーを助けるために奔走するナンシー。はたして、ナンシーは、もう一人のナンシーを結婚詐欺師の陰謀から助け出せるのか? 善良な郵便配達夫の運命は?

 ……と、言うのがあらすじ。

 「少女探偵ナンシー」は、1930年に第1巻「古時計の秘密」が出版されて以来、いまなお愛され続けるシリーズ。お話の中で、ナンシーは「推理」をするわけではなく、直感と行動力で事件を解決する、「美少女探偵の事件簿」です。

 ナンシーは、美しく聡明、スポーツ万能、車やモーターボートなど乗り物の運転も得意です。性格は明朗にて快活、正義感が強くて情に篤い。そして、ちょっぴりおせっかい。

 この「正義感が強くておせっかい」な性格が、ナンシーを事件に巻き込みます。というか、事件のにおいを感じると、みずからガンガン踏み込んでゆきます。

 ドルー家の家政婦、ハンナ・グルーエンがナンシーの優秀さを「一つの石をひっくり返してその下に隠されていた金がなかったとしても、それであきらめず、別の石をひっくり返す人」と賞賛するシーンがありますが、才色兼備のナンシーの最大の美徳は、この「粘り強さ」という地味な行動力なのでした。

 また、正義感の強さとおせっかいさが、ずば抜けており、今回も自分と同姓同名の、顔も知らない女性が、多額の遺産を相続したことで結婚詐欺にあいかけていると悟り、彼女を救うために奔走します。

 ふつう、やらないですよね。依頼されたわけでもないのに。でも、それをやっちゃうのがナンシー。

 今回、驚いたのは、ナンシーの体力とバイタリティ。
 後半、何の意味もなく、彼氏のネッド・ニッカーソンのアメリカン・フットボールの試合を見にゆくシーンが差し挟まれるんです。(しかも、けっこう長い) かなり大変な状況なのに、しっかりおしゃれして観客席で応援するナンシー。
 こんなたいへんな事件を追っているのに、ボーイフレンドの試合の応援は欠かさない、しかも全力で応援するナンシーの全方位完全無欠力が強すぎる……!

 元祖、「公私共に充実した女性」「仕事も恋もがんばる」「ワークライフバランス」なのかもしれませんが、いや、バランスとれてるかもしれないけど、体力オバケすぎます……。普通の人なら、試合中、観客席で居眠りしてしまいますよ……ナンシー、超人。

 

 さてさて、今回の読者サービスは、「解説」がなんとなんとの、はやみねかおる先生。

 解説ではやみね先生が、ボーイフレンドのネッドについて「いかにもスポーツマンで背が高く、笑顔のよく似合うハンサムな顔立ちの青年」と、完璧すぎる設定に突っ込みを入れていらっしゃいますが、いやあ、そもそも、ナンシーが超人過ぎるのです。

 しかし、ナンシーにとって、そして読者にとっても、このネッドの最大の魅力は、ナンシーの探偵業に文句を言わないところ。むしろ、率先して調査の協力をしてくれます。

 ナンシーはシリーズの最初では、毎回ボーイフレンドが違ったのですが、このネッドが登場してからは、「彼氏」ポジションはずっとネッドになりました。ナンシーにとっては、一番大切な恋人は「事件」。ボーイフレンドは二番目なのです。

 ……なんか、こういう設定が、1932年に児童小説で語られていたと言うのが驚愕なのですが。

 1932年って、第2次世界大戦前ですよ。「戦前」です。
 日本はまだ大日本帝国でした。女性の衣類は着物がメインで、カバンではなく風呂敷に荷物を包んで、楚々と歩いていた時代です。女性が足を出して走るのもはしたない時代でした。

 そんな時代に、海の向こうでは「ナンシー・ドルー」ですよ。

 これは桁違いに引き離されている気がします。こんな頃から……。

 90年以上愛され続ける美少女探偵ナンシーはすでにアメリカの文化的アイコンとなっているようで、子どもの頃愛読していた、最高裁判事 サンドラ・デイ・オコナー、ソニア・ソトマイヨール、ヒラリー・クリントン元国務長官や元ファーストレディ ローラ・ブッシュなどに大きな影響を与えたと言われています。

 アメリカの優秀な女性リーダーたちを次々と生み出すきっかけとなったナンシー。
 古い小説ではありますが、教養として読んでおくのも悪くないと思います。

 「子どもたちのための良質のミステリを」と言うストラテマイヤーの理念から、残酷シーンや流血シーンはなし。けれど、アクションは満載。ハラハラドキドキしながら最後まで読めます。

 現在、紙の本は中古か図書館でしか楽しめませんが、電子書籍で楽しめる良質な子供向けミステリとして、ナンシー・ドルーはおすすめです。ただし、漢字にほぼ振り仮名がふってないので、自力で読めるお子さま向けです。

 このブログでは、ナンシー・ドルーミステリが本来は子ども向けに書かれていることと、小学生にも挑戦してほしいのであえて「小学校高学年以上」としておきますが、振り仮名のなさでは「中学生以上」の作品です。もちろん、大人でも楽しめます

 90年前に生まれ、時代を切り拓いてきた美少女探偵の活躍にふれてみてください。良質のミステリーです。

 さて、第八巻までご紹介した「ナンシー・ドルーミステリ」、このシリーズは、残念ながら日本ではここまでです。八巻が出版されてから10年になろうとしていますから、つづきが翻訳されることは難しいかもしれませんが、第2シリーズとして、ぜひとも翻訳が再開されてほしいですね。創元様、よろしくお願いします!(と、テレパシー)

 ※電子書籍には、読書専用の読書リーダー端末をおすすめします。メールやSNSなどで読書を邪魔されることなく、集中力がつづきます。

 こちらは、キッズモデル。辞書などもはいっているため、わからない単語はすぐ調べることができて便利です。
 電車の中やバスの待ち時間、待ち合わせのスキマ時間などに、手軽に楽しめますよ。
 良質なミステリをお探しなら、ナンシー・ドルーを。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 残酷シーンや流血シーンはないけれど、ハラハラドキドキを楽しむことができ、ラストではめでたくハッピーエンドなので、水戸黄門のような予定調和を楽しむことが出来ます。

 読後感もよく、安心して楽しめるミステリです。オーソドックスを読みたいときに。

 読後は、コーヒーとチョコレートケーキでひとやすみ。

 

商品紹介ページはこちら

 

 

https://www.youtube.com/watch?v=E1oFW1RUC6g
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