【江戸の空見師 嵐太郎】時は幕末。江戸の少年気象予報士が大活躍。新感覚の歴史冒険物語【小学校高学年以上】

2024年3月19日

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江戸の空見師 嵐太郎 佐和みずえ/作 しまざきジョゼ/絵 フレーベル館 

江戸の長屋で姉のおゆき、妹のおふうと三人で暮らす嵐太郎は、没落した武家の跡取り。そして、子どもなれども「空見」と言う天気を予測する能力に長けていました。その特異な能力の噂をききつけ、浦賀からあるお侍がやってきます。その人が嵐太郎の運命を大きく変えるのでした……

この本のイメージ 少年小説☆☆☆☆☆ 気象予報☆☆☆☆☆ 幕末時代劇☆☆☆☆☆

江戸の空見師 嵐太郎 佐和みずえ/作 しまざきジョゼ/絵 フレーベル館 

<佐和みずえ>
愛媛県出身。一卵性双生児。それぞれ愛媛県と大分県に在住。児童書の著作に「パオズになったおひなさま」「熊本城復活大作戦: 地震から二十年かけて進む道のり」(以上、くもん出版)、「拝啓、お母さん」(フレーベル館)、「すくすく育て! 子ダヌキ ポンタ 小さな命が教えてくれたこと」(学研プラス)など多数。

<しまざきジョゼ>
愛知県出身。名古屋芸術大学を卒業後、デザイナー兼イラストレーターとしてデザイン事務所に勤務。現在はフリーランスのイラストレーターとして活動。装画をてがけた児童書に「夏に泳ぐ緑のクジラ」(作 村上しいこ/小学館)、「アドリブ」(作 佐藤まどか/あすなろ書房)など。

 初読です。初版は2020年。
 佐和みずえ先生は、一卵性双生児の共作ペンネームだそうです。おふたりは、別々のところで暮らしていらっしゃるらしいので、リモートで作業されているのですね。まさに新時代の創作スタイル。

 おはなしは……

 時は幕末。江戸の下町の長屋に、おゆき、嵐太郎、おふうの三人きょうだいが、貧しくても懸命に暮らしておりました。長男の嵐太郎は、没落した武家は、花咲家の跡取り。いまは米つきをして働く日々です。

 しかし、この嵐太郎には、常人にはない才がありました。「空見」と言う、お天気を予測する能力です。この能力をもちいて嵐太郎は近所の人々、親しい人たちの役に立っていたのです。

 その噂をききつけて、浦賀からお侍様がやってきました。彼の名は大塚平馬。浦賀奉行、中島三郎助さまの使いで、先ごろ世を騒がせたペリーの「黒船」が、次に来航するのはいつなのか、天気から予測して欲しいというのです。

 いきなりの大抜擢に戸惑いながらも、やりがいと好奇心から仕事を引き受けます。
はたして、嵐太郎はこの大役を勤め上げることができるのでしょうか?

 ……と、いうのがあらすじ。

 双子の姉妹が共作で書いているという佐和先生。いったいどんなふうに書かれているのでしょうか。

 このお話、「空見師」と言う、今で言うところの「気象予報士」の男の子が主人公です。
決してファンタジーのような魔法的力ではなく、日ごろの観察力と五感を駆使して予想する、論理的で科学的能力。

 いつ雨が降るのか、いつ嵐が来るのか、いつ気温があがるのか、いつ気温が下がるのか、そうした、生活に必要な、大切な情報を教えて人を助けるのです。

 身近な人々にお天気予報を教えてお駄賃をもらっていただけの嵐太郎が、いきなりお上の大切な仕事をおおせつかります。思わぬ大役を頑張りながら、自分の家にまつわる秘密や、世の中の理不尽を体験し、それでも前に進もうとする、さわやかな少年小説です。

 「空見」と言う、ファンタジーではない、科学的な能力を題材にし、お天気を見るのが大好きな少年を主人公にした時代劇というのは斬新です。しかも幕末。かなり新鮮な設定で、それだけですでにわくわくします。

 嵐太郎の、まっすぐでひたむきな性格も魅力。
 お姉さんのおゆきは武家の娘らしく凛とした美しさ、妹のおふうは可愛らしい。寺子屋の天庵先生や親友のイソ吉など、登場人物は生き生きと描かれています。

 文体がかなり好みで、時代劇らしいテンポのよさと、きりりとした魅力があります。リズミカルにすいすい読めますし、メリハリのいい文章が気持ちいいのです。
 お江戸を舞台にした小説だけに、この歯切れのよさがさらに雰囲気を盛り上げます。

 お話は、サスペンスとか捕り物とかではなく、まっすぐな少年の、勇気と友情の物語。等身大の少年の物語です。
 「空見」と言う特殊な能力ではありますが、自分の好きなこと、得意なことで生きてゆくことを決めた、12歳の少年のひたむきな物語は、読んでいて心にさわやかな風がふきます。

 難しい漢字には振り仮名がふってあり、読みやすい文章なので、小学校高学年から。シーボルトなど自分で調べれば歴史への興味がさらに深まるかもしれません。天気に興味をもったら、気象関係の本を読んでみても。

 様々なことに、興味をもつきっかけにもなる本です。もちろん、大人が読んでもおもしろい。

 最近は、「天気の子」や「おかえりモネ」など、天気をテーマにした映画やドラマも増えてきています。映画やドラマでお天気に興味をもったお子様には、おすすめの児童小説です。

 お天気が悪いとき、外に出られないときは、「どうして雨が降るのかな」「どうして今日は寒いのかな」と考えながら、「嵐太郎」の物語を読むのも楽しいかもしれません。おうち時間にぜひどうぞ。

 ※この本は電子書籍もあります。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素はありません。児童小説ながら雰囲気たっぷりの時代小説なので、時代劇の好きなお子様には、とくにおすすめです。
 大人が読んでも面白い、少年小説です。

 読んだら、ばんごはんにカツオが食べたくなるかもしれません。

 

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