【ハートウッドホテル】動物たちのための不思議なホテル。ほのぼの動物ファンタジー【ねずみのモナと秘密のドア】【小学校中学年以上】

2024年3月19日

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ハートウッドホテル 1  ねずみのモナと秘密のドア  ケイリー・ジョージ/作 久保陽子/訳 高橋和枝/絵  童心社

モナは親もきょうだいもいない、ひとりぼっちのねずみでした。ある嵐の夜、家が浸水したモナは、森の奥に動物たちのための不思議なホテルをみつけます。それは、ハートウッドホテル。傷ついた動物ならだれだって受け入れてくれる、あたたかい場所でした……

この本のイメージ 動物ファンタジー☆☆☆☆☆ ほのぼの☆☆☆☆☆ 動物だけどヒューマンストーリー☆☆☆☆☆

ハートウッドホテル 1  ねずみのモナと秘密のドア  ケイリー・ジョージ/作 久保陽子/訳 高橋和枝/絵  童心社

<ケイリー・ジョージ>
カナダの児童文学作家。ブリティッシュ・コロンビア大学で児童文学の修士号を取得。絵本や読み物を数多く手がけている。邦訳は「ハートウッドホテル」シリーズ(童心社)がある。本書はカナダで高い評価を受けており、第1巻はOLA Best Bets Award Winner, 2016を受賞し、ドイツ、ルーマニア、イスラエル、中国で翻訳出版されている。

<久保陽子>
鹿児島県生まれ。東京大学文学部英文科卒業。出版社で児童書編集者として勤務ののち、翻訳者になる。訳書に「ハートウッドホテル」シリーズ(童心社)「カーネーション・デイ」(ほるぷ出版)「ぼくってかわいそう!」「明日のランチはきみと」「うちゅうじんはいない?」(いずれもフレーベル館)「わたしのペットはまんまるいし」(ポプラ社)などがある。

<高橋和枝>
971年、神奈川県生まれ。東京学芸大学卒業。イラストレーター、絵本作家。2001年、「くまくまちゃん」(ポプラ社)で絵本作家デビュー。作品に「それはすごいなりっぱだね!」(作・いちかわけいこ、アリス館)、「ねこのことわざえほん」(ハッピーオウル社)、「りすでんわ」(白泉社)、「くまのこのとしこし」(講談社)、「もりのだるまさんかぞく」(教育画劇)などがある。

 初読です。「クローバーと魔法動物」のケイリー・ジョージの動物ファンタジーです。原題はHeartwood hotel:A true home. 初版は2017年。日本語版の初版は2018年です。

 動物ファンタジーって、好き嫌いが別れますよね。わたしたちの年齢だと、幼いころに「ジャングル大帝」が大ヒットしたので、好きな方が多いのです。そんな感じで、その子ども世代がまた好きになって、その子世代がまた……と、言う感じで、動物ファンタジーブームは定期的に来るそうです。(太田淑子さん……ご冥福をお祈りします)

 いまだと、「モルカー」が人気ですね。わたしは、まだ見ていないんですが、画像を見ただけで愛らしいと感じるので、見たらはまるんじゃないかと思います。

 ただ、動物ファンタジーは、動物愛が強い人には逆に受け入れられないこともあって、子どもの頃でも、「白いライオンがジャングルで大切にされることはない」「肉食獣と草食獣が仲良く暮らすのは無理」と、「ジャングル大帝」を受け付けない動物好きの友達がいました。

 大人になると、児童文学での動物ファンタジーは「多様な人々の暮らし」の比喩だとわかり、新鮮な視点で読めるようになりました。そう考えると、動物ファンタジーは深みのあるストーリーばかりなのです。

 もし、お子さまが動物ファンタジーに疑問をもつタイプの場合(それは、冷静なものの見方ができるということであり、すばらしいことです)、比喩であるとお伝えいただけたらと思います。

 この物語の主人公は、ねずみのモナです。海外の動物ファンタジーでは、ねずみが主人公になることが多く、おそらくは、貧しい労働者階級の人間の比喩なのではと思います。

 ストーリーは……

 モナはひとりぼっちのねずみの女の子です。住居を転々とし、やっと居心地のいい巣を見つけたと思った矢先に、嵐で家を失いました。

 家を失い、嵐を逃れ、森の奥へ逃げ込んだモナは、大きな木の中につくられた、動物たちのためのホテルにたどりつきます。

 「キバもかぎづめも ここではないもおなじ  
  みなさまを守り 敬うこころとともに」
(引用p17)

 暖炉の上に掲げてあるあたたかな言葉。
 おそろしいオオカミたちから森の動物たちを守る隠れ家ホテル、それがハートウッドホテルだったのでした。

 ハートウッドホテルのオーナーはアナグマのハートウッド氏。受付係はとかげのジルです。ヤマアラシのチクリーさんはコック。リスのティリーはメイドです。

 家を失い、嵐の日に逃げ込んだモナを、ハートウッド氏は冬になるまでの期間限定でメイドとして住まわせてくれます。
 はじめてのメイド生活で、モナは戸惑うことばかり。チクリーさんは優しいけれど、ヒギンズさんは厳しいし、リスのティリーは彼女につらくあたります。でも、いっしょうけんめい仕事をしているうちに、だんだんモナは自分の居場所を獲得してゆきます……

 と、いうのがあらすじ。

 面白いのは、メインキャラクターにハリネズミとヤマアラシが両方出てくること。ハリネズミのヒギンズ夫妻のうち、妻のヒギンズさんは客室係。モナたちの厳しい上司です。夫のヒギンズさんは庭園係。

 ハリネズミは背中にトゲのたくさんある小さな肉食獣ですが、ヤマアラシは背中にとげがある大きな草食獣です。ここらへんもちゃんと考えて書かれていて、ヒギンズさんはきつい性格で、ヤマアラシのチクリーさんは、すごく優しくて親切で、モナを助けてくれます。

 ハリネズミとヤマアラシの両方をあえて登場させたところに、作者の動物愛の強さを感じますね。

 モナは幼いころに両親を失い、形見のハートのマークのついたトランクを持ってさすらう孤独なねずみでした。多産なねずみがたった一匹でさすらうと言うのは、かなりさみしいことだと思います。

 「ハートウッドホテル」第1巻はそんなモナが自分の「居場所」(ホーム)を持つまでのお話です。

 ハートウッドホテルには、いろんな事情を持ったお客様が宿泊しています。
 小さなモナががんばることで、お客様たちのお困りごとが解消れたり、傷が癒えていく、それによって傷ついて自信を失っていたモナも立ち直ってゆくのです。

 字はほどよく読みやすく、ひらがなは多め。難しい漢字には振り仮名が振ってありますので、小学校中学年から。でも、ホテルを舞台にしたヒューマンストーリーだと思うと、大人でも楽しめます。

 動物好き、物語り好きの内向的なお子さまにおすすめです。表紙も挿絵もあたたかみのある絵でかわいらしく、ストーリーにぴったりです。

 だんだん寒くなるこの季節、あたたかいおうちの中で読むのにぴったりの本です。おうち時間にぜひどうぞ。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素はありません。職場のぶつかりあいのようなことはおきますが、ちゃんと解決します。HSPHSCの方におすすめです。

 しみじみとした、あたたかみのあるストーリーで、オオカミ以外は悪者も登場しません。しかし、オオカミはあきらかに悪いので、オオカミ愛が強い方だけは、それをご承知置きください。

 チクリーさんの作る種入りケーキ(シードケーキ)がすごくおいしそうなので、読後は、温かいお茶とシードケーキでティータイムを。

 

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