【すうがくでせかいをみるの】誰だって好きなことがある。数学が大好きな女の子の絵本【4歳 5歳 6歳】

2021年11月28日

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すうがくでせかいをみるの  ミゲル・タンコ/作 福本友美子/訳 西成活裕(東京大学教授)/日本語版監修 ほるぷ出版

うちの家族にはみんな好きなものがある。お父さんは絵、お母さんは昆虫、お兄ちゃんは音楽。わたしは、何かな。いろいろやってみたけど、どれもしっくりこない。……そうだ!

この本のイメージ 個性は大切☆☆☆☆☆ 自分の目で世界をみる☆☆☆☆☆ 自分を発見しよう☆☆☆☆☆

すうがくでせかいをみるの  ミゲル・タンコ/作 福本友美子/訳 西成活裕(東京大学教授)/日本語版監修 ほるぷ出版

<ミゲル・タンコ>
スペインのエストレマドゥーラ生まれ。子どもの本の作家。スペインで生まれ育ち、現在は絵本作家として活動するかたわら、スペインとイタリアで子どもたちにイラストを教えたり、ワークショップを開催したりしている。これまでに英語、スペイン語で40冊以上の子どもの本を出版した。日本で出版されるのはこの本がはじめて。

<福本友美子>
公共図書館勤務の後、児童書の研究、翻訳などを行う。「ひみつだから!」「虫ガール ほんとうにあったおはなし」(いずれも岩崎書店)で日本絵本賞翻訳絵本賞受賞。ほか「ないしょのおともだち」「数字はわたしのことば」(ほるぷ出版)など絵本の翻訳多数。創作絵本に「図書館のふしぎな時間」(たしろちさと絵 玉川大学出版部)がある。

<西成活裕>
日本の数理物理学者。専門は非線形動力学、渋滞学。

すうがくでせかいをみるの  ミゲル・タンコ/作 福本友美子/訳 西成活裕(東京大学教授)/日本語版監修 ほるぷ出版

 原題は、Cuenta conmigo/ Count with Me.(わたしと一緒に数えよう)
 原書初版は2019年。日本語版初版は2020年です。

 ネットで偶然見つけて、読んだら大感動。これ、すごくいい本なんです。

 この絵本のすばらしさをなんとかお伝えしたいのですが、わたしより、数学が大好きな人間がいるので、彼に書いてもらいました。

 時々登場する、例のプログラマーです。
 では、どうそ!

【すうがくでせかいをみるの】
 

 とても幸せな数学好き少女のお話です。

 普通、数学が好きな女の子、というだけでも、よくて人とはちがう、普通でない「変わった子」扱いを世間からされてしまうことでしょう。
 家族からだって扱いにくいとか女だてらに勉強なんて……等々と、いろいろ言われるのが常。というところでしょうが、この本の主人公の女の子は違います。

 まず、家族がとても良いのです。お父さん、お母さん、お兄さんそれぞれがてんでバラバラに好きなモノ(お父さんは絵画、お母さんは昆虫学、お兄さんは音楽)にのめり込んでいて、それを誰も否定しません。

 そんな家族に囲まれて育つ女の子は、「すきなことがあるっていいな」と、ごくナチュラルに人とは違う「すきなこと」を持つことにあこがれます。

 そうして、自分独自の「すきなこと」を探して、見つけるのが「数学」なのです。

 やっぱり好きなことならどれだけのめり込んでも苦になりません。
 タイトルのとおり、数学の目で世界を見て、自然界にあるフラクタル、さまざまな図形、そして運動の軌跡(軌道)、さらには集合まで、「すきなこと」を見る目で熱中して観察していきます。

 この本の最初に出てくる「フラクタル」というのは、同じ図形の中にまた同じ図形が繰り返し何度もでてくる再帰的な図形構造を言います。
 言葉で書くとなんだか難しそうですが、自然界にはたくさんそういう構造があるので、最初に数学の「不思議」に出合うにはぴったりの題材です。

 そこから、(普通の学校では逆の順番で)多角形、や同心円、さまざまな線、立体図形、さらには物体が空間を動くときの軌道、集合など、とても多くの数学的な要素が女の子の視点でわかりやすく書かれています。

 学校のお勉強で無理やりおしつけられるのではなく、こうして出会い、自分で発見していった数学の「不思議」は、しっかり彼女の中に根付いて数学的思考と、数学的な視点で世界を見ることの土台になっていきます。とても良い本です。

 これ、世界を数学で見る時の順番としてとても自然なんですよね。点や線、直線に曲線といった抽象的な理解の仕方よりも、まずいきなり「フラクタル」という見方があって、自然界にある「不思議」を数学的に見つけていくのがまた良いのです。

 学校の教え方の順番では点、線などがあってそれからやっとフラクタルに行くはずで、順番が逆なんですが、抽象的な概念より先に目で見て触っていける自然界にあるモノからのほうが、やっぱり「自然」です。

 こういう、好きなことを誰にも否定されずに好きなことに熱中できる家族の中に生まれた娘なら、たしかに世界をこういう風に(数学的に)見ていくだろうな。という気にさせる素敵な本です。

 ありがとうございました!

 ちょっと思い出話になってしまいますが、
 学生時代、仲良しの友達に「趣味は数学の問題集を解くこと」と言う子がいて、彼女は日曜日の最高の楽しみが「数学の問題集」だったんですよ!

 クラスメイトが全員、難行苦行のようにがんばる受験勉強が彼女にとってはレジャー。あまり好きではない現代国語や社会科を勉強するのには、さいごに数学の勉強時間を「エサ」として設定して、やる気を持続していると言っていました。
 数学がエサ! デザートか!

 でもね、つらい勉強を頑張ってやっていると言うと世間から褒められるけれど、「楽しくてしょうがないんです」と言ってる子は、案外褒められはしないものなんです。不思議でした。

 「数学はたった一つの答えがビシッと決まるのがスッキリするの! 国語なんて答えがいっぱいあって、キモチワルイ」と言う彼女とは、現代国語のほうが好きなわたしは「それが面白いんだよ!」とよく論争になっていました。それ以外は、意見が食い違うことなんてほとんどなかったんだけども。なつかしい。

 彼女の目から見た世界はこんなだったのかな、と想像してこの絵本を読んでいます。

 「自分にはこれだ」と言うものがあれば、人生はぐんと面白くなります。それがどんなことでも。

 岡田淳先生が、「竜退治の騎士になる方法」で、どんな小さなことでもいいから「これだ」と言うものを見つけてとことんやってみろ、と書いていますが(要約)、それがいちばん人を幸せにして、「心のトゲトゲ」をなくし、みんなが幸せになれる道なのかもしれません。

 夢中になるものが見つかれば、他人なんてどうでもいいですもんね。

 この女の子のおうちは、それぞれがみんな、自分の好きなことに熱中していてすごく楽しそう。
 パパの絵やお兄ちゃんの音楽はわりとわかりやすい趣味だけど、ママの昆虫研究は、なかなか本格的。チョウの標本コレクターとか言うレベルじゃないんです。かなり広い専用の部屋で、顕微鏡まである。

 こんなおうちに生まれたので、彼女が「数学」と言う自分だけの世界を発見したときも、家族は自然に受け入れています。

 「何かやりたいことを見つけてみたら」と大人が言うとき、音楽とか、お料理とか、絵とか、サッカーとか、野球とか、わりと自分たちの想像のつく範囲ですすめてしまいます。でも、子どもの興味は無限大ですから、何を発見するかはその子しだい。

 大人が想像もしなかったものを「おもしろい」と感じ、自分だけの目で世界を見るようになるかもしれません。

 それに、数学的なものに魅力を感じる人種は、そんなに少なくはなくて、一定の割合で出現する才能ですから、内向的なお子さまには可能性があります。

 情緒的なことが苦手で、ふわっとした曖昧な説明ではなかなか納得しないお子さまには、数学好きの可能性があります。そんなとき、この絵本を一緒に読んでみてはいかがでしょうか。「これだ」と言うものと出会えるかもしれません。

 絵はほのぼのとしてあたたかく、文章はすべてひらがななので、五十音さえおぼえれば、読むことが出来ます。もちろん、読み聞かせにも。

 みんなが、自分にとっての「世界」を見つけられますように。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素はまったくありません。どんな人もその人なりの世界がある、それを探してみよう、と言うポジティブなメッセージに満ちています。
 「数学で世界をみる女の子」を絵と文章で表現して絵本にした、と言うのが、論理と芸術が融合していて、メタ的にも完成していて、すばらしい。

 数学好きの大人にも、みずみずしい気持ちを蘇らせてくれる絵本です。
 子どもから大人まで、大好きなものがある人、大好きなものを見つけたい人、数学が大好きな人に、おすすめです。

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