【10かいだての まほうつかいの おしろ】魔法使いになりたい女の子の一夜の大冒険。わくわくの絵本【4歳 5歳 6歳】
月夜の晩のこと。女の子は屋根裏部屋に上りました。するとクロネコの座っているイスに見たことのない手紙が置かれています……「わあ、これは」……女の子の夢がいっぱい詰まった、新感覚の絵本。
この本のイメージ 図鑑的面白さ☆☆☆☆☆ 組み合わせる楽しみ☆☆☆☆☆ 心の成長☆☆☆☆☆
10かいだての まほうつかいの おしろ のはな はるか/作 PHP研究所
<のはな はるか 野花 遥>
1989年生まれ。東京藝術大学修士課程修了。主な絵本作品に『たくさんの たくさんの たくさんの ひつじ』『109ひきの どうぶつマラソン』(ひさかたチャイルド)『うさぎマンション』『ペンギンクルーズ』(くもん出版)『めいたんていワンムズ』(学研)など。
子どものころ、魔法使いになりたいと思った事はありませんか?
これは、小さな子どもの、そんな夢を叶えてくれる絵本です。
「10かいだてのおひめさまのおしろ」の続編のこの絵本では、ある女の子が月夜の晩、屋根裏部屋で不思議な手紙を見つけ、魔法使いのお城にゆくところからはじまります。
1階では、魔法使いのお洋服を選びます。おはなのまほうふく、うみのまほうふく、はねのまほうふく……素敵な魔法服がいっぱいです。
羽の魔法服はプリキュアみたいでかわいいし、時の魔法服がスチームパンクみたいでかっこいい。森の魔法服も素敵です。
女の子は、ほしのまほうふくを選びます。
2階では、髪型を選びます。たまねぎツインテール、リボン編みこみ、おだんごヘア…… どれもかわいい。複雑な髪型もいっぱいあります。女の子は、みつあみヘアを選びます。これなら自分でつくれます。
3階では、くつとくつしたを選びます。リボンのくつした、バラのくつした、みずたまのくつした……。 クロスのくつ、ひまわりのくつ、ようせいのくつ……。
女の子は、にじのくつしたとあみあげブーツをはいて、4階へ。
4階では、魔法生物と一緒に遊びます。ドラゴン、人魚、サラ満ダー、フェニックス、フェアリー……。
みんなと楽しく遊んで、植物や動物のことを学びます。
5階ではお茶の時間。
不思議なお菓子がテーブルに並んでいます。女の子は、ハーブティーをおいしく入れて、たのしくティータイム。
6階では、魔法の道具を選びます。
魔法のじゅうたん、魔人のランプ、魔法のほうき、ペンデュラムに透明マント……それぞれの絵の下にどんな魔法の力があるのか、説明文が書いてあります。わくわくしますね。
女の子はほうきを選んで7階へ。
7階ではお勉強です。「よく調べて 誰かに教えてもらい、何度も練習し、失敗したらやり方を変えてみたりして、ときどき休憩する……」なにかを学んで上達する方法を教えてくれます。
女の子は、しっかりうなずいて8階へ。
8階では、魔法の力を使う練習です。7階で「学び方」を教わった女の子は、ここで一生懸命頑張ります。この「学び方」を教わってから学ぶという順番が、地味にすばらしい。そうですよね、やみくもに努力してもたいへんなことは、たくさんあります。
9階はまほうのアクセサリー選び。綺麗な宝石に、金色に輝くつばさのブローチ。そして、まほうつかいにぴったりの帽子。
魔法使いの帽子をかぶせてもらい、立派な魔法使いになれたとお墨付きをもらいます。うれしいですね。
そして、10階へ……
10階では、いままでの階のみんなが待っていてくれました。女の子の魔法使いとしてのお披露目パーティーです。楽しいパーティーのあと、女の子の服や帽子が消えてゆきますが……
「どりょくができた あなたは りっぱなまほうつかいです。いつまでも みにつけたことを わすれないよう このステッキをお持ちください」……
ラストシーンでは、女の子がかわいいホットケーキを焼いています。よく調べて、やり方を教わり、練習したんですね。彼女は魔法が使えるようになったようです。
「10かいだてのおひめさまのおしろ」では、身だしなみをきちんとすることややさしい心をもつことなど、お姫様になったつもりで生活することで、様々なことができるように構成されていました。
この「まほうつかいのおしろ」は、お洋服やくつした、靴を選ぶことからはじめて、普段の着替えや身だしなみが楽しくなる工夫から、植物や動物に興味をもつこと、新しいことを学んで何かができるようになること、までの「学ぶ課程」を楽しい絵とともに描いています。
図鑑のようなわくわく感もありつつ、選ぶ喜び組み合わせる楽しみを描き、「何かを習得する」方法とそのすばらしさについて描いており、知育要素も抜群。
順序としては、「おひめさまのおしろ」をまず読んで、身だしなみや思いやりの心を学んだら、何かの習得を目指して「まほうつかいのおしろ」を読むという順番がいいかもしれません。
「おひめさまのおしろ」より「まほうつかいのおしろ」のほうが好みと言うお子さまもいます。お姫様と魔女って、小さな女の子のなりたいもの一番と二番を常に競り合ってる感じ。わたしも子供心に戻ってわくわくしながら読みました。
これを読むと、自分でもこの絵を組みあわせて、デザイン画を描きたくなってきます。そんなクリエイティブな欲求の強いお子さまのためには「10かいだてのおひめさまドレスおえかきブック」があります。これはいいですね!
このシリーズは、大人の和みと言うよりも、完全に子どものための、子どもの心に寄り添った絵本です。大人になってしまうと、この本の楽しさが、小さな子どもの頃の半分も感じられなくなってしまうかもしれません。でも、思い出してください。「グリコ」のオマケとか……集めて、組み合わせて、楽しかったですよね。
今調べたら、令和のグリコのおまけは、アプリと連動してるんですね! うわあ、ハイテク!
大人でも、ゲームのアバターのお洋服や帽子にこだわったりしますよね。合成して、組み合わせて、着せ替えて……
こういうのは、人類のDNAに「楽しい」って刻み込まれているのかもしれません。
かわいくて、たのしくて、そして、なにかを習得する、努力する喜びも教えてくれる知育絵本です。ふだんの生活でも「わたしは魔法使いなんだ」と思って、魔法を学ぶつもりでいろんなことを練習したら、毎日が楽しくなりますね。
お料理の魔法とか、園芸の魔法とか、手芸の魔法とか。
クリスマスまでの期間、町並みは魔法の力がいっぱいに満ちて輝いているように見えます。想像力にあふれたお子様へのクリスマスプレゼントに、このかわいい絵本をぜひどうぞ。
繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)
ネガティブな要素はいっさいありません。選ぶ楽しみ、組み合わせる喜び、そして、学ぶこと、努力することの大切さを教えてくれる絵本です。絵は、とてもかわいらしく、詳細で、何度も繰り返し読んで楽しめるようになっています。
読後はハーブティーでティータイムがしたくなるはずなので、ご用意を。
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