【クリスマスとよばれた男の子】サンタクロースが、サンタクロースになる前の物語。小さなニコラスの大冒険【小学校高学年以上】

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クリスマスとよばれた男の子 マット・ヘイグ/文 クリス・モルド/絵 杉本詠美/訳 西村書店

ニコラスは貧しい木こりヨエルの息子で、父さんと二人暮らし。でも、大好きなお父さんと一緒で、辛い事はたくさんあっても幸せでした。ところがある日、狩人がアンデシュが訪ねてきて、父さんを遠い北への冒険に誘ってしまいます……

この本のイメージ ファンタジー☆☆☆☆☆ クリスマス☆☆☆☆☆ 大冒険☆☆☆☆☆

クリスマスとよばれた男の子 マット・ヘイグ/文 クリス・モルド/絵 杉本詠美/訳 西村書店

<マット・ヘイグ>
イギリスの作家。大人向けの作品に、「今日から地球人」(早川書房)などの小説やビジネス書がある。児童書作品で、ブルー・ピーター・ブック賞、ネスレ子どもの本賞金賞を受賞。

<クリス・モルド>
イギリスの作家、イラストレーター。文と絵の両方を手がけた作品を多数発表するほか、「ガチャガチャゆうれい」(ほるぷ出版)など多くの子どもの本のイラストも担当し、ノッティンガム・チルドレンズ・ブック賞を受賞。

<杉本詠美>
広島県出身。広島大学文学部卒。おもな訳書に、「テンプル・グランディン 自閉症と生きる」(汐文社、第63回産経児童出版文化賞翻訳作品賞を受賞)など。

クリスマスとよばれた男の子 マット・ヘイグ/文 クリス・モルド/絵 杉本詠美/訳 西村書店

 この季節にぴったりのファンタジーをご紹介。
 原題は A boy called Christmas. 本国初版は2015年。日本での初版は2016年です。今年Netflixで映像化されたことで話題です。

 おはなしは……

 フィンランドの山奥に、ニコラスという男の子がいました。お母さんは熊に襲われたときにニコラスを逃がすために死に、木こりのお父さんヨエルと貧しい二人暮らし。でも、ニコラスはお父さんが大好きでした。

 つらいことがあっても、貧しくても幸せと感じることも多かったニコラスでしたが、ある日、狩人のアンデシュが訪ねてきて、突然変化が訪れます。

 王様の望みを叶え、北のはてエルフヘルムの存在を確かめた人間は、褒美がもらえる。だから、一緒に行かないかと言うのです。父さんは、ニコラスの大切なそりを持って、アンデシュたちと一緒に行ってしまいました。

 のこされたニコラスのもとには、いじわるなカルロッタおばさんがやってきて、毎日ニコラスを虐待します。
耐え切れなくなったニコラスは、お父さんを追って、北への旅に出るのでした……

 というのが、あらすじ。

 サンタクロースは、子どもたちにプレゼントをくばる存在です。プレゼント、と言うのは交換とか売買とはちがい、一方的なもの。
 人間同士のプレゼントなら、もらったらお返しをするのが礼儀ですが、子どもたちが眠っているあいだに勝手にくつしたにプレゼントを入れて去ってゆくサンタクロースにはお礼のしようがありません。

 つまり、サンタクロースは「見返りを求めていない」のです。

 クリスマスやサンタクロースの概念は、日本人にとっては新しい文化です。それでも、戦後の日本で受け入れられ愛されて今ではかなり定着しました。わたしの子供の頃、うちにはクリスマスもサンタさんもありませんでしたが、そんなわたしでも「クリスマス」や「サンタさん」と聞くと、心が弾みます。

 それは、サンタクロースが「サプライズ」と「無償の愛」と言う、子供にとって大切なことを運んでくれる存在だからではないでしょうか。

 この物語は比較的新しい作品ですが、物語はわりとオーソドックス。隔絶された世界で貧しく生きていた少年に、いきなり運命の転機が訪れ、大切なものをすべて失って探求の旅に出ます。旅の途中で仲間を得て、持ち物を増やし、目的地に到着し、夢に破れ、新しい夢を手にし、成長して人生の目的を得る……と言う流れ。

 ニコラスがとてもいい子で頑張り屋なのですが、「絶対にくじけない子」と言うわけではなく、ときどきくじけそうになるのもリアルです。そして、そんなときは、偶然や、別の力で前へと押し流される。こういうのは、現実でもよくあること。

 物事って、自分で決めてるときもあるけれど、何か「大きな力」が勝手に決めているのではないかと感じることも多々あるのです。病気とか災害とか、偶然の積み重ねでどうしてそうなるのかわからないけどそうなった、みたいな。

 ニコラスとトナカイのブリッツェンとの出会いがまさにそうで、ニコラスはブリッツェンの怪我をなおしてあげられればそれでいいだけだったのですが、ブリッツェンが仲間に加わったことで、思いもよらない距離を進むことができるようになります。そして、もうやめたい、戻りたい、と諦めかけたときは、ブリッツェンが前に進む。

 そんなふうにして、ニコラスは成長してゆきます。旅の途中でさまざまなものを失い、絶望したりもしながら……

 「不可能というのは、ぼくがまだ理解できていないだけで、ほんとは可能なことなんだ」(引用p161)

 これが、ニコラスが気づいた大切なこと。

 ニコラスは、優しいエルフからもらったドリムウィックの力で、不可能を可能にする「心の力」に気づきます。そして、以前のニコラスなら諦めていたであろう困難にも立ち向かい、危機から脱出するのです。

 正統派のまっすぐな冒険物語のよさもありながら、今風のちょっとした風刺も効いていて、読んでいると時々クスッとさせてくれます。意地悪なエルフ、ヴォドルがエルフの村での新聞社の社長で、マスコミの力を使って票を集めてリーダーになってしまうところとか。そして、売り上げのために、新聞にはネガティブなニュースを書き続けるとかね。

 それに対抗するのが、昔ながらのエルフの魔法。信じることで、不可能を可能にする力です。

 そう、確かに信じることで、努力することで、道が開けてゆく。それが「魔法」なのかもしれません。言い古されたことだけど、でも、忘れちゃいけない、大切なこと。

 最近の日本のトレンドはダークファンタジー寄りなので、正統派の男の子の冒険ファンタジーは新鮮です。甘すぎることもなく、時折ビターな展開もありますが、最後は心が温かくなるハッピーエンドです。

 そうそう、物語の中にミカンが登場します。あの、日本のミカンです。日本のミカンはもう海外でも定着していて、「クリスマスオレンジ」とも呼ばれ愛されているようです。驚き。それに、地味にうれしいですね。

 新しいけれど、なつかしい、そんな不思議なファンタジーです。映画の予告編もみましたが、小説のいいところを膨らませて、より面白くしているようです。これは期待できそう。

 寒い季節のおうち時間に、クリスマスプレゼントに。大人も楽しめる、冒険物語です。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素はほとんどありません。最初のほうのカルロッタおばさんの虐待がわりとひどいので、そこだけはちょっと読んでいてつらいかも。そこを抜ければ、あとは、スピード感ある冒険物語です。

 おいしそうなフィンランドの料理やお菓子がたくさん登場します。
 特に、フィンランドのブルーベリーパイ、「ムスティッカピーラッカ」
 読後は、ブルーベリーのパイと、熱いコーヒーでひとやすみしましょう。

サンタクロースの物語にはこんなのもあります

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