【くのいち小桜忍法帖】仇討ち騒動の裏側を斬る!キュートな忍法帖、完結編【春待つ夜の雪舞台】【小学校中学年以上】

2024年3月21日

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春待つ夜の夢舞台   くのいち小桜忍法帖 斉藤洋/作 大矢正和/絵 あすなろ書房

あるときは薬種問屋の丁稚、あるときは愛らしい町娘、しかしてその実態は、公儀御庭役橘北家のくのいち四郎小桜なのです! 謎の辻斬り侍を追っていた小桜、ついに忠臣蔵の裏側に飛び込みます…… 

春待つ夜の夢舞台   くのいち小桜忍法帖 斉藤洋/作 大矢正和/絵 あすなろ書房

<斉藤 洋>
日本のドイツ文学者、児童文学作家。亜細亜大学経営学部教授。作家として活動するときは斉藤 洋と表記する。代表作は「ルドルフとイッパイアッテナ」「白狐魔記」など。

<大矢正和>
1969年生まれ。日本大学理工学部建築学科卒業。イラストレーター。

 くのいち小桜忍法帖の完結編。初版は、2017年です。

 このお話は、一応一話完結と言う形をとっていますが、大きな流れはあるため、シリーズ第一巻「月夜に見参!」からお読みになることをおすすめします。


 「月夜に見参!」のレビューはこちら

 また、「くのいち小桜忍法帖」は、斉藤先生の人気シリーズ「白狐魔記」の六巻目「元禄の雪」の裏側のお話となり、両方に登場するキャラクターもいるため、「白狐魔記」もお読みになると、二倍、楽しめます。

 時は、元禄時代。
 橘北家という架空の忍者……御庭役の家と、彼らの活躍の物語です。

 主人公は、小桜。普段は薬種問屋の丁稚として働きながら、忍者としての修行に励む橘北家の末娘。「おつとめ」と呼ばれる任務にあわせて、少年のすがたにも少女のすがたにも、そして忍者のすがたにもなる、変幻自在のくのいちです。

 相棒は、半守(はんす)という、しゃべるジャーマンシェパード。少し無鉄砲な小桜の、頼もしいバディ。

 さて、今回は、江戸の街で謎の辻斬り事件が発生、なんと小桜の乗っていた駕篭も襲われます。能面をした辻斬り侍は強く、危うく斬られそうになる小桜。

 難をのがれた小桜は、ひいきにしていた呉服屋の番頭が大怪我をしたことに義憤を感じ、能面の侍を捜索しますが、彼にはたいへんな秘密がありました……。

 腕の立つ辻斬り侍の事件、謎の女形、市川桜花、そして忠臣蔵と、ミステリアスな事件がクロスオーバーする、今回のお話、さて、どんな決着をみせてくれますか……

 小桜が、くのいちになったり、街娘になったり、男装して丁稚になったりと、様々な姿を見せてくれるのが楽しい。しょっちゅう振袖を仕立てて町をそぞろ歩きすることが趣味と言う、おしゃれ大好きな女の子です。しかし、アクセサリーは手裏剣にしていたりと、そこらへんは、ぬかりない。

 そうかと思えば、「辻斬り」がどんなものか知らなかったり、大人の世界の駆け引きや忖度などはわからない、純なところもあります。

 今回のお話では、いわゆる「上級国民」問題が語られます。あきらかに悪いことをしているとわかっていても、罰を受けない者、手を出せない者が世の中にはいる。そう言う輩を取り締まるお手伝いをしているのが御庭役のはずなのに……。納得できない小桜。

 そして、そんな小桜の悩みを、やすやすと飛び越えてしまう、あやかしの世界の住人、市川桜花。

 今回で、小桜は市川桜花の正体にほんのすこしだけ触れることになります。

 そして、まだまだお江戸には、謎がいっぱい、事件がいっぱい。小桜のくのいちとしての「おつとめ」もはじまったばかり。
 いくらでも続編が作れそうなところで終わっているので、また新しいシリーズで小桜たちに会うこともありそうです。

 字はほどよい大きさで読みやすく、総ルビではありませんがほとんどの漢字に振り仮名が振ってあるので、読みやすい物語です。小学校中学年から。ただし、人物名などの固有名詞が少し難しいので(人物名の振り仮名は全部ついています)、混乱しそうなときは、メモをしながら読むといいかもしれません。

 橘南家、橘北家などの御庭役や忍術には架空の設定が入っていますが、それ以外は、史実に基づいており、御庭役のお役目や、幕府と大名たちの関係、江戸時代の統治システムについて、詳しく語られていて、そこも魅力のひとつ。

 日本史や江戸時代、時代劇が大好きなら、おすすめです。また、「白狐魔記」も同時にお読みになると、二倍楽しめますよ!

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 人が死ぬシーンとかはありますが、気をつけて書かれているので、そこまで残酷、残虐ではありません。「そういうシーンがあるのだな」と身構えていれば大丈夫なら、おすすめです。

 江戸時代の雰囲気も伝わってくる、それでいて、イマドキの感覚もある、キュートな時代劇です。

 読後は……うなぎが食べたくなってしまうかもしれません。ちょっぴりご用心。

 

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白狐魔記

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