【きつねの橋 巻の二】魔と人の交流を描く、新感覚平安ファンタジー第二弾【うたう鬼】【小学校中学年以上】

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きつねの橋 巻の二 うたう鬼  久保田香里/作 佐竹美保/絵 偕成社

ときは平安。主人公平貞道は、仲間の季武とともに源頼光に仕えていました。ある日、新入りの渡辺綱に弓の勝負で負け、ふさぎこんでいた季武を友人の公友とともに山へ連れ出しますが、そこで鮮やかな紅葉の木もとで、不思議な歌声を耳にします……

この本のイメージ 平安ファンタジー☆☆☆☆☆ 怖くないオカルト☆☆☆☆☆ そうきたか☆☆☆☆☆

きつねの橋 巻の二 うたう鬼  久保田香里/作 佐竹美保/絵 偕成社

<久保田香里>
岐阜県に生まれる。現在は長野県に在住。
第3回ジュニア冒険小説大賞に応募。『青き竜の伝説』大賞受賞。作品は岩崎書店より刊行。「氷石」で第38回児童文芸新人賞受賞。ほかに「緑瑠璃の鞠」「駅鈴」「根の国物語」「天からの神火」などを刊行。

<佐竹美保>
富山県生まれ。
SF・ファンタジーの分野で多くの作品の表紙、さし絵を手がける。おもな仕事に「宝島」「不思議を売る男」「西遊記」「三国志」など渡辺仙州編訳の中国古典シリーズ、上橋菜穂子と組んだ「虚空の旅人」「蒼路の旅人」など「守り人」シリーズ、ほか内外の多数の作家から厚い信頼を寄せられている挿絵画家。

きつねの橋 巻の二 うたう鬼  久保田香里/作 佐竹美保/絵 偕成社

 久保田香里先生の新感覚平安ファンタジー、「きつねの橋」シリーズの第二巻です。初版は2021年。第一巻がとても面白かったので、第二巻を読むのが楽しみでした。

 お話は一話完結ではありますが、設定が第1巻から続いているので、まずは第1巻「きつねの橋」からお読みください。

「きつねの橋」のレビューはこちら

 さて、「巻の二 うたう鬼」ですが…… いやあ、面白かった! 

 このお話、意外性のオンパレードなので、セオリー通りに話がすすみません。ですから、あらすじを書いてしまうと、面白さが伝わらなくなってしまうので、今回は思い切って、あらすじ紹介は無し。

 ……それではあんまりなので、とりあえず一行で説明すると、

 右腕を切り落とされた鬼が、自分の腕を取り返しに来る。 ……そう、あの伝説がモチーフ。

 この「うたう鬼」、一般的に伝わっていた酒呑童子(しゅてんどうじ)伝説に似てはいますが、この「子供向け昔話の酒呑童子伝説」のほうが実は原典とは違っていて「右腕を取り返しに来る鬼」は酒呑童子とは別の鬼退治の話だったのが後年酒呑童子伝説と合体してしまったようなのです。

 わたしが小学生の頃に読んだ本も、渡辺綱(わたなべのつな)が鬼を退治する「戻橋」と、「頼光四天王の酒呑童子退治」の合体版のお話だったので、わたし自身、長らく間違えておぼえていました。しかも、かなり長い間、渡辺綱と坂田金時を同一人物だと勘違いしていたんですよね。……お恥ずかしい。

 今回の「うたう鬼」は、その元になったほうの鬼退治の話「戻橋」がモチーフ。より原典に近くなっています。

 そさて、この「巻の二」から、貞道たちが仕える源頼光さまのもとに、新しい仲間が登場します。伝説「戻橋」の主人公、渡辺綱です。

 これではっきりしましたが、平貞道は、実在した人物源頼光(みなもとのよりみつ)に仕えた、頼光四天王の一人、碓井貞光(うすいさだみつ)がモデル。

 頼光四天王の残りの三人は、卜部季武(うらべすえたけ)、渡辺綱、坂田金時(さかたのきんとき)。季武はもう登場していますから、残りは坂田金時だけ。彼はあの、まさかり担いだ「金太郎」の成長したすがたです。これはいずれ、登場するでしょう!楽しみですね。

 宿敵・袴垂は今昔物語にも登場する大盗賊で、今回は伝説のエピソードが挿入されています。当時の有名人が続々と登場し、オールスターキャストの展開は、わくわくします。

 そうそう、そういえば、頼光四天王は、最近はゲームなどでよく登場する有名キャラなんですね。知らなかった。最近の若者のほうが、ゲームで歴史に詳しくなっているのではないでしょうか。わたしなんぞは、「戻橋」と「酒呑童子」を混同して憶えていたくらいですから。(トホホ……)

 今回のお話は「鬼」の解釈が斬新で、それが大きな魅力になっています。「よくある話」の「よくある展開」にはならず、「おお、そう来たか!」の連続が心地良い。

 怖い話が苦手な方、安心してください。「うたう鬼」は、おどろおどろしい鬼退治ではなく、紅葉や桜が舞い散る美しく幻想的な鬼物語です。

 もちろん、きつねの葉月や、五の君など、おなじみのキャラクターも登場。葉月の姫様へのけなげな想いには胸を打たれますし、五の君の幼いながら帝王然としたカリスマには末恐ろしさを感じます。いや、かわいいんですけども。

 人、きつね、植物などが種族の垣根を越えて心の交流をするなか、最も恐ろしいのは「人間の袴垂」というのも、この物語の面白さ。いずれ、貞道たちと袴垂は決着をつける時が来るのかもしれません。

 登場人物の名前や地名、役職名などに難しい漢字が多いですが、手厚く振り仮名が振ってあります。総ルビではありませんが、簡単な漢字以外にはほぼ振り仮名がふってありますので、がんばれば小学校中学年から読めると思います。ボリュームはありますが、面白いのでぜひ。もちろん、大人が読んでも面白い、歴史ファンタジーです。

 ※この本には電子書籍もあります。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素はほとんどありません。活劇シーンも、残酷・流血描写はなく、気をつけて書かれています。
 オカルト要素はありますが、怖くはなく、美しい幻想物語です。

 読後は温かい緑茶と落雁でひとやすみしてくださいね。

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