【銃とチョコレート】バレンタインに本格ミステリを。大怪盗の謎を解く、少年の冒険物語【小学校高学年以上】

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銃とチョコレート 乙一/作 講談社

富豪たちを狙う、怪盗ゴディバ。ゴディバを追う、名探偵ロイズ。世間はふたりの話題でもちきりだった。少年リンツが偶然手に入れた地図は、ゴディバの宝の地図なのか?リンツは、憧れの探偵ロイズと冒険の旅に出るが、思わぬ危険が彼を待ち受ける。

この本のイメージ 本格ミステリ☆☆☆☆☆ バイオレンス☆☆☆ ファンタジー☆☆☆☆

銃とチョコレート 乙一/作 講談社

<乙一>
1978年福岡県生まれ。「夏と花火と私の死体」で第六回ジャンプ小説・ノンフィクション大賞を受賞し、十七歳でデビュー。2003年、「GOTH リストカット事件」で第三回本格ミステリ大賞受賞。著書に「暗いところで待ち合わせ」、「ZOO」など多数。

銃とチョコレート 乙一/作 講談社

 バレンタインが近くなると、チョコレートをテーマにした本をご紹介することにしています。本日は、乙一先生の「銃とチョコレート」。子どものために書かれた本格ミステリです。初版は2006年。文庫版は2013年です。

 文章のひらがなの分量が多く、主人公は子どもなので、子ども向けに書かれているのはあきらかなのですが、暴力シーンも人が死ぬシーンもあり、子どもを子ども扱いしない、手加減無しの作品です。

 チョコレートがテーマになっていて、キャラクターの名前が有名チョコレート会社やお菓子の名前になっているのがポイント。主人公の名前はリンツくんです。リンツのお母さんはメリー。お父さんは猫の舌のチョコレートで有名なデメルです。

 リンツの不良の同級生、死ぬほど暴力的だけど妙に頭が切れて、いいやつなんだか悪いやつなんだかわからない少年の名はドゥバイヨル。残念ながら昨年日本を撤退していますが、ファンの多いベルギーのチョコレート会社です。

 そして、怪盗の名前がゴディバで、ゴディバを追う探偵がロイズ。

 お話は……

 大富豪の宝を狙う大怪盗ゴディバと、それを追う名探偵ロイズの話題で世間は持ちきり。
 そんななか、お父さんを病気で失ったばかりの少年リンツは、偶然、自分の聖書から、不思議な地図を発見する。

 それが怪盗ゴディバと関係あるのではと直感したリンツは、ロイズとともに冒険の旅にでることにした。
 けれど、それは、びっくりするような事件の連続で、リンツは思わぬ危険に巻き込まれることになる……

 ……と、いのうのがあらすじ。

 子ども向けに本格ミステリを、と言う意図で書かれたらしく、ストーリーはどんでんがえしの連続、そして、バイオレンスシーンも容赦なくあり、人も死にます。ですから、そういうのが大丈夫な人向け。

 しかし、ぐいぐいと引き込むストーリーで、最後まで夢中で読めてしまいます。

 キャラクターが、全員、きわめて人間臭く、いいところも悪いところも兼ね備えており、黒から白の間の様々なグレーのグラデーションを見事に描ききっています。

 勧善懲悪の物語を読みなれた子どもに「世の中って実はこうなんだよ」と見せ付けるシビアさ、でも、「それでも世界は美しい」と言い切る強さ。

 子どもは成長すると、だんだんと、世界は自分が信じていたような綺麗な世界では無いと知るようになります。
 子どもは子どもで、子ども同士の人間関係で悩みながら育つのですが、その時は「大人になれば(自分も含めて)みんな精神的に成熟して、こんな問題は起こさなくなる」と、無邪気に信じていたりもします。

 ところが、そうではなかった、といつか知ることになる。その時期が、早いか遅いかの違いがあるだけで。
 そのとき、どうするのか。絶望して心を閉ざしてしまうか、それとも、泥の中から宝物を見つけ出すのか。

 白と黒ではない、グレーを描く児童小説には、そんな美しさがあります。世界は汚い。しかし、美しい。

 子どもの心を一気に大人の世界へと押し上げてしまう力がある小説なので、何歳くらいに読むのがいいのかはわかりませんが、こういうのは「出会い」ですよね。

 こういう本に出会った時期が必要な時期、「神のタイミング」なのかもしれません。

 このタイプのお話との出会いは、最初に何と出会うかが、思春期の乗り切り方に大きく関わってくるような気がします。
 わたしたちの世代だと象徴的な作品は「機動戦士ガンダム」でした。その下の世代だと「エヴァンゲリオン」ではないかと思います。いまだと「進撃の巨人」でしょうか。

 「世界は、白と黒では簡単に分けられない。すべての人は、黒と白の間の様々なグレーのグラデーションの中にいる」と言うお話です。そうした作品との出会いは、割り切れない大人の社会と立ち向かわざるを得なくなった思春期の、大きな支えになります。

 主人公のまっすぐな気持ちが困難を乗り越える正統派の物語が子どもの根源的な強さを支えるとしたら、こうした「グラデーション」の物語は、その後の思春期の悩める心を支えます。どちらも必要なのです。

 手加減無しの本格ミステリなので、もちろん大人が読んでも楽しめます。
 大人が読むと、子ども時代のわくわくした冒険への憧れや、大人の社会を知ったときの驚きや絶望など、思春期の瑞々しい気持ちへのノスタルジーを、ほろ苦いチョコレートのように味わうことが出来ます。

 バレンタインのプレゼントにもおすすめ。読む人によって、読む時期によって、様々な受け止め方、楽しみ方が出来る本です。

※この本は電子書籍もあります。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 手加減無しの本格ミステリなので、バイオレンスシーンも殺人シーンも、流血シーンもあります。「絶対ダメ」と言う方にはおすすめしませんが、「そういうシーンがあるのだな」と身構えていればOKと言う方にはおすすめです。

 登場人物全員に癖があり、黒から白までの様々なグレーを描く物語なので、繊細な方のほうが様々なメッセージを受け取ることができるでしょう。斉藤洋先生の「白狐魔記」系の話が好きなら、好きだと思います。

 どんでん返しが何度もあり、いい意味でも悪い意味でも裏切られますが、読後感はさわやかです。

 読後は、大好きなチョコレートと、熱々の紅茶でひとやすみ。

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