【火狩りの王】もうすぐアニメ化! 終末後の世界で生きる少年少女たちの過酷な運命。緻密な世界観のダークファンタジー開幕【春ノ火】【小学校高学年以上】

2022年10月1日

広告

火狩りの王 <一>春ノ火   日向理恵子/作 山田章博/絵 ほるぷ出版

人類最終戦争後の世界。人体発火病原体に犯された人々は、結界に守られた土地で「ほんものの火」を知らず、細々と暮らしていた。この世で「安全な火」とは、「火狩り」が森に巣食う炎魔を倒したときに得る火だけ。しかし、その世界も変わろうとしていた……

この本のイメージ 緻密な世界設定☆☆☆☆☆ ダークファンタジー☆☆☆☆☆ サバイバル☆☆☆☆☆

火狩りの王 <一>春ノ火  日向理恵子/作 山田章博/絵 ほるぷ出版

<日向理恵子>
児童文学作家。主な作品に「雨ふる本屋」シリーズ、「魔法の庭へ」(いずれも童心社)、「日曜日の王国」(PHP研究所)など。日本児童文学者協会員。

<山田章博>
漫画家、イラストレーター。主な漫画に『ロードス島戦記~ファリスの聖女~』、挿絵に「十二国記」シリーズ(小野不由美著、新潮社)、「ドリームバスター」シリーズ(宮部みゆき著、徳間書店)など、作品多数。第27回星雲賞(アート部門)受賞。

火狩りの王 <一>春ノ火   日向理恵子/作 山田章博/絵 ほるぷ出版

 もうすぐアニメ化が予定されている、日向理恵子先生の「火狩りの王」第1巻です。初版は2018年。

 最終戦争後の世界を舞台にしたダークファンタジーで、過酷なシーンも容赦なく入っています。人も死にますし、流血シーンや暴力シーンもある、本格派の物語です。

 主人公は11歳の少女灯子と15歳の少年煌四(こうし)。この二人の話が別々に進行することで、だんだんと世界の事情が見えてきます。

 ストーリーは……

 最終戦争後の世界。人体発火病原体に犯された人類は、「ほんものの火」が少しでも傍にあると燃えてしまう体質に変貌してしまっていた。この世界で、「火」として人類が扱えるのは、黒い森に巣食う「炎魔」と呼ばれる獣を倒したときに体内から取れる金色の液体のみ。

 犬を連れ、炎魔を倒して火を採集する人々は「火狩り」と呼ばれた。

 「火狩り」たちには、ある噂がある。それは、
 「虚空を彷徨ったとされる人工の星・千年彗星(揺るる火)を狩った火狩りは、『火狩りの王』と呼ばれるであろう」……

 11歳の灯子は、自身を庇い、命を奪われた火狩りの形見を家族へ届けようと首都に向かう。
 15歳の煌四は、母を亡くし、病の妹を助けるため、旅から戻らぬ火狩りの父を待ちながら、首都で火の研究に携わることになる。

 灯子と煌四、ふたりの運命は、やがて世界そのものの運命を動かしてゆく……

 ……と、言うのがあらすじ。

 対象年齢としては、灯子の年齢からすると小学校高学年以上だと思いますが、非常にシビアな世界観で、バイオレンスシーンもぼかさず書いています。残酷な世界で必死に生きる少年少女の物語です。

 どこかにいる悪の親玉を正義の子どもが倒すというような単純な勧善懲悪ではなく、俯瞰した視点で緻密に組み上げられた世界が描かれます。

 誰の立場で読んでも、それぞれに理解できる事情や正義があり、それぞれに肩入れできる。けれども、共感できるからといって、または魅力的に感じられたからといってその人物が生き延びるわけでは無い。ものすごく簡単に人が死に、そして助からない。かなりシビアな世界観で書かれています。しょっぱなから「ハリー・ポッター」後半レベルの過酷さ。

 乙一先生の「銃とチョコレート」のレビューでも書きましたが、こういう「白でも黒でもない、白から黒の間の様々なグレーのグラデーション」で描かれた世界のお話は、読んだ子供の心を一気に大人の世界へと押し上げる力があります。

 しかし、だからといって、いつ手にとって読むのかは周囲の大人にはコントロールできないものです。どのタイミングで最初に何に出会うかは、その子の「運命」。

 すでにこのタイプのお話に出会い、もう免疫がついている場合は、抵抗無く読めるでしょうし(流血シーンが大丈夫ならば)、複雑な人間関係で悩み、多角的な視点が必要になってきた年頃にはなんらかの救いになるかもしれません。

 わたしたちの世代では、このタイプの代表的作品は「機動戦士ガンダム」、その下の世代では「エヴァンゲリオン」、その下の世代では「ハリー・ポッター」、今だと「進撃の巨人」でしょうか。

 二つ以上の陣営が登場し、それぞれに正義や信念があり、全員が魅力的で肩入れできるように描かれています。しかし、「銃とチョコレート」や「進撃の巨人」よりは世界観の根底が優しく、村育ちの灯子の素朴さや、妹思いの煌四の愛情などが過酷な世界観の中にも希望を感じさせます。

 わりと漢字は多く文章も大人っぽいのですが、振り仮名は多いほうです。固有名詞が難しい漢字を使った名が多く、すこし大変です。しかし、振り仮名がついていますし、メモをとりながら読むと混乱しないでしょう。伏線や、細かな設定が多いので、ふせんを使うのもおすすめです。読み応えがあります。

 和風の名前、設定のファンタジーであることも魅力の一つ。山田章博先生が、表紙だけでなくなんと挿絵も描いてくださっていて、これが世界観にぴったり。あまりの美しさにくらくらします。

 まったくの初読なので、今後どのように展開してゆくのかわかりませんが、コツコツ読んで、この世界の行く末を見届けようと思います。今後の展開が楽しみです。

 ※この本には電子書籍もあります。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 非常にシビアな世界観の本格ファンタジーで、人も死にますし、暴力・流血シーンもあります。手加減無く書かれているので、そういうのがダメな人にはおすすめしません。
 「そういうシーンがあるのだな」と身構えていれば読める、と言う方にはおすすめします。

 単純な世界ではなく、それぞれに事情があり、真っ黒な悪人が出てくる話ではないので、そういうお話が好きな方に。
 ただ、もしかしたら読むのに気力体力を使うかもしれないので、万全のときにお読みください。面白いです。

 灯子たちの食べていたお団子がおいしそうなので、食べたくなるかも。読後は、お団子と緑茶でティータイムを。

お気に入り登録をしてくださればうれしいです。また遊びに来てくださいね。
応援してくださると励みになります。

にほんブログ村 本ブログへ

広告