【動物会議】エーリヒ・ケストナーの名作絵本。世界中の動物たちが、平和な世界のために会議する【小学校中学年以上】
第二次大戦後、各国の首脳たちは世界平和のために国際会議を重ねていますが、なかなか思わしい結果にはなりません。それを見て怒った動物たち。自分たちで会議を開いて人間たちに平和の道を示そうとします。「子どもたちのために」
この本のイメージ 動物ファンタジー☆☆☆☆☆ 世界平和☆☆☆☆☆ 子どもたちのために☆☆☆☆☆
動物会議 エーリヒ・ケストナー/作 ヴァルター・トリアー/絵 池田香代子/訳 岩波書店
<エーリヒ・ケストナー>
1899~1974年。ドイツ、ドレスデン生まれの詩人、作家。ナチスの圧迫を受けた。国際アンデルセン大賞受賞。代表作は「飛ぶ教室」「エーミールと探偵たち」「点子ちゃんとアントン」「五月三十五日」など。
<ヴァルター・トリアー>
エーリヒ・ケストナーとタッグを組んで「エーミールと探偵たち」や「飛ぶ教室」など数多くの名作を生み出した挿絵画家。
<池田香代子>
1948年東京生まれ。ドイツ文学者・翻訳家。「猫たちの森」(早川書房)で第1回日独翻訳賞受賞。
ケストナーの名作絵本「動物会議」のご案内です。原題はDIE KONFERENZ DER TIERE.ドイツでの初版は1949年。日本での初版は1999年です。
第二次世界大戦は、1939年から1945年なので、この絵本はその4年後に出版されたことになります。まだ世界は不安定で、焼け跡からの復興を行っていた頃でした。
あらすじは……
長く続いた戦争が終わったばかりだけれど、またはじまるかもしれず、先行きが不透明なまま、ふつうの人々は不安を抱えて暮らしていました。
そんなとき、動物たちが平和な世界をもたらそうと、自分たちが率先して平和会議を行おうと決心します。
ライオンのアーロイス、象のオスカル、キリンのレーオポルドが中心になって、世界中の動物たちに「動物ビルに集合せよ」と通信します。
人間たちがケープタウンで国際会議をしているあいだ、動物たちも「動物ビル」で「動物会議」をするのでした。そこで、 動物たちは、どうすれば人間たちに戦争をさせないですむのかを話し合います。
まず、「この世から軍服、制服などがなくなればいい」と考えた動物たちは、布を食べる蛾に頼んで、すべての軍服・制服を食べつくしてもらおうとします。
しかし、そんなことでは人間たちはへこたれません。ところが今度は子どもたちの姿がこつぜんと消えてしまいます。動物たちは、「子どもたちを返してほしければ、人間たちは戦争をやめろ」と主張しますが……
……と、いうのがあらすじ。
ライオンや象たちの呼びかけにこたえて世界中から動物たちが集まってくるところから、動物たちの会議、人間のぷんぷんミュラー将軍への申し入れなど、お話は詳細でかなりボリュームがあります。なんと87ページ。
挿絵は全頁にありますが、振り仮名は総ルビではないので、対象年齢は小学校中学年以上です。それ以下のお子さまには読み聞かせか、またはご購入されるなら保護者の方が振り仮名をふってあげたほうがいいでしょう。(図書館で借りる方は、どうぞ読み聞かせしてあげてください)
可能なら小学校低学年から読んでいただきたい、いい本だと思うので、ぜひ読み聞かせか、おうちで振り仮名を。
連日、ニュースを見ると哀しい気持ちになり、無力感でさいなまれる方も多いと思います。そして、戦争や食糧危機、災害などで1番辛い思いをするのは、子どもです。
ケストナーは、環境に抵抗できない子どものこと思いやり、子供のための小説を書き続けた作家です。子どもは、大人の社会に対して力を持たないけれども、傷ついたり苦しんだりする感受性はあるのです。
全頁にゆかいでかわいい挿絵があるフルカラーの絵本ですが、文章にボリュームがあり、読み応えのあるお話です。文章を読みなれていないと、かなりきついので、はじめての絵本にこれ、と言うわけにはいきません。
けれども、今、考えるべき問題でもあります。まずは、わたしたち大人が読んでみるほうが先かもしれませんが……
無力でもできることを探している方は多いと思います。わたしは、本を読むことが好きだし、感想を書くことが好きです。原点に戻って、自分のできることをしてゆこうと思いました。そして、一刻も早く、すべての人が笑顔になれる、平和な時間が戻ることを祈ります。
※現在、東京都立川市のPLAY! MUSEUMで、この絵本をテーマにした「どうぶつかいぎ展」が行われています。(2022年2月5日(土)~4月10日(日))
くわしくは、ミュージアムのHPをリンクしますので、御覧ください。
繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)
ネガティブな要素はありません。ただし、たいへんなボリュームです。絵本というより短編小説の分量ですが、すべてのページにフルカラーの挿絵が入っているのが、ケストナーとトリアーの本気度を感じさせます。
振り仮名が足りないので、読み聞かせがいちばんいいのですが、一人読みならば、保護者の方がふりがなをふってあげるといいと思います(ご自宅の本なら)。大人が読んでも、多くのことを感じ取れます。
よいことがたくさん書かれていて、絵もかわいいのですが「和む」とか「癒し」とかからは遠い絵本です。ハッピーエンドですが、様々なことを考えさせられます。
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