【博物館の少女】明治の時代、博物館で働く少女が出会う怪異譚。文明開化オカルトファンタジー開幕!【怪異研究事始め】【中学生以上】

2024年1月18日

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博物館の少女 怪異研究事始め 富安陽子/作 禅之助/装画 偕成社

明治16年、大阪の古物商の娘・花岡イカルは、両親を失い、文明開化の東京にやってきました。親戚のトヨの用事で上野の博物館を訪れたさい、館長に目利きの才を認められ博物館の古蔵で怪異の研究をしている織田賢司(= 通称トノサマ)の手伝いをすることになりますが…… (博物館の少女 怪異研究事始め 富安陽子/作 禅之助/装画 偕成社)

この本のイメージ オカルトファンタジー☆☆☆☆☆ 文明開化☆☆☆☆☆ ミステリー風味☆☆☆☆☆

博物館の少女 怪異研究事始め 富安陽子/作 禅之助/装画 偕成社

<富安陽子>
富安 陽子(とみやす ようこ、1959年2月15日~)は、日本の児童文学作家。東京都生まれ。和光大学人文学部卒業。25歳でデビューし、1989年「クヌギ林のザワザワ荘」で日本児童文学者協会新人賞、小学館文学賞、1997年「小さなスズナ姫」シリーズで新美南吉児童文学賞、2000年「空へつづく神話」でサンケイ児童出版文化賞を受賞。「やまんば山のモッコたち」はIBBYオナーリスト2002文学作品に選出。2011年、「盆まねき」で第49回野間児童文芸賞、第59回産経児童出版文化賞フジテレビ賞を受賞。2021年、「さくらの谷」で第52回講談社絵本賞を受賞。(wikipediaより)

<禅之助>
ファンタジー系のイラストで定評のあるイラストレーター。PlayStation4ソフト「ダイダロス」のキャラクターデザイン、「かがみの孤城」イラストなどで知られる。

博物館の少女 怪異研究事始め

 本日ご紹介するのは富安陽子先生の新作オカルトファンタジー「博物館の少女 怪異研究事始め」です。2021年12月初版。

 「シノダ!」シリーズや「天と地の方程式」など、日本古来の伝説や神話と謎解き要素を絡めたお話を得意とする富安陽子先生の新作です。

 ストーリーは……

 大坂の古物商花宝堂のひとり娘、花岡イカルは、父と母を失い孤児となって、東京の遠縁に預けられました。父を失った後、先妻の息子の長男が店を継いだ以上、後妻の娘のイカルには、居場所がなかったのです。

 東京で、慣れない花嫁修業にくれるなか、イカルは有名画家河鍋暁斎の娘トヨと仲良くなります。

 トヨに誘われて博物館を訪ねたイカルは、一流の美術品に囲まれて大興奮。ひょんなことから、館長に目利きの才を認められ、博物館の古蔵の整理をしているトノサマこと織田賢司のもとで働くことになりました。

 あるとき、イカルは「古蔵送り」となった美術品の中に、失われたものがあることに気づきます。とくに謎に包まれた黒手匣(くろてばこ)という品。どんな物で、何の目的で盗まれたのでしょうか?

 イカルたちは、調査に乗り出します……

 ……と、いうのがあらすじ。

 単なるミステリーではなく、黒手匣(くろてばこ)にまつわるややオカルティックな秘密も加わって、ミステリアスなファンタジーに仕上がっています。

 わたしがスタッフとして運営参加しているオンラインゲームにも、「イカル」と言うキャラクターが登場するので、とても親近感を持って読みました。別名マメコロガシとも言う、鳥の名前です。

 大坂で育ったイカルが上京し、花の東京に目を見張るくだりが臨場感にあふれ、当時の情景が目に浮かぶようです。路面馬車や人力車、絢爛豪華な博物館の美術品の数々。
 そして、和と洋が融和した町並みを着物姿で風呂敷包を持って歩き、団子屋で蓬団子を頬張る少女たち。

 イカルとトヨの女の子同士の友情もすがすがしく、そして可愛らしい。トヨはイカルの東京でのいちばんのお友だちですが、スカルが巻き込まれる怪異事件には、今回まったく関係しません。そのため、かえってトヨの存在がイカルにとっての癒しになっているのでした。

 わたしはこういう関係、大好きなんですよ。「エースをねらえ!」のひろみとマキちゃんみたいな。(古い)
最近は親友と言うと、何もかも同じことを一緒にやるようなイメージがあるのですが、こういう、自分の主たるテリトリーに、「ちょっと近いけれど無関係」な位置にいてくれる友達とは、不思議と安らいだ関係になれるものです。イカルとトヨのこの距離感が好き。

 ほかにも、トノサマこと織田賢司、トノサマの家の奉公人アキラなど、魅力的なキャラクターが続々登場します。

 ラストでは、ただの美術館の古蔵だったところが「怪異研究所」となり、イカルは晴れて「所長」トノサマの「助手」となりました。

 これは続編がありそうです。

 文明開化の情熱に満ち溢れた時代、澄んだ観察眼と美しいものを愛する心を持つ少女イカルが、これからもたくさんの不思議に挑んでくれるようです。これからの冒険が楽しみですね。

 ※この本には電子書籍もあります。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 オカルト風味な物語ですが、残酷・流血シーンはありません。謎解きが面白い、明治のオカルトファンタジーです。明治時代の文化、街並みなどが詳細に描かれており、タイムトリップ気分を味わえます。文明開化時代のモダンな雰囲気をお楽しみください。

 読後は、きなこをふりかけた蓬団子とほうじ茶でティータイムを。

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