【ハートウッドホテル】動物たちのためのホテルで新しい出会い。ほのぼの動物ファンタジー【ねずみのモナと最高のおくりもの】【小学校中学年以上】

2024年3月25日

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ハートウッドホテル 2  ねずみのモナと最高のおくりもの  ケイリー・ジョージ/作 久保陽子/訳 高橋和枝/絵  童心社

モナが働く「ハートウッドホテル」は冬眠に入る動物たちでにぎわっています。けれど、今年の冬はいままでとは何かが違う。備蓄食料がすこしずつ減ってゆく怪奇現象がおき、モナは謎を解こうとしますが……

この本のイメージ 動物ファンタジー☆☆☆☆☆ ほのぼの☆☆☆☆☆ 動物だけどヒューマンストーリー☆☆☆☆☆

ハートウッドホテル 2  ねずみのモナと最高のおくりもの  ケイリー・ジョージ/作 久保陽子/訳 高橋和枝/絵  童心社

<ケイリー・ジョージ>
カナダの児童文学作家。ブリティッシュ・コロンビア大学で児童文学の修士号を取得。絵本や読み物を数多く手がけている。邦訳は「ハートウッドホテル」シリーズ(童心社)がある。本書はカナダで高い評価を受けており、第1巻はOLA Best Bets Award Winner, 2016を受賞し、ドイツ、ルーマニア、イスラエル、中国で翻訳出版されている。

<久保陽子>
鹿児島県生まれ。東京大学文学部英文科卒業。出版社で児童書編集者として勤務ののち、翻訳者になる。訳書に「ハートウッドホテル」シリーズ(童心社)「カーネーション・デイ」(ほるぷ出版)「ぼくってかわいそう!」「明日のランチはきみと」「うちゅうじんはいない?」(いずれもフレーベル館)「わたしのペットはまんまるいし」(ポプラ社)などがある。

<高橋和枝>
971年、神奈川県生まれ。東京学芸大学卒業。イラストレーター、絵本作家。2001年、「くまくまちゃん」(ポプラ社)で絵本作家デビュー。作品に「それはすごいなりっぱだね!」(作・いちかわけいこ、アリス館)、「ねこのことわざえほん」(ハッピーオウル社)、「りすでんわ」(白泉社)、「くまのこのとしこし」(講談社)、「もりのだるまさんかぞく」(教育画劇)などがある。

 「クローバーと魔法動物」のケイリー・ジョージの動物ファンタジーです。原題はHeartwood hotel:The Greatest Giftt . アメリカでの初版は2017年。日本語版の初版は2018年です。

 お話は、一話完結で、どの巻から読んでもわかるようにはなっていますが、主人公のモナの生い立ちなど、最初から読んだほうがわかりやすいので、まずは「ねずみのモナと秘密のドア」からお読みください。
「ねずみのモナと秘密のドア」のレビューはこちら

 さて、今回のお話は……

 冬が来て、「ハートウッドホテル」は大忙し。冬眠するために長期宿泊されるお客様がたくさんいらっしゃるからです。ねずみのモナも一生懸命働いています。

 ずっと一人ぼっちで生きてきた孤児のモナは「ハートウッドホテル」と言う新しい「家」を手に入れて、幸せでした。
 しかし、親もいなく、ひとりきりで生きてきた時間の長いモナは、普通の人が知っている伝統行事や風習、習慣をいっさい知りません。ホテルの従業員たちのパーティーで、プレゼント交換会があることを知らなかったモナは、みんなからもらうばかりでプレゼントを用意できませんでした。

 恥ずかしいと思いながらも、なんとか順応しようとするモナ。秘密のプレゼントを作って、やさしいみんなに恩返しをしようと思い立ちます。

 一方、その頃、雪に閉ざされたホテルでは備蓄食料が少しずつなくなる怪事件が発生、真相を探ることになります。が、こっそりサプライズプレゼントを作っているモナは、挙動不審な行動をとってしまい……

 ……と、言うのがあらすじ。

 今回は、うさぎのキツイーノ公爵や子鹿のフランシスなど、新キャラも登場します。

 モナは辛抱強い、頑張り屋の女の子です。
 しかし、孤児のモナは、木のうろの家で、ひとりで暮らしていたため、ふつうの動物たちがあたりまえに知っている風習や行事などをいっさい知りませんでした。また、他人との交流を経験しないで育ったため、プレゼント交換などの習慣も知らなかったのでした。

 そんなモナが、みんなと順応してゆくためにがんばりつつ、ハートウッドホテルに起きる事件を解決するストーリーです。

 オーナーのアナグマ、ハートウッド氏は、穏やかで愛情深い紳士です。ハーウッド氏の海より深い愛情で、ホテルのお客様たちは守られています。時々、ちょっぴりわがままなお客様や勝手なお客様は来るけれど、ハートウッド氏とホテルの優しさに触れて、固くなった心のドアを開いてくれるのでした。

 今回のお話を読んで、「人付き合いって、ちょっとしたコツと慣れなんだな」としみじみ思いました。

 モナは本来いい子なんですが、大勢の人と仲良くするコツみたいなものを知りません。それは、他人との交流のなかで育てば自然に身につくものなのですが、モナは一人で育ったため、知らなかったのです。

 プレゼント交換の風習を知らずに申し訳なく思ったモナは、みんなのためにサプライズプレゼントを作ろうとしますが、それを秘密にしていたため、不審な目で見られてしまいます。これも、親友のティリーにだけは相談するとか、普通の人には備わっている処世術みたいなのがモナにはありません。そのため、どんどん困ったことになってしまいます。

 一方、知らなくて失敗してしまったモナを、「礼儀知らず」とか「性格が悪い」と思わずに、「知らなかったのね」と流してくれるホテルクルーのみんながあたたかい。それは、オーナーのハーウッド氏のおおらかさ、愛情深さの影響でしょう。

 今回は、貧しくて人付き合いのコツを知らないモナの対照的な存在として豊か過ぎて人付き合いのコツがわからないキツイーノ公爵も登場します。

 そして、それぞれがそれぞれの形で、ハートウッドホテルの危機を救うために力を尽くし、そして、ちょっとだけ人付き合いのコツを掴みます。

 文章は平易でわかりやすく、字は少し大きめ。ただし、すべての字に振り仮名がふってあるわけではないので、小学校中学年から。
 ただ、とてもよい物語なので、低学年から読み聞かせをしてあげたり、保護者の方が振り仮名をふってあげれば小学校低学年からでも読めると思います。漢字とひらがなの配分は、ひらがな多めで、子どもが一人で読むのにちょうどいい感じ。

 動物好き、物語り好きの内向的なお子さまにおすすめです。表紙も挿絵もあたたかみのある絵でかわいらしく、ストーリーにぴったりです。

 家の外で、友達どうしなどの人間関係をつくりはじめた頃におすすめの物語です。動物好きのお子さまにはぜひどうぞ。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素はありません。人付き合いに不慣れなモナが、慣れないながらも頑張るお話で、ほのぼのとした気持ちになります。事件もちゃんと解決します。HSPHSCの方におすすめです。

 しみじみとした、あたたかみのあるストーリーで、ちょっと癖の強いキャラクターは登場しますが、悪者ではありません。最終的には、みんな分かりあえるので、安心して読むことが出来ます。

 読後は、温かいお茶とチーズケーキでティータイムを。

 

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