【桜風堂夢ものがたり】桜風堂シリーズ番外編。それぞれのファンタジックなストーリー。【中学生以上】

2024年3月27日

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桜風堂夢ものがたり  村山早紀/作 げみ/装画  PHP研究所

桜野町の小さな書店、桜風堂の店長となった月原一整。そして、彼をとりまく人々。その後、彼らはどんなふうにすごしているでしょう。ちょっと不思議で、ハートがあたたかくなる、ファンタジックストーリー。

この本のイメージ 今回はファンタジー☆☆☆☆☆ 本が好き☆☆☆☆☆ もう一度会いたい人☆☆☆☆☆

桜風堂夢ものがたり  村山早紀/作 げみ/装画  PHP研究所

<村山早紀>
1963年長崎県生まれ。日本の児童小説作家。「ちいさいえりちゃん」で毎日童話新人賞最優秀賞、椋鳩十児童文学賞を受賞。主な作品は「シェーラひめのぼうけん」「新シェーラひめのぼうけん」シリーズ、「風の丘のルルー」シリーズ、「はるかな空の東」などであり、近年は風早の街を舞台にした「コンビニたそがれ堂」シリーズ、「カフェかもめ亭」シリーズ等が人気を博している。

<げみ>
1989年生まれ。兵庫県三田市出身。京都造形芸術大学美術工芸学科日本画コース卒業後、イラストレーターとして作家活動を開始。主に書籍の装画や挿絵、CDジャケットなど幅広い分野でイラストレーションを制作。

 今年の桜との逢瀬は短かった。
 3月になってからも、かなりずるずると寒い日が続きましたし、ようやく咲いたと思ったら、この雨です。うう、かなしい。
 桜、もうちょっとがんばってほしかった……

 本日ご紹介するのは、桜の季節に、公園のベンチでゆっくり読みたい本。
 村山早紀先生の人気シリーズ「桜風堂ものがたり」の番外編、「桜風堂夢ものがたり」です。初版は2022年1月25日。

 「桜風堂ものがたり」は心に傷を負った書店員月原一整が桜野町と言う隠れ里のような優しい地に辿り着き、書店「桜風堂」の店長という新たな居場所を見つける物語です。

 「桜風堂夢ものがたり」に登場するキャラクターは全員「桜風堂ものがたり」の登場人物なので、まずは「桜風堂ものがたり」からお読みください。「桜風堂ものがたり」のレビューはこちら

 「桜風堂ものがたり」は本を愛する人々の織りなすヒューマンドラマでしたが、この「桜風堂夢ものがたり」は少しファンタジックな、幻想短編集になっています。

 収録されているのは、

 第一話 秋の怪談
 第二話 夏の迷子
 第三話 子狐の手紙
 第四話 灯台守

 の四編です。

 会いたいけれど、もう二度と会えない、そんな人に会える━━桜風堂に向かう坂で起きる、小さな奇跡の物語。

 どのお話にも、本への愛情があふれ、わかりあえなかった人が本を通じて歩み寄ったり、心を通わせたりします。ただ生きているだけでは自分自身の人生しか味わえないけれど、本を読めばたくさんの人の人生を生きることができる。だから、本を読めば、1冊読むごとに人は優しくなれる。透の祖父、桜風堂店主の名言です。

 わたしは本を読むのが大好きですが、このブログを続けていて優しくなれたかどうかはわかりません。ただ、できることをしたいと思っています。

 以前、身体の弱いわたしが、とある場所にしばらく静養に訪れていたときのことです。ありがたいことに、そこにはすばらしい図書館があって、思う存分本を読むことができました。しかし、その町からちょっと離れた、かなり大きな別の町には、図書館がなかったのです。

 わたしは驚きました。
 というのも、そこは一見して、さしてさびれているようには見えない町だったから。有名な観光地もあって、町並みは美しく、栄えているように見えました。だから、「図書館がない」と言うのが、信じられなかったのです。
 しかし、聞けば、そういう都市は、年々増えているとのこと。

 図書館がない自治体がある……これは、衝撃でした。
 図書館がない自治体と言うのは、書店がその替わりの役目を担っていたのですが、このところの出版不況で書店がどんどん撤退してゆきます。

 書店は商売なので、一度書店が撤退した場所に、別の書店が来ることはまずありません。
 つまり、そうなるとそこは、あっという間に「図書館も書店もない町」になってしまうのです。

 そのような自治体では、有志の方々が移動図書館を作ったり、カフェにブックスペースを作ってブックカフェにしたりと、読書文化を絶やさないために、かなり工夫を凝らしていました。しかし、「本との出会い」がどんどん失われてゆくのを、有志の力だけで止めるのは難しいようです。

 本好きな大人は、「どういう本を買えばいいか」がまだわかるので、インターネット書店で本を注文することができるのですが、子どもたちが「これ、面白そうだな」と本を手に取る場所が圧倒的に足りない……

 わたしは年寄りなので、日本が景気が良くて、あちこちに本屋があった時代を知っています。駅前には必ず本屋があって、電車待ちの時間に寄れば、必ず面白そうな本に出会えました。
 自分が貧しくて欲しい本が買えないようなことがあっても、まさか本のほうが人間から遠ざかってゆくような、今のような世の中になるとは思いませんでした。

 こんなことになっていたのか……と、かなり驚きまして、「自分にできることはないかな」とずっと考えていました。

 このブログは、そういう気持ちで立ち上げました。
 できることはわずかです。わたしが読んで、紹介するだけ。本は単価が安いので、お金のことを考えるならアフィリエイトの対象としては不向きです。けれど、わたしは何かがしたかった。

 一般の書店さんとは住み分けをしたいので、当サイトでは電子書籍を重点的にご紹介し、紙の本はちょっと遅めにご紹介しています。書店さんである程度売れてから、と言うつもりです。

 それよりもなによりも、子どもたちの「読書体験」を失わせたくない。
 人生に悩んだとき、生きづらさを感じたとき、本は助けてくれます。「次の一手」が見つからないときも、本がヒントを与えてくれます。そして、疲れ果てたときは、心に栄養を与えてくれ、回復させてくれます。

 このブログは、基本的にお子さまのために本を探す保護者目線で書かれていますが、それだけでなく、自分の中の子供心を癒したい大人のためにも児童書をおすすめしています。それは、わたしが児童書を読むことで、元気を回復した経験があるから。

 とはいえ、ささやかなブログです。できることはわずかですし、実力不足のためなかなか思うようには書けず、悩む日々です。

 けれども、「桜風堂」のシリーズを読むと、そんな自分の背中を押してもらえているような気持ちになります。
 桜風堂の世界の人々の本好きレベルにはまだまだ届かない、ひよっこですが、それでも、本好きの方々の魂に触れ、自分もできることをやろう、がんばろうと思えます。

 今回の四本の作品の中では、ぶっちぎりで「秋の怪談」が好き。なぜなら、透くんが幸せになるお話だから。
 四本すべて素敵なお話なのですが、個人的に子供が幸せになるお話は、別格です。

 おお、透くん、同い年の友だちが出来たんだね、よかったね。しかも、いかした男の子たちだ。
 そう思っただけで涙腺がゆるくなってしまうので、まずいのですが……。

 自分が体調を損ねていた時期があるからでもありますが、もし本当に、こういう隠れ里みたいな優しい町があったら素敵でしょうねえ。森の幽霊屋敷みたいなお屋敷、現実にあったらぜひとも住んでみたい。

 歳をとると、過去を振り返る機会が多くなります。会いたくてももう会えない人も多いし、自分よりずっと価値がある人だったのになあ、と思うこともあります。それは、歳をとると誰もが抱く想いで……

 そんな、心に溜まっていた、自分ではどうしようもない想いを「桜風堂夢ものがたり」は、涙と一緒に押し流してくれました。物語には、そういう力があります。

 本が読める幸せを噛み締めながら、これからも本を読み続けたい。「好きな本を読み、楽しく感想を書く」。その原点を忘れないよう、心がけながら。

 「桜風堂夢ものがたり」は、本を愛するすべての方におすすめです。

 ※この本には電子書籍もあります。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素はありませんが、「もう会えない人に会える」話なので、「今はダメだな」と思う方は、時間を置いてください。とてもいい話です。大丈夫だと思ったら、読んでみてくださいね。あたたかい涙が流れ、背中を押してくれると思います。

 できれば桜、桜の季節でなくても、花が咲いている公園で読みたい物語です。サンドイッチと水筒のココアを用意して。ソメイヨシノが終わったら、八重桜の季節がきます。ぽんぽんした八重桜もかわいいですね。

 

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作中で音哉と楓太が歌っていた歌
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