【青の読み手】彼だけがその「本」を読める…!ロマンあふれる本格ファンタジー開幕!【小学校高学年以上】

2024年3月27日

広告

青の読み手 小森香折/作 平澤朋子/絵 偕成社

ラベンヌ王国の王都ミラの貧民街で暮らす「下町ネズミ」の少年ノアは、ある日、謎の紳士から奇妙な以来を受けます。「修道院からある本を持ち出してきてほしい」と。交換条件は、彼が姉と慕う女性ロゼの行方でした…… 

この本のイメージ 本格ファンタジー☆☆☆☆☆ 魔法☆☆☆☆☆ 陰謀☆☆☆☆☆

青の読み手 小森香折/作 平澤朋子/絵 偕成社

<小森香折>
東京都に生まれる。「ニコルの塔」でちゅうでん児童文学賞大賞、新美南吉児童文学賞を受賞。作品に「歴史探偵アン&リック」シリーズ、「夢とき師ファナ」「時知らずの庭」「ウパーラは眠る」など、翻訳に「リスベート・ツヴェルガーの聖書物語」などがある。

<平澤朋子>
イラストレーター。武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科卒業後、児童書の挿絵や絵本など、様々な媒体で活動中。絵本に「ニルスが出会った物語」シリーズ、「巨人の花よめ」、装画・挿絵を手掛けた作品に「アギーの祈り」「千の種のわたしへ」「竹取物語」など多数。


初読です。架空の国ラベンヌ王国を舞台にした、異世界ファンタジー。初版は2021年3月。すでに続編も出版されているようです。

 お話は……

 ラベンヌ王国の王都ミラ。貧民街で街の案内人「下町ネズミ」として働く少年ノアに、正体不明の男から、ある奇妙な依頼が持ちかけられる。

 修道院に保管されている、ある「本」を持ち出してきて欲しい。

 交換条件は、ノアが姉と慕う行方不明の女性の情報だった。

 ノアは修道院に忍び込み、依頼の「本」を持ち出すが、それは、ノアにしか読むことの出来ない、強力な魔導書だったのだ……。

 いったいこの「本」とは何なのか? どうしてノアにしか読めないのか? 行方不明のロゼは助け出せるのか?
 謎に満ちたノアの冒険がはじまった……

 ……と、いうのがあらすじ。

 わたしがファンタジーやSFが大好きなので、このブログもかなり偏ったラインナップになっています。本当はもっと文学作品や青春もの、恋愛ものなどを取り上げたほうがいいのでしょうが、好みなんですよねえ。(オタク炸裂)

 一般的な児童文学はきちんとしたサイトにお任せして、ここはわたしと趣味の近い方におすすめするサイトだと開き直ってやっています。良くも悪くもわたしの「好き」を押し付ける自己満足サイトなのです。(迷惑)

 一口にファンタジーと言っても、「不思議の国のアリス」のようなナンセンスファンタジーから、「たのしい川べ」のような動物ファンタジー、「オズの魔法使い」のようなメルヘンなどバリエーション豊かで奥が深いジャンルです。

 日本のヤングアダルトやライトノベルだと美男美女満載のキラキラしたファンタジーが主流で、それももちろん大好きなのですが(ベルばら世代なのでね……)、子どもの頃から「プリデイン物語」が好きだったわたしは、どっしりとした土臭いファンタジーにどうしても惹かれてしまうのでした。

 日本の作家だと「グインサーガ」(←だったら全部読みなさいよ)とか「十二国記」とか。生活観のある下町描写や、辺境の描写などが力強い作品です。

 海外の翻訳もののファンタジーだと新しい作品でも不思議とこの「土臭さ」が失われていないことが多く、「ハリー・ポッター」のようなイマドキものでも(いや、ハリポタはもう新しくはないでしょ……)微かに大地の香りがします。「ファンタジー」と言うものに対する感覚の違いなのかもしれません。

 この作品は、最初読んだとき「翻訳ものかな?」と勘違いしてしまったほど、冒頭の下町描写が土臭いのです。そして、それが物語に力強さを与えています。

 主人公の少年ノアは、貧民街で暮らす少年ですが、ある日、謎の男爵からとある依頼を受け、それにより、大きく運命が動き出します。華やかな王宮に渦巻く陰謀や、伝説の魔導書、薄倖の姫君など、わくわくする要素がいっぱい。

 わたしが大好きなのは、セシル。
 おおう、こういう能力があって、この性格、これは新鮮ですね。
 ファンタジー物語の場合、ふつうは、人の心が読めるとか見えないものが見えるとか、そういう特殊能力がある少女って、心が清らかで優しく、繊細な女の子として登場することが多いもの。
 しかし、よくよく考えたら、そんなことが子どもの頃から全部わかっていたら、確かに人間不信になりますわな。これはリアル。
 でも、心を病んで臥せってしまうこともなく、ガンガン怒り続ける意志の強さ、負けん気の強さ。王族なんですもの、これくらいでなくちゃ。また登場してほしい。

 女性キャラクターが魅力的な話は大好きです。

 また、この物語は「本」がキーアイテムとなっています。
 「本を読む」ことが即、「魔法」につながる設定のため、おそらく主人公と同じように少しずつ「読める文章」が増えている年齢のお子さまにとっては「読む」ことが魔法めいてわくわくする行為に感じられるのじゃないでしょうか。大人には体験できない不思議感覚が味わえるかも。

 ファンタジーや魔法が大好きで本が大好きな男の子には、強くおすすめする物語です。

 文章は平易で、難しい漢字には振り仮名がふってあります。小学校高学年から。章が細かく分かれていて読みやすいので、賢い子なら中学年からでも大丈夫でしょう。もちろん、大人が読んでも楽しめます。

 どっしりと地に足がついた、国産本格ファンタジー。ゴールデンウィークにたっぷり時間をとって楽しんでみてはいかがでしょう。
 続編もあるようなので楽しみですね。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 多少のアクションシーンはありますが、気をつけて書かれているので流血シーンなどはありません。緊迫したシーンはありますが、残酷ではないので、安心してハラハラドキドキを楽しむことが出来ると思います。

 生活観のある、正当派本格ファンタジーが好きな方にはおすすめです。

 

商品紹介ページはこちら

 

 

お気に入り登録をしてくださればうれしいです。また遊びに来てくださいね。
応援してくださると励みになります。

にほんブログ村 本ブログへ

広告