【自由ってなに?人間はみんな自由ってほんとう?】自由とは?社会とは?哲学者たちと一緒に考えよう。子どものための哲学入門【10代の哲学さんぽ】【小学校中学年以上】
自由ってなんだろう?人間は本当に自由な生き物なんだろうか?社会や自由について考え始めた小さな子どもの疑問に答えてくれる、子どものための哲学書、第二弾。
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自由ってなに?人間はみんな自由ってほんとう? 10代の哲学さんぽ 2 アニッサ・カステル/文 モルガン・ナヴァロ/絵 伏見操/訳 岩崎書店
<アニッサ・カステル>
フランス西部のルーアンにある、ジャンヌ・ダルク高校のグランゼコール共通準備課程で哲学をおしえる
<モルガン・ナヴァロ>
1975年、フランス南東部のグルノーブル生まれ。10歳ではじめてのマンガを描く。グルノーブルの建築学校に入学するが、まもなくマンガ家になることを決意。雑誌で仕事をした後、イルカを主人公にした「Flipper le flippe」「Cowboy moustache」を発表
<伏見操>
1970年生まれ。英語、フランス語の翻訳をしながら、東京都に暮らす
子どものための哲学書「10代の哲学さんぽ」第2巻。原題はSommes-nous libres ? (Chouette ! Penser). フランスでの初版は2006年。日本での初版は2010年です。
昔から日本の学校は「読み」「書き」「そろばん」だけはきちんと教えてくれる場所でした。
文字を読むことが出来、書くことができて、計算が出来れば、日常生活の基本的なことには困らなくなるからです。
五十音というのがすばらしくて、日本語はひらがなとカタカナさえ覚えれば、言葉を聞いて、読んで、書けてしまいます。これは、アルファベットをおぼえても読んだり書けたりできない言語よりのは有利な点です。(日本語は、その後に漢字と言う大難関がありますが……)
そんなわけで日本の学校では、日常生活の物理的な問題や困りごとを解決する方法を教えてくれる場所としては最高です。
しかしながら、一部の内向的な子どもが抱く、「人生とは何か」「社会とは何か」「自由とは何か」と言うような哲学的な問題については、導いてくれるような教科はありません。その部分は、各家庭にゆだねられがちです。
子どもの心に自我が芽生え、内省したり哲学的なことを考え始める最初の年齢は、だいたい10歳くらいです。
なぞなぞみたいな、屁理屈を言い始め、友達同士で口げんかを始めたら屁理屈の応酬になるような年頃です。
そんな年頃の子どもの「なぜなに攻撃」を親がまともに受け止めるのは、まことに負担がかかることです。まれに、こういう会話が好きな大人がいますが、それは、どちらかと言えばレアケース。
ふつうなら、「こっちは忙しいんだ、いいかげんにしなさい」と言いたくなるのではないでしょうか。
とはいえ、子どもは子どもで真剣なんですよね。
小さな子どもが「人生とはなにか」と、考え始めたとき、助けになってくれるような本はないだろうか、と探していたときに、このシリーズを見つけました。
第1巻「天才のら犬、教授といっしょに哲学する。人間ってなに?」は、「教授」と「のら犬」の会話形式ですすむ、哲学入門書です。非常に読みやすく、わかりやすいので、まずはこの本から読むことをおすすめします。
「天才のら犬、教授といっしょに哲学する。人間ってなに?」のレビューはこちら↓
第2巻のテーマは「自由」。「人生とは」より、さらに掘り下げた内容になっています。
「自由」と言う言葉があるのは、かつて「自由ではない」人たちがいたから。つまり「奴隷」です。日本で暮らしているとあまり聞くことのない言葉ですが、これは「自由」を語るときに避けては通れない人類の歴史です。
自由と言っても、何もかもを好き勝手に自由気ままに行うことが自由なのではありません。社会生活をするうえで、それぞれが少しずつ「不自由」を感受し、ルールを守って生きることで自由は保たれています。
時と場所によっては、様々な事情で厳しい規制があり、本当の意味では自由ではない場合もあります。
しかし、どんな場合でも、「頭の中で考えること」は自由なのだ、と言うのが哲学者の考えです。つまり、命令に従っていたり、他人に答えをもらって何も考えずに言いなりになったりするのは、「楽」ではあるけれど、「自由」ではない。
本当の「自由」とは「自分で考えること」。それがどんな人間で持っている「自由」なのだ。
つまり、自分の頭で考え、内省的な悩みを持ち、一人ぼっちで苦しんでいる子がいたとしたら、その子は孤立しているのではなく自由だということなのですね……
なんだか、この歳になって、目を開かされた思いです。
いや、「おまえが無知なだけだろう」と言うご意見もあるとは思うのですが……いくつになっても、小学校からやりなおすのは大切ですね。児童書を読んでいると、定期的に新たな発見があります。これが、大人になってから気づいた児童書の魅力。
第1巻に比べると、少し高度な内容になってはいるのですが、字は大きめで文章は平易で読みやすく、わかりやすい内容です。残念ながら総ルビではありませんが、難しい漢字には振り仮名が振られており、小学校中学年くらいから読めると思います。それより小さい子でも読みたがるような賢い子なら、読み聞かせしてあげてください。
これは、必要とする子と必要としない子に別れる本です。が、必要としている小さな子のもとには、届いて欲しい。大人が読んでも、発見の多い本です。
ゴールデンウィーク、おうち時間に親子で「自由」について、語り合ってみませんか?
繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)
HSCのお子さまにおすすめです。
「社会」や「自由」について、なぜなに攻撃をはじめた年頃の、大人から見ると「メンドクサイ」お子さまに。だいたい、10歳から読めるように書かれています。
また、子供同士の口げんかで論破されたり、屁理屈で言い負かされて悩みはじめた頃のお子さまにも。内向的な子が一度は考えるようなことについて、わかりやすく書いてくれています。
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