【チュウチュウ通り】エミリー・ロッダの、ゆかいな動物ファンタジー絵本第8巻。魔法使いねずみの引き起こす珍事件【マージともう一ぴきのマージ】【5歳 6歳 7歳】

2024年3月29日

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チュウチュウ通り 8番地 マージともう一ぴきのマージ  エミリー・ロッダ/作 さくまゆみこ/訳 たしろちさと/絵 あすなろ書房

8番地に住む魔法使いマージはへっぽこ魔法使い。でも、新しい魔法を開発したくていつも時間が無い。自分が二人いればいいのに……そう思ったマージは、もうひとりの自分を生み出す魔法をかけます。ところが……

この本のイメージ 動物ファンタジー☆☆☆☆☆ ふたりの自分☆☆☆☆☆ そうきたか☆☆☆☆☆

チュウチュウ通り 8番地 マージともう一ぴきのマージ  エミリー・ロッダ/作 さくまゆみこ/訳 たしろちさと/絵 あすなろ書房

<エミリー・ロッダ>
Emily Rodda、1948年4月2日~。オーストラリア・シドニー生まれのファンタジー作家。代表作は「ふしぎの国のレイチェル」「リンの谷のローワンシリーズ」など。

<さくまゆみこ>
東京生まれ。出版社勤務を経てフリーの翻訳家に。訳書にエミリー・ロッダ「リンの谷のローワン」シリーズ、「ふしぎの国のレイチェル」「テレビのむこうの謎の国」ホーキング「宇宙への秘密の鍵」など。

 「リンの谷のローワン」のエミリー・ロッダのかわいい絵本シリーズ。「チュウチュウ通り」です。
  原題は、TAILS AND THE TWIN SPELL (Squeak Street Stories). 原書初版は2006年。日本語初版は2011年です。

 どの本から読んでもいい構成になっているのですが、1番地から順番に読みたい方は、こちらのレビューをどうぞ。↓

 今回のお話は……

 マージはチュウチュウ通り8番地に住むへっぽこ魔法使いねずみ。
 近所の人のために魔法を使うのと、魔法と手品でマジックショーをするのが仕事です。

 それだけでなく、新しい魔法を開発するのが大好き。
 でも、マージの新しい魔法はちょっと危険です。しょっちゅう爆発して火事を起こしたりするからです。

 そんなマージ、新しい魔法を開発するためにもっともっと時間が欲しいと思うようになりました。
 もし、自分がもう一匹いてくれたら……

 そんなふうに思ったマージは、魔法で自分をもう一ぴき、魔法で作り出してしまいました。

 ところが、このもう1匹のマージ、なにもかもが本物のマージより優秀でした。魔法は完璧、家事も完璧、そのうえ性格も完璧で本物マージに親切で優しいのです。

 あまりにも完璧なマージ2号にコンプレックスを感じてしまうマージ。

 さて……

 ……と、いうのがあらすじ。

 自分がもう一人いることをドッペルゲンガーと言います。
 魔法でコピー人間ができたり、鏡の中からもう一人の自分が出てきたり、パラレルワールドの自分だったり……ドッペルゲンガーもののファンタジーは昔から色々ありますが、よくあるドッペルゲンガーものは、「もう一人の自分が、自分では気づかなかったネガティブな感情を拡大したような、恐ろしい存在である」というストーリー。

 「俺の中にこんな怪物がいたとは……ッ」ってヤツですね。

 ところが、この物語、マージの分身はすっごくイイヤツなのです。
 なにもかも、完璧に出来る、パーフェクトな優等生。能力だけでなく性格もよく、そして、本家マージにも優しく接してくれます。

 マージ2号のおかげで家はピカピカ。おいしい食事も用意してくれて、ベッドまで朝食を運んでくれるくらい優しいマージ2号。しかも、町の人たちの人助け(ねずみ助け?)もし、ショーを大成功させ、みんなの人気者になってしまいます。

 そんなマージ2号を見て、どんどん落ち込んでしまうマージ。でも、やさしいマージ2号を消してしまうことはできなくて……

 何もかも完璧なマージ2号ですが、チュウチュウ通りの仲間たちが愛しているのは、欠点だらけの本物マージだとさいごにはわかります。

 どんなに欠点だらけでも、自分はこの世にたったひとりの、かけがえのない存在。
 ダメダメでも、自信が無くても、この世に一人しかない自分を愛そう。そんなお話なのです。

 しかも、マージが作り出したマージ2号があんなに完璧だってことは、マージの中にそういう素敵なところがたくさん眠っているということでもあります。マージの本性、イイヤツすぎる。

 字はわりと大きめ、すべての漢字に振り仮名が振ってある「総ルビ」です。お子さまがひらがなカタカナの五十音が読めれば、一人でも読めます。もちろん、読み聞かせにもおすすめです。

 たしろちさと先生の素朴でかわいい挿絵は総見開きにフルカラーで入っています。原書の挿絵のイメージに寄せて描いてくださっているので、そこもいいなあと思うポイント。

 エミリー・ロッダはストーリーテラーなので、短いお話でもテーマや起承転結がはっきりしていて読みごたえがあります。絵本なのに、長い物語を読んだ気持ちになるのが不思議です。毎回哲学的なテーマがひそんでいるところもいいのです。

 「チュウチュウ通り」は、絵ばかりの絵本を卒業して、そろそろ小説にチャレンジしようという「手前」の時期におすすめのシリーズ。物語の魅力に気づかせてくれる絵本です。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素はまったくありません。
 自分がもう一人いたらいいのに、と言うありがちなテーマなのに、どこを切ってもほのぼのとしかしない、やさしい世界の物語です。でも、お話自体は起伏があって面白い。

 読後はおいしいお茶と、チーズケーキでティータイムしましょう。

 

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