【はじめてのおつかい】はじめてのおつかい、うまくできるかな?小さな第一歩の絵本【4歳 5歳 6歳】

お母さんに頼まれて、みぃちゃんは牛乳を買いに行くことになりました。さて、ちゃんとできのでしょうか……? はじめてのおつかいの、一生懸命な気持ちと小さな達成感を描いた、思わず笑顔になる絵本です。
この本のイメージ はじめてのおつかい☆☆☆☆☆ 小さな問題解決☆☆☆☆☆ 成功体験☆☆☆☆☆
はじめてのおつかい 筒井頼子/作 林明子/絵 福音館書店
<筒井頼子>
1945年東京生まれ。埼玉県立浦和西高校卒業。林明子とのコンビで「はじめてのおつかい」「あさえとちいさいいもうと」「いもうとのにゅういん」「おでかけのまえに」「おいていかないで」(以上福音館書店刊)などの作品がある。
<林明子>
1945年東京生まれ。横浜国立大学教育学部美術科卒業。絵本作家として活躍中。「きょうはなんのひ?」(福音館書店刊)で、第二回絵本にっぽん賞受賞。「おふろだいすき」(福音館書店刊)で、サンケイ児童出版文化賞美術賞受賞。
小さな成功体験を描いた「はじめてのおつかい」。1976年初版のロングセラー絵本です。挿絵は「こんとあき」の林明子先生。
5歳のみぃちゃんが、あかちゃんが生まれてばかりでてんてこまいのママのかわりに牛乳を買いに坂の上のお店までお使いに行く……というのがあらすじ。
今は治安の問題などで、小さな子どもがお使いに行くことも減りましたが、それでもまだまだのどかな場所では行われていると思います。
「おつかい」は、小さな子どもが大人とのコミュニケーションや、簡単な計算や、計画通り行動すること、不測の事態への対応など、様々なことが学べる、貴重な体験です。
わたしも思い出します、小さな頃のおつかい。
忘れもしないのは、トイレットペーパーを買いに行くよう、任務を言い渡された時。
そう、あのオイルショックの時です。(古い……) 中東戦争の影響で日本に石油が入ってこなくなって、その結果、「トイレットペーパーが買えなくなる」と言う噂が流れ、人々がトイレットペーパーを買いに店に殺到した事件です。
今でも、日本人は天変地異や緊急事態にはどういうわけか、トイレットペーパーを買いにゆく習性がありますが、それはこの「オイルショック事件」が起源。
あの時は、ありとあらゆる店先からトイレットペーパーが無くなってしまいました。わずかに在庫を抱えている店も、客が押し寄せるのを恐れて、奥に隠してしまったのです。
でも、うちは本当にトイレで使う紙を切らしていて、買わないわけにはいかなかったのですよ。
そこで、子どものわたしに白羽の矢が当たりました。
子どもなら売ってくれるんじゃないか、と大人たちは考えたようです。
わたしは決死の覚悟で臨みました。我が家のトイレのために、泣き落としも辞さない覚悟で。だって、わたしが失敗したら、家族全員、用を足せなくなるんですもん。責任重大です。
結果として……倉庫にあるトイレットペーパーは売ってはくれなかったのですが、かわりにちり紙はたくさん買えました。ちり紙(ちりがみ。ちりし、と言う地方もあります)って知ってます? 白くて四角い、ざらざらした水に溶ける紙です。トイレットペーパーなんて言うハイカラなものが誕生する前は、トイレに置いてあるのは、ちり紙だったんですよ。
あれは、ほんとうにたいへんな「おつかい」でしたねえ。今でも忘れられません。
自分としては、トイレットペーパーが売ってもらえなくてちょっと悔しいけれど、ちり紙をたくさん買えたのでそこには達成感があって、一勝一敗と言う気持ちでした。
でも、考えてみたら、あれが生まれてはじめての「交渉」だったのかもしれません。
小さな子どもの「おつかい」は、他者との関わりをおぼえる、貴重な学びの体験です。
この絵本では、ころんで落とした硬貨を拾ったり、ほかのお客とのおしゃべりで気づいてもらえないお店のおばさんに大きな声で話しかけたりと、みぃちゃんはがんばります。
そういえば、みなさまの地方では、お店に入るとき、なんて言いますか?
わたしの郷里では「ごめんください」と言うのがふつうでした。
東京に出てきたときに、お客が無言でお店に入るので、かなりびっくりした覚えがあります。まずは「ごめんください」と言ってお店に入り、店の奥にいる店主にでてきてもらう、と言うのがわたしの中の「常識」だったから。
子どもの頃の記憶をたどると、「ごめんください」と言ってお店に入ると、「ただ見ているだけ」で買わないことが許される、というゆる~い雰囲気があったように思います。
「ごめんください」と言ってお店に入り、「あらあら久しぶりねえ」と返してくれるお店の人と暫く世間話をして、大して買い物もしないでチラシだけもらって帰ったり、そんなことがわりと多い時代でした。
店番しなくてはいけなくて店から一歩も出られない店主のおばさんのかわりに、お母さんたちのあいだで流行っているものや、最近おうちではまっているものなどについておしゃべりし、有益な情報を教えたら、買わなくてもゆるしてもらえる、時々おやつももらえる、みたいな。
今は自動レジなんてものもあって、お店ではほとんど人間との交流がなくなりましたが、昔の買い物ってこういう、のどかなところがあったような気がします。
「ごめんください」が失われるのは、昔ながらの「お買い物」が減ってきているからなのかもしれません。
最近は物騒な時代になってきたし、店側もハイテク化されてきたので、みぃちゃんのおつかいのような、ほのぼのとした心温まるおつかいが、いつまでできるかはわかりませんが、それでも、読んだだけで心が温かくなり、そして、不思議と元気が出てきます。
ひとつひとつ問題を解決し、大きな課題を達成するお話なので、「何かをやりとげる」ことの手順を学び、やり遂げたときの晴れがましい気持ちなどを感じることができるのです。
字はすべてひらがなで読みやすく、「ひとりで何かをしてみたい」と思い始めた年齢のお子さまにぴったり。
「おつかい」に興味や意欲を持ち始めたら、ぜひ。
大切なことがたくさん描いてあるだけでなく、読んでいるだけで幸せな気持ちになる絵本です。
繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)
ネガティブな要素はありません。次々と起きる不測の事態を、みぃちゃんががんばって乗り越えます。なにがおきてもめげずにがんばるみぃちゃんが、とてもかわいい。
予想外の事態を乗り越えること、目標を達成する達成感などを共感することができます。
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