【都会のトム&ソーヤ】「究極のゲーム」を目指すコンビの大冒険。サバイバルゲームとミステリー【前夜祭】【小学校高学年以上】
2024年3月29日
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学校の職業体験学習で、自社グループのコンビニの売り上げ1位を課せられた創也。彼が計画したのは、水鉄砲のサバイバルゲーム。と、同時に、正体不明の魔物や怪事件も発生し……絡まりあった謎はどうほどく?
この本のイメージ サバイバルゲーム☆☆☆☆☆ ミステリー☆☆☆☆☆ 学園ドラマ☆☆☆☆☆
都会のトム&ソーヤ 9 & 10 前夜祭 内人SIDE・創也SIDE はやみねかおる/作 にしけいこ/絵 講談社
<はやみね かおる>
日本の男性小説家(1964年4月16日~ )。三重県伊勢市出身。代表作は「都会のトム&ソーヤ」「怪盗クイーンシリーズ」「名探偵夢水清志朗シリーズ」など
はやみねかおる先生のヤングアダルト(ライトノベル)小説、「都会(まち)のトム&ソーヤ」シリーズ第9巻と第10巻。初版は9巻が2011年で、10巻は2012年です。
今回は、完全に続き物だったので、セットでレビューを書くことにしました。前半で提示された謎を後半で回収する形です。
ストーリーは……
内人たちは中学2年生。学校の職業体験学習で、様々な仕事を体験するこになった。内人は図書館。創也は竜王グループのコンビニだ。
大人の世界を覗き、少しだけ成長した内人。でも、どうしてだか、内人の行く先々では謎と危険がいっぱい。そして、創也の職業体験学習は、学校での水鉄砲を使った大掛かりにサバイバルゲームとなり、最終的には栗井栄太チームや頭脳集団(プランナ)まで巻き込んで……
……と言うのがあらすじ。
自分たちの「将来」を考えなければならなくなった内人たちが職業体験学習を通じて様々なことを学ぶ「内人SIDE」の9巻、すでに自分の将来を常に考えないといけないのが「日常」の創也の壮大なチャレンジと前半の謎解き「創也SIDE」の10巻がワンセット。
職業体験を通じて、内人は大人の世界を少しだけ知ることになりました。良いところも悪いところも。大人と言えば、日常から堀越さんのお父さんや卓也さんなど、接してはいるのですが、あの人たちは「ふつうの大人」ではありませんからね……
9巻では、内人の職業体験学習を通じて、図書館のしくみなどをわかりやすく説明しています。このお話が出版された頃も、すでに苦しい図書館事情や、有志が行う移動図書館などは話題になっていましたが、令和の今、子どもたちの読書事情はさらに厳しいものになってきたと感じます。
そもそも、わたしたちの子供の頃に比べて、今の子供たちは覚えることが多すぎるんですよね。街に出れば、お店はハイテク化されていて操作をおぼえないといけないし、スマホやパソコンなど、知らないといけないことがいっぱい。
そのなかで、本を読む時間がどれだけ取れるのか……
それでも、「幼い頃は絶対にたくさん本を読んだほうがいい。楽しく読んだほうがいい」と思うので、このブログを書き続けています。
本は知識の宝庫。
もちろん、実際に体験してみることはとても大切です。でも、大人になってみると、「実際に体験して失敗してから学んでも損害がでかすぎる」ことが多すぎるのです。わたしのような歳でも、今になって「知っていればよかった」「調べておけばよかった」と言うことがたくさんあります。
大人の社会は「教えてくれない社会」。「わざわざ教えてくれる人はうさんくさい」世界なのです。(いや、全部が全部ではないけども)
そんな荒波に出てゆく前に、どれだけの「知恵」と言う武器を装備しておけるのか……。物理的な知識だけでなく、推理力や洞察力、そして、礼儀や思いやりなども、大切な「生きてゆくための知恵」なのです。
内人は、おばあちゃんから「生きること」についての根本的な知恵を教わってきています。そのため、異様にサバイバル能力が高く、その場にあるもので物理的な困難を乗り越えることができる。
創也は、コンピューターなどのハイテク機器と、抜群の頭脳を使って問題を解決するタイプ。
行動派の内人と頭脳派の創也は、最高のバディなのです。
「都会のトム&ソーヤ」を読むと、内人の「おばあちゃんの知恵」からサバイバルを学び、創也の周辺の物語から企業などの大人の世界の事情を知り、そして、ライバルの栗井英太たちからは大人の「遊び心」を感じることができます。
全力で生き、全力で働き、全力で遊ぶ……。はやみね先生のポリシーなのでしょう。
とくに今回は、いつもに増して盛りだくさん。
様々な登場人物たちの事情と謎と挑戦が絡み合います。後半の畳み掛ける伏線回収と、リズミカルな展開は心地よい。
少年期の瑞々しいさわやかさと軽快な会話。前半は謎また謎の青春物語、後半は疾走感あふれるサバイバルミステリー。幕の内弁当のような豪華さです。
ジュブナイルならではの主人公コンビの純粋さも魅力。いちばん読んでほしいのは子どもたちだけど、大人が読んで楽しめます。かなり長く続いているシリーズですが、この夏、一気読みしてみるのもいいかも。
魅力的なキャラクターが多いので、きっと推しキャラに出会えると思いますよ。
いままでとかく「ゲーム」と言うと悪者になってきた歴史がありますが、こんなにもストレートに「ゲームをつくるのはかっこいい」と言うお話を書いてくださると、うれしくなります。
創也たちはどんなゲームを作るのでしょうか?
このまま「究極のゲーム」の完成を見届けてみたいと思います。
繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)
ネガティブな要素はありません。軽快で、テンポのいい、冒険小説です。今回は、職業体験学習を通じて、図書館のしくみについて詳しく知ることができます。
異能の人たちがたくさん登場するタイプのお話です。「カウボーイビバップ」「有閑倶楽部」「ジョジョシリーズ」「CLAMP学園探偵団」などが好きなら、大人でもおすすめです。(例が古すぎる)
読後はダージリンティーでティータイムを。
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