【りすのナトキンのおはなし】やんちゃな赤りすナトキンの絵本。りすのかわいい絵がいっぱいです【ピーターラビットの絵本】【赤りすナトキンのおはなし】【4歳 5歳 6歳 7歳】

2024年3月29日

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りすのナトキンのおはなし  ビアトリクス・ポター/作・絵 いしいももこ/訳  ピーターラビットの絵本 福音館書店

ナトキンはとってもやんちゃな子りすです。りすたちがみんなでふくろうのブラウンじいさまのなわばりに木の実をとりにゆきますが、ナトキンは礼儀知らずなふるまいをしたために……

この本のイメージ りすかわいい☆☆☆☆☆ ふくろうもかわいい☆☆☆☆☆ 礼儀は大事☆☆☆☆☆

りすのナトキンのおはなし  ビアトリクス・ポター/作・絵 いしいももこ/訳  ピーターラビットの絵本 福音館書店

<ビアトリクス・ポター> 
イギリスの絵本作家。ヴィクトリア時代の上位中産階級に生まれ、遊び相手も少ない孤独な環境で育ち、学校に通うことは無かった。幼いころから絵を描くことを好み、多くのスケッチを残している。代表作は「ピーターラビット」シリーズ。

 ビアトリクス・ポターの絵本、原題はThe Tale of Squirrel Nutkin. 初版は1903年。日本語版初版はいろいろと出版されているので不明で、石井桃子バージョンが1973年初版です。

 このたび、「赤りすナトキンのおはなし」として、川上未映子先生の新訳が早川書房から出版されました。
 今回は、こちらもあわせてご紹介させていただきます。

 お話は……

 ある湖のそばの森にナトキンという赤りすがすんでいました。彼にはトインクルベリと言うお兄さんや大勢のいとこたちがいました。

 湖の真ん中には島があって、そこにはどんぐりやくりの木がありました。その木々のまんなかにある柏の木に、ブラウンじいさまというふくろうが住んでいました。

 りすたちは、いかだを作って島へ渡り、ブラウンじいさまに貢物をして、その島で木の実を取らせてもらうことにしました。ところが、ナトキンだけは、なぞなぞ歌を歌ったりしてブラウンじいさまに失礼な態度をとります。

 りすたちは毎日貢物をしてから木の実を取りますが、ナトキンは遊んだり、ブラウンじいさまになぞなぞ歌を歌ったりして、やんちゃばかりです。

 ついに最後の日に、ナトキンはブラウンじいさまに捕まってしまい……

 ……というおはなし。

 これは、りすが自分の尻尾を帆にしていかだで水の上をわたるという、アメリカのお話をもとにしているそうです。自分でもちょっと調べたのですが、この「アメリカのお話」というのはなんなのか、わかりませんでした。ごめんなさい。

 礼儀の大切さを書いた、わりとシンプルなお話ではあります。

 たしかに、森の木の実は誰のものでもないし、ふくろうは木の実を食べないのでゆるしをもらう必要はないといえばないのでしょうが、ふくろうにとってりすは食べ物。じいさまに食べられずに木の実をとるために、トインクルベリたちは礼儀をつくそうとしたわけです。

 そう言う意味で、ナトキンはちょっと擁護できないくらいの礼儀知らずなのですが(みんなみたいにまじめに働かないしね)、このナトキンの仕草がとにかくかわいく描かれています。

 お父さんがパイにされてしまったのに、マクレガーさんの畑に忍び込むピーターラビットもたいがい無鉄砲ですが、ナトキンも命知らず。ポターさんは、こういうやんちゃな動物が好きなのでしょうか。

 とはいえ、ナトキンはブラウンのじいさまに食べられそうになり絶体絶命の大ピンチに陥りますが、そこで尻尾を切って逃げ延びます。

 これ、わたしはずっとブラウンじいさまに尻尾を食べられてしまったのだと思っていたのですが、りすって、ピンチのときにしっぽを切って逃げ延びると言う習性があるそうです! はじめて知りました。

 ビアトリクス・ポターは、もともと菌類の研究者だったこともあって、森の動物たちの生態についても深い知識がありました。このお話は、小さな子どものための教訓話のように見えて、科学的知識に裏打ちされているようです。

 イギリスは古い伝統の国でありながら、ファンタジー小説やロック・ミュージックの起源であったりと、不思議なところがあります。

 子ども向けの物語でも、やんちゃで型破りな主人公が活躍する話も多く、それが古典名作として受け継がれています。

 でも、読んでいて感じるのは、そういったキャラクターたちも礼儀はしっかりとしているということ。そしてひどい目にあうキャラクターは礼儀を守らないということ。

 「くまのパディントン」とかがまさにそうで、パディントンはちゃんと帽子をとってご挨拶するし、困っている人は助けるし、他人に親切にしようとするし、本人はいいくまなのです。ただ、人間の常識と違うところが騒動のもとになるだけで。

 メアリー・ポピンズも、そういうところがあります。礼儀作法はしっかりしているし、人助けもするし、たくさんの美徳がある。でも、固定観念に縛られず、他人のいいなりにはならない。

 イギリスの古い児童文学は、はちゃめちゃな話が多いのですが、そのあたりをはずさないところがすごいな、といつも思うところです。

 日本人は、もともと自己評価が低く、ことを荒立てたくないため、「礼儀」と「隷属」の境目がわからなくなってしまいがちなところがあります。

 どこまで下がればいいのか、どこから主張すれば良いのか……どこまでが説明でどこからが言い訳になるのか……黙っているとどんどん誤解が深まるし、かといって、礼儀知らずにならないで主張するのはどうすればいいのか……

 人付き合いで悩む人は、たいてい、このあたりで苦しむのではないでしょうか。

 海外の児童文学を読んでいると、このあたりをひょいと飛び越えてしまっていることが多く、それが日本人のわたしにはさわやかな魅力です。
 礼儀はちゃんと守る。しかし、言うべき事は言う。このあたりのバランスは、コミュニケーションが苦手なわたしには一生の勉強な気がします。

 この「りすのナトキンのおはなし」は、ナトキンの歌う「なぞなぞ歌」がいくつも登場します。
 英語の詩を翻訳するのは難しいのですが、石井版では古風な言い回しでリズミカルに翻訳しています。ただ、訳が古いので、そろそろ今の子にはわからない言葉も。

 「このなぞ とけたら 1えん しんじょ!」(進上する、と言う意味だと思いますが、もう子どもは使いませんよね)というナトキンの歌、ここは川上末映子先生版だと「あなたに銀貨さしあげます」になっています。

 おそらく、いちばん違いがあるのは、「歌」が多いこのお話でしょう。川上版はわかりやすく、石井版は古風な言い回しが、一周まわっておしゃれな感じ。石井版はほぼひらがな、川上版は石井版よりは漢字が多く、どちらもすべての漢字にふりがなかふってある総ルビです。

 どちらの版が良いのかは、ご家庭で選択してみてくださいね。

 動物の生態や習性にも忠実な、それでいて可愛らしいファンタジーです。礼儀の大切さも描かれているので、このシリーズにしては珍しく教訓的。この夏のおうち時間にいかがでしょうか。

りすたちがとにかくかわいいので、大人の和み本としてもおすすめです。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素はありません。ちょっと怖くてドキドキしますが、ナトキンは食べられませんので、大丈夫。
 珍しく教訓的な側面もあります。

 りすやふくろうが好きな方は、かわいい絵がたっぷりあるので、おすすめです。

 

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