【わかったさん】わかったさんとプリンを作ろう!暑い日にはプリンとババロワ。なつかしのクッキングファンタジー【小学校低学年以上】
わかったさんはクリーニング屋さんの娘です。ある日、自動販売機でジュースを買おうとすると、不思議な男の子のギャングがおもちゃの銃を向けてきて、わかったさんは誘拐されてしまいます。その目的は……
この本のイメージ プリン☆☆☆☆☆ ババロワ☆☆☆☆☆ 不条理ファンタジー☆☆☆☆☆
わかったさんのプリン 寺村輝夫/作 永井郁子/絵 あかね書房
<寺村 輝夫>
1928年東京生まれ。早稲田大学卒業。『ぼくは王さま』で第15回毎日出版文化賞受賞。1984年「独特のナンセンステールズで、子どもの文学の世界を広げた」功績により第17回巌谷小波文芸賞を受賞。2006年没。
毎日暑いので、冷たくてつるんとしたものが食べたくなりますよね。と、いうわけでプリンです。
「わかったさんのプリン」は、1989年初版。愛されるロングセラーです。
おはなしと、お料理の両方を楽しめる、レシピつきクッキングファンタジー「わかったさん」のシリーズ。
今回のお話は……
自動販売機でジュースを買おうとしたら、ちっちゃな子どもギャングに攫われてしまったわかったさん。子どもギャングは不思議な森の奥、ガラスの家に住んでいる人からプリンの作り方を教えてもらってきてくれといいます。
森の奥で、プリンの材料を手に入れようと、奇妙奇天烈な冒険をするわかったさん。
ガラスの家の主人の魔女は、わかったさんにプリンの作り方を教えてくれますが……
……と、いうのがあらすじ。
自動販売機でジュースを買おうとしたところまでは現実界ですが、その後は、いつものわかったさんワールドへジャンプです。わかったさんのストーリーはいつも、現実の世界からいきなり幻想の世界へと移行する、白昼夢のような不条理ファンタジー。
そして、途中で、料理をしながらかならずレシピを歌います。そう、「わかったさん」ワールドはミュージカルなのです。
今回登場する、こどもギャングくんの名前は「ババロワ」。
最近、ババロワって言葉、聞かないですよね。たぶん、今は「ムース」って呼ばれていると思います。でも、「ババロワ」のほうが「ムース」より固めの感じ。
そういえば、ファッションでは最近は「トレーナー」って言わないですよね。たぶんスウェット。そして、「パーカー」も言わないそうですよね。「フーディー」??? いや、もうパーカーでええやん……(パーカーかパーカかでもめてた頃もなつかしい) そして、「スパッツ」は「レギンス」と言うんですよね。いや、それくらいはさすがに知ってますけども。
と、言うわけで、最近とんと聞かなくなった「ババロワ」ですが、わたしはわりと好きなんです、ババロワ。
今、調べてみたら(インターネットってすばらしい!)「ムース」はフランス菓子(お菓子じゃないムースもある)、「ババロワ」はドイツのお菓子らしいです。
ドイツのものって、昔は日本にたくさんもたらされていたんですよね。ドイツと聞くと、なんとなくレトロな雰囲気があるのもそのせい。
ちなみに、「プリン」の発祥は「プディング」を生み出したイギリス。もとは、パンや肉の切れ端、野菜などを卵液などで固めた茶碗蒸しのようなものが発祥のようです。それが、卵液だけのカスタードプリンとして、進化して残ったというわけ。
正式には蒸して作るのが「プリン」、ゼラチンで固めるのは「ケミカルプリン」と言うようです。「ババロワ」はゼラチンで作るので、ゼラチンでつくるプリンはババロワやムースの仲間ともいえますね。
この物語でわかったさんは、魔女から蒸して作る正式なプリンの作り方を教わります。そして、「ひみつ」の隠し味は、「バニラ」。確かに、上等のバニラを使うとプリンはぐんとおいしくなります。
今は、ちょっとした純喫茶ブームで、レトロ喫茶に注目が集まっています。コロナ禍を潜り抜けた歴戦の勇士、老舗のレトロ喫茶は、じりじり暑いこの季節の避難場所にぴったり。
そして、そこで注文したいのは、クラシックなプリン。そう、あのちょっと固めのヤツです。銀の足つきお皿にのっていて、生クリームと缶チェリーが飾られているアレ。
ちょっと奮発して、「プリンアラモード」でもいいですね。純喫茶以外では、なかなか食べられないスイーツです。
そんなレトロなデザートをおうちで作ってみるのも楽しいかもしれません。わかったさんみたいに、歌を歌いながら。
巻末には、プリンの作り方が丁寧に書かれており、パン・プディングやババロワの作り方もあります。
字は程よく大きめで、ほとんどがひらがなとカタカナで書かれており、漢字には振り仮名がふってあるので読みやすい。そして、挿絵は、ところどころフルカラーのものもあり、読んでいるとうきうきしてきます。
楽しくて面白くておいしい、わかったさんの世界。つるんとしたひんやりお菓子が好きなら、ぜひどうぞ。
繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)
ネガティブな要素はありません。不思議でゆかいなクッキングファンタジーです。
びっくりするようなことが次々とおきる、カラフルな不条理ファンタジーなので、お子さまの想像力を掻き立てます。
読後は一緒にプリンを作ってみましょう。
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