【くろくまレストランのひみつ】森の小さなレストランの秘密。ほんわか動物ファンタジー。【小学校低学年以上】
森の図書館にはたくさんの本があります。働いているのはしろやぎのあごひげ館長。ある日、くろくまが相談にやってきました。ひとりぼっちのくろくまは、森のみんなと仲良くしたくてレストランを開いたのですが……
この本のイメージ ほのぼの☆☆☆☆☆ 動物ファンタジー☆☆☆☆☆ 受け継がれる愛☆☆☆☆☆
くろくまレストランのひみつ 小手鞠るい/作 土田義晴/絵 金の星社
<小手鞠るい>
1956年岡山県生まれ。同志社大学法学部卒業。「ルウとリンデン旅とおるすばん」でボローニャ国際児童図書賞を受賞。
<土田義晴>
山形県鶴岡市生まれ。日本大学芸術学部油絵科卒業。1980年『にわのはな』で絵本画家としてデビュー。絵本や、児童書、教科書のさし絵を多数手がける
かわいい動物ファンタジーです。初版は2012年。
森の動物のみんなと森の図書館の館長、あごひげ館長との交流を描く「森のとしょかんシリーズ」。記念すべき一冊目です。
おはなしは……
大きな楓の木の奥の洞窟に、森の図書館があります。
そこにいるのは、しろやぎのあごひげ館長。森のみんなの悩み事、困りごとを、彼らにぴったりの本を探してくれて解決してくれるのです。
今日、たずねてきたのは、ひとりぼっちのくろくまくん。
森のみんなと仲良くしたくて、レストランをひらきましたが、お客さんがひとりも来ません。それであごひげ館長に相談に来たのです。
あごひげ館長は、図書館からある本を探し出して、くろくまくんに貸してくれました。
その本とは……
……と、いうのがあらすじ。
すごく可愛らしいシリーズで、いつか紹介したいなと思っていたのですが、今回この「くろくまレストランのひみつ」をよくよく読んで、「これはこの季節に紹介しなければ」と思いなおしました。
くろくまくんが一人ぼっちになってしまった理由、おばあちゃんの教え、託されたご先祖の想いなど……この時期、この季節だからこそ、深く心に染み入るところもあります。
もちろん、小さなお子さまには、まだまだ伝わらないこともたくさんあるとは思いますが、児童文学に込められた想いやメッセージは、その時、その時点では全部理解できなくてもいいように書かれています。
けれども、哀しみや憎しみで心を閉ざしてしまったくろくまくんが、森のみんなのためにおいしいごちそうを作りながら立ち直ってゆく姿を読むと、理屈ではなく心の芯のところで、その「願い」を感じ取れるのです。
くろくまくんは、一人ぼっちではあるけれど、おばあちゃんやお父さんお母さんたちからの愛情を受け継いでいる。死んでしまった大切な存在たちは、自分が幸せになることを望んでいる。
わたしたちは、前の世代の人々から、「幸せになってほしい」と言う願いを託されて生きているのです。
忘れかけていたことを思いださせてくれた、優しいファンタジーです。
あたたかみのある、やさしい文章は読みやすく、ひらがなが多く漢字は少なめ。漢字にはすべて振り仮名が振ってあります。絵本を卒業して、そろそろ長めのお話を読み始めようというお子さまにぴったり。だいたい小学校低学年くらい向けです。(公式では小学校中学年向けとされていますが、本が好きな子なら低学年からで大丈夫と思います)
文章のボリュームは少なく読みやすい文章なのですが構成が凝っていて回想シーンなどがあり、時系列を行き来するので、物語好きのお子さまにおすすめ。もちろん、読み聞かせにも。
普段からアニメーションや映画などを好んで見ている子や、起伏のあるお話が好きな子ならば、小さな子でも読みきれるのではないかと思います。
動物もので絵がかわいいので、性別関係なくお楽しみいただけます。
本を通じて森の動物たちが交流するこのシリーズ、まだまだ続きがあるようです。ほかの動物たちの生活を覗いてみるのが楽しみです。
繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)
非常に繊細なテーマが秘められている物語です。どう受け止めるかはその人しだいで、正解はありませんが、HSPやHSCの方のほうが、多くのことを感じ取れるでしょう。
やさしいファンタジーです。
読後は、おいしい紅茶とアップルパイでひとやすみしましょう。
最近のコメント