【チュウチュウ通り】エミリー・ロッダの動物ファンタジー絵本第10巻。郵便配達員の夢と、仲間たち。【スタンプに来た手紙】【5歳 6歳 7歳】

2022年8月23日

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チュウチュウ通り 10番地 スタンプに来た手紙   エミリー・ロッダ/作 さくまゆみこ/訳 たしろちさと/絵 あすなろ書房

スタンプは郵便配達員。みんなに手紙をどけます。そんなスタンプには夢がありました。それは、「誰かから手紙をもらうこと」。ある日、名案を思いついたスタンプは……

この本のイメージ 動物ファンタジー☆☆☆☆☆ ペンフレンド☆☆☆☆☆ 仲間っていいな☆☆☆☆☆

チュウチュウ通り 10番地 スタンプに来た手紙   エミリー・ロッダ/作 さくまゆみこ/訳 たしろちさと/絵 あすなろ書房


<エミリー・ロッダ>
Emily Rodda、1948年4月2日~。オーストラリア・シドニー生まれのファンタジー作家。代表作は「ふしぎの国のレイチェル」「リンの谷のローワンシリーズ」など。

<さくまゆみこ>
東京生まれ。出版社勤務を経てフリーの翻訳家に。訳書にエミリー・ロッダ「リンの谷のローワン」シリーズ、「ふしぎの国のレイチェル」「テレビのむこうの謎の国」ホーキング「宇宙への秘密の鍵」など。

チュウチュウ通り 10番地 スタンプに来た手紙   エミリー・ロッダ/作 さくまゆみこ/訳 たしろちさと/絵 あすなろ書房

 リンの谷のローワン」のエミリー・ロッダのかわいい絵本シリーズ。「チュウチュウ通り」です。
原題はBEN THE POST-MOUSE.(郵便ねずみのベン) 原書初版は2006年。日本語版の初版は2011年です。

 どの本から読んでもいい構成になっているのですが、1番地から順番に読みたい方は、こちらのレビューをどうぞ。↓

 今回のおはなしは……

 スタンプは郵便配達員。郵便を配達に来たついでにおしゃべりをする間柄なので、町のみんなは全員スタンプのことを知っています。

 そんなスタンプの夢は自分も誰かから手紙をもらうこと。他人の手紙を配達するばかりで自分あての手紙をもらったことがなかったスタンプは、新聞の広告欄に、「お手紙求む。次の日に届くようすぐ返事します」と三行広告を載せます。

 ところが、この効果によってスタンプは思わぬ災難に……

 今回のお話は、チュウチュウ通りのみんなが全員で駆けつけます。全10巻のシリーズ絵本の最終巻にふさわしいエンディング。一度も手紙をもらったことがないスタンプでしたが、それは待ちのみんなが彼が手紙を届けに来てくれるときにおしゃべりできるので、出す必要がなかっただけで、好かれてなかったわけではないのです。

 わりとこういう誤解がありますよね、人生って。

 ひとりではどうにもならないような事態を引き起こしてしまったスタンプでしたが、チュウチュウ通りのみんなの協力であっという間に事件は解決します。

 でも、それもいままでのスタンプの積み重ねがあったから。郵便配達の仕事のなかでスタンプが培ってきた信用や友情の賜物なのです。

 チャイブのお話やスティックのバンドのお話、セーラの宝のお話など、「チュウチュウ通り」のシリーズは、「きらびやかで派手な成功より身近な仲間たちの友情が大切」と言うお話が多いですね。これは、仏教の「諸行無常」の考え方にも通ずるところがあります。形あるものはすべて滅びる、人間の栄枯盛衰はつきもの、だから今身近でささやかな幸せを大切にして感謝して生きる、というものです。

 「リンの谷のローワン」で、谷で1番弱くて役に立たないローワンが、結果的に谷で最強になったと言う陰陽逆転の物語を出版したりなど、エミリー・ロッダは東洋的な感性を持っていたのかもしれません。

 スタンプは「手紙が欲しい」と思っていましたが、本当にほしかったのは町のみんなとの交流で、それは郵便配達の仕事を続けているうちに、知らず知らずのうちにすでに手に入れていたものだったのでした。

 「青い鳥を探しに行ったら自宅にあった」みたいなお話です。

 でも、スタンプの気持ちもわかるんですよ。何年も郵便配達のときに顔をあわせて親しくおしゃべりをしていたって「相手が自分に丁寧に対応してくれるのは、仕事の立場があるから」と思うのは、無理もありません。むしろ、「自分は好かれている」と思い込むほうがアブナイヤツです。

 でもそんなスタンプだから愛される。地味でも真面目に自分の仕事をコツコツ続けることは大きな信頼になる、と言うテーマも根底に流れています。

 字はわりと大きめ、すべての漢字に振り仮名が振ってある「総ルビ」です。お子さまがひらがなカタカナの五十音が読めれば、時間をかければ一人でも読めます。もちろん、読み聞かせにもおすすめです。

 たしろちさと先生の素朴であたたかみのある挿絵は総見開きにフルカラーで入っています。じつは原書の挿絵のイメージに寄せて描いてくださっていて、それもすばらしい。

 「チュウチュウ通り」は、絵ばかりの絵本を卒業して、長めの小説に挑戦しようとする前段階の、「絵本と小説の中間くらい」の本です。エミリー・ロッダはストーリーテラーなので、キャラクターが多くストーリーに起伏がある物語は大人が読んでも「読んだ」感があり、子ども向けの洋ドラみたいな雰囲気もある、楽しいシリーズになっています。

 夏休みに一気読みしてみてはいかがでしょう。チュウチュウ通りの仲間たちは個性的なねずみばかりなので、お気に入りのキャラクターがきっと見つかるはず。

 小さなお子さまに「物語を読む」ことの楽しさ、幸せを感じてほしいシリーズです。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素はまったくありません。チュウチュウ通りの仲間たちの友情にぐっとくるお話です。全巻まとめて読むと、チュウチュウ通りの住人たちの人間関係(ねずみ関係?)がよくわかり、楽しさも倍増します。

 「物語」や「キャラクター」を楽しむことを教えてくれる絵本です。

 読後は、紅茶とチーズケーキでティータイムを。

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