【チリとチリリ】秋の町をうきうきサイクリング。ファンタジックなロングセラー絵本【まちのおはなし】【4歳 5歳 6歳】
チリとチリリはサイクリングで町にゆきました。糸やさんできれいな糸を買って、織物やさんで機織師にマフラーをつくってもらいます。お屋敷に立ち寄ってスープのおもてなしをうけ、小鳥たちのお誕生会に参加します……
この本のイメージ ファンタジー☆☆☆☆☆ サイクリング☆☆☆☆☆ 秋の町☆☆☆☆☆
チリとチリリ まちのおはなし どいかや/作 アリス館
<どいかや>
1969年東京に生まれる。東京造形大学デザイン科卒業。「アイヌのむかしばなし ひまなこなべ」(萱野茂・文)で産経児童出版文化賞産経新聞社賞を受賞。「チリとチリリ」シリーズ、「チップとチョコのおでかけ」「おはなのすきなトラリーヌ」「ねこのかあさんのあさごはん」「ハーニャの庭で」「ナナカラやまものがたり」「ぼくたちねこなのゆかいな8ぴき」「ポーリーちゃん ポーリーちゃん」など、自然や生き物への愛情があふれる絵本を数多く手がけるほか、緑ゆたかな山間で猫たちと暮らす日々をつづった「ちっぽけ村に、ねこ10ぴきと。」などのエッセイも発表している
かわいいふたりの女の子、チリとチリリのファンタジックサイクリングの絵本シリーズ。「まちのおはなし」は2005年初版です。
「チリとチリリ」のシリーズはチリとチリリという女の子ふたりが、自転車にのって様々な場所をサイクリングする、ファンタジックなストーリー。
すでにシリーズが8冊出版されており、どの話から読んでも理解できる一話完結物ですが、最初から順番にお読みになりたい場合は、「チリとチリリ」からお読みください。
「チリとチリリ」のレビューはこちら↓
今回の「チリとチリリ まちのおはなし」は、秋の雰囲気たっぷりのお話。
チリとチリリはサイクリングで町に出かけ、きれいな花びら染めの、わたの糸を買います。チリは椿の糸とポピーの糸。チリリはマリーゴールドの糸とすみれの糸です。
林のなかを抜けると古い町につき、そこでみつけた織物やさんで、さっき買った糸でマフラーをつくってもらいます。
マフラーをつけたふたりは、路地を抜け、大きなお屋敷を見つけます。
お屋敷では、かぼちゃとじゃがいものスープのおもてなしをうけ、何度もおかわりするふたり。そして、バラの咲き乱れるお庭では、鳥が鳴いていて、生まれたばかりの小鳥の誕生会をしていたのでした……
……と、いうのがあらすじ。
今回も、チリとチリリが愛らしい。子供が読めば、不思議な雰囲気にわくわくするし、大人が読めばふんわりとした優しさに癒されます。
現代の日常生活は、どんなに無理をしないようにしていても、どこかで気を張っているものです。ましてや、今は天変地異や伝染病など、人の力ではどうにもならない問題も年々増えています。
人間関係も、現代社会で生きていれば自分とまったく同じ考え方の人なんていないのだから、思い通りになんてなりません。誰も犠牲にならないように、どのひとも幸せになれるようにと身をすり減らして調整しても、うまくゆかないこともあります。
もちろん、個人個人が努力するのは当然だけど、「疲れちゃったなあ」と思う時だってあるのが、むしろ正常な人間ではないでしょうか。
そんなとき、わたしは絵本を読むのをおすすめしています。
このサイトのテーマのひとつに「大人のための児童書読書」と言うのがあるのですが、人って、神経が疲れ果てているときは、まじりっけなしのピュアな何かが欲しいと思う時があるのです。
わたしは、アクションものやサスペンスものも大好きですし、若いときはダークな展開のお話も読んだりアニメーションを見たりもしました。
でも、この年になってわかるのは、そういうの楽しむのには体力気力が必要だということ。このサイトではバッドエンドやデッドエンドのお話は紹介しないので、お好きな方は「甘ったれてる」とお感じになるかもしれません。
いやいや、そうではないのです。面白いのはわかっているのです。でも、自分の中にある程度バイタリティがないと健全に楽しめないんですよ。
そんなとき、「チリとチリリ」のような、ひたすら純粋で愛らしいものに惹かれます。ささくれ立った心がなごむのです。小さなお子さまには、かわいい楽しい絵本だと思うのですが、大人が読むとしみじみと救われます。
今回の「まちのおはなし」を読んでから、自分の町を自転車でサイクリングすると、いままで気がつかなかった小さくてかわいいお店を発見するかもしれません。
今まで気づかなかった、道端の花に気がつくかもしれません。
秋口のサイクリングは風が冷たい時がありますから、チリとチリリみたいにかわいいマフラーをするといいですね。秋のバラの見ごろは10月なので、もうすぐです。
晴れた日に、自転車をこいで花を見に行きたくなる絵本です。
繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)
HSPにも、HSCにもおすすめです。ネガティブな要素がひとつもありません。あたたかみのある筆致と愛らしいキャラクターはページをめくるごとに心をなごませてくれます。
温かいお茶を水筒にいれて、サイクリングにいきたくなるはず。
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