【火狩りの王】もうすぐアニメ化! 終末後の混沌の世界を描く、ダークファンタジー第3巻【牙ノ火】【小学校高学年以上】

2024年3月30日

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火狩りの王 <三>牙ノ火   
日向理恵子/作 山田章博/絵 ほるぷ出版

ついに「蜘蛛」「人間」「神族」の戦いが勃発。想像を超える混乱の決着は? 明楽は姫神に会えるのか? 綺羅の運命は? 煌四は、灯子は、この狂った世界で生き抜けるのか? そして、ついに、運命の星「千年彗星」が地上に降り立つ。怒涛のダークファンタジー第3巻。

この本のイメージ 緻密な世界設定☆☆☆☆☆ ダークファンタジー☆☆☆☆☆ 世界の謎☆☆☆☆☆

火狩りの王 <三>牙ノ火  日向理恵子/作 山田章博/絵 ほるぷ出版

<日向理恵子>
児童文学作家。主な作品に「雨ふる本屋」シリーズ、「魔法の庭へ」(いずれも童心社)、「日曜日の王国」(PHP研究所)など。日本児童文学者協会員。

<山田章博>
漫画家、イラストレーター。主な漫画に『ロードス島戦記~ファリスの聖女~』、挿絵に「十二国記」シリーズ(小野不由美著、新潮社)、「ドリームバスター」シリーズ(宮部みゆき著、徳間書店)など、作品多数。第27回星雲賞(アート部門)受賞。

 もうすぐアニメ化が予定されている、日向理恵子先生の「火狩りの王」第3巻です。初版は2019年11月。

 非常に緻密な世界観の本格ファンタジーで、バイオレンスシーンも真正面から描かれており、容赦なく人が死にます。終末後の苛酷な環境で、死と隣りあわせで懸命に生きる少年少女と世界の謎を描いています。


 物語は、第1巻から完全に続いていますので、興味をもたれた方はまずは、「火狩りの王 <一>春ノ火」からお読みください。「火狩りの王 <一>春ノ火」のレビューはこちら

 ストーリーは……

 最終戦争後の世界。人体発火病原体に犯された人類は、「ほんものの火」が少しでも傍にあると燃えてしまう体質に変貌してしまっていた。この世界で、「火」として人類が扱えるのは、黒い森に巣食う「炎魔」と呼ばれる獣を倒したときに体内から取れる金色の液体のみ。

 犬を連れ、炎魔を倒して火を採集する人々は「火狩り」と呼ばれた。

 「火狩り」たちには、ある噂がある。それは、
 「虚空を彷徨ったとされる人工の星・千年彗星(揺るる火)を狩った火狩りは、『火狩りの王』と呼ばれるであろう」……

 ついに「蜘蛛」たちが首都へと侵攻を開始する。しかし、それは油百七たちの想像を超える形ではじまった。轟音とともに炸裂する「雷火」。破壊される首都。そして、神族たちもそれぞれの思惑で動き始める。

 灯子と煌四は、混乱のなか、悩みながら、迷いながらも大切な人たちを守ろうとする。

 そして━━ 伝説の千年彗星(揺るる火)は、天空でのつとめを終え荒廃した大地に降り立つ。

 はたして、「火狩りの王」となるのは誰なのか……?

 ……と、いうのがあらすじ。

 前回のレビューにも書きましたが、とにかく過酷でシビアな世界観です。

 いい人だから生き残る、悪い人だから罰を受けるというような単純な世界観ではなく、良い人の命も悪い人の命も同じように軽く、人は簡単に死んでしまいます。そんな過酷な世界で生きる、まだ11歳の灯子、14歳の煌四。

 今回、煌四は、自分が研究してきた「もの」が人を救うものではなかったのではと気づき、悩みます。そして、せめてもの償いと自分にできることをしようと行動します。

 彼の魂が善良なればこその悩みと、その結果の自己犠牲に対比するように描かれる、他人への思いやりなど欠片もない油百七の迷いのない行動力。

 そもそも煌四が油百七のもとに身を寄せた動機は、妹の緋名子の命を救うため。その後の決断は首都の人々を救うため。
 誰かのために下した決断が間違っていたと知ったとき、煌四はまた「誰かのため」に償おうと決意します。
 人は間違えるもの。でも、煌四の行動のベースにある愛情や思いやりはまちがってはいない。

 それなのに、迷い、苦しみ、何度も間違うのはいつも煌四のほうで、自身の目的のために迷いなく突進しているのは油百七のほう。物語上、油百七がハッピーエンドを迎えることはないと予測できるとしても、このあたりの理不尽がとてもリアルです。

 一方、狩り犬「かなた」との出会いで、激動の運命に投げ込まれた灯子も、けなげにも次々と襲う過酷な試練を真正面から受け止め、乗り越えようとします。

 崩壊する世界で、彼らがどう生き、どんな結末を迎えるのか……

 ……最後まで見届けたいと思います。

 かなりヘビーなお話なので、体力気力のあるときに。漢字は多いのですが振り仮名はそれなりにあります。小学校高学年から読めると思います。

 ただし、固有名詞に難しい漢字が多いので、ファンタジーに慣れていない方はメモを取りながら読むとわかりやすいでしょう。今回は、複数の種族が入り乱れるので、相関図を書きながら読むと楽しいですよ。

 山田章博先生が、表紙だけでなく挿絵も描いてくださっており、独特の和風の世界観を美しく描いていて、それも魅力のひとつ。

 細密な世界観のファンタジーが大好きな方にはおすすめです。この混沌の世界を、灯子たちと一緒に走り抜けましょう。

 ※この本には電子書籍もあります。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 非常にシビアな世界観の本格ファンタジーで、人も死にますし、暴力・流血シーンもあります。手加減無く真正面から書かれているので、そういうのがダメな人にはおすすめしません。

 「そういうシーンがあるのだな」と身構えていれば読める、と言う方にはおすすめします。ただし、読むのに体力気力が必要なので、万全なときに。面白いです。

 読み終えたら、甘いものを食べて脳に栄養を上げてくださいね。おいしい和菓子と緑茶がおすすめです。

 

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