【ぞくぞく村の魔女のオバタン】ハロウィンシーズンに!とぼけた魔女とおばけたちの物語。【ぞくぞく村シリーズ】【小学校中学年以上】
ぞくぞく村に住んでいるのは、ちょっとかわったおばけばかり。寒がりの透明人間、入れ歯のドラキュラ、ほうきに乗れない魔女、おしゃれな幽霊のおじいさん、時々ぶたになってしまう狼男……今回はほうきに乗れない魔女のオバタンのお話。
この本のイメージ コワい☆☆☆☆☆ かわいい☆☆☆☆☆ ゆかいな☆☆☆☆☆
ぞくぞく村の魔女のオバタン ぞくぞく村シリーズ 末吉暁子/作 垂石眞子/絵 あかね書房
<末吉暁子>
末吉 暁子(すえよし あきこ、1942年8月27日 ~2016年5月28日)は日本の児童文学作家。
神奈川県生まれ。「星に帰った少女」で日本児童文学者協会新人賞・日本児童文芸家協会新人賞、「ママの黄色い子象」で野間児童文芸賞、「雨ふり花さいた」で小学館児童出版文化賞、「赤い髪のミウ」で産経児童出版文化賞フジテレビ賞を受賞。作品に「ぞくぞく村のおばけ」「ざわざわ森のがんこちゃん」「シルカ小学校のブキミともだち」の各シリーズ、「黒ばらさんの魔法の旅だち」などがある。
<垂石眞子>
垂石 眞子(たるいし まこ、1952年~ )は、日本のイラストレーター、児童文学作家。神奈川県茅ヶ崎市出身。多摩美術大学卒業。垂石真子、たるいしまこ名義でも活動している。
ハロウィンシーズンなので、魔女もの、魔法使いもの、おばけものを重点的にご紹介しています。
本日は、末吉暁子先生の「ぞくぞく村シリーズ」の「魔女のオバタン」。初版は1989年。
幼児むけのオカルトコメディには大切な役割があって、小さな子どもにとって「怖いもの」「未知のもの」を「楽しくて」「かわいいもの」に変換してくれる力があります。
小さな子どもにとって、世界は知らないものだらけ。もちろん、明るい好奇心でいっぱいの子もいますが、怖いものだらけ、と感じる子もいます。
繊細で、感じやすい子にとって、世界は過剰な刺激にあふれていて、緊張の連続です。
そんなとき、明るく楽しいオカルトコメディが役立ってくれるのです。オカルトコメディは、おばけや妖怪、モンスターなど、子どもが「怖い」と感じるものを可愛く、面白くしてくれます。「怖い=楽しい」と転換できる回路ができれば、生活のさまざまなことが楽になります。
夜中にトイレに行くこととか、水泳をすることとか、夕暮れ時に歩くこととか。
今回ご紹介するのは「ぞくぞく村の魔女のオバタン」。
オバタンは、優秀な魔女ですが、ひとつだけ欠点があり、ほうきに乗って上手に飛ぶことができません。ほかのことは呪いをかけたり、あやしい薬を作ったり、テレパシーを使ったりとなんだってできるのに。
でも、なんとしてでもほうきで飛びたい!と今日も練習をするオバタン。
オバタンの夢はほうきでお月さままで飛んでいって、お月さまのかけらでクッキーを作って食べること。
だから、あきらめるわけにはいかないのです。
なんとか飛ぶことはできたものの……結局、うまく飛べなくて、あちこちに激突したりひっかけたりと、村のみんなに迷惑をかけてしまいます。
オバタンが上手に飛べないのは、体重が重すぎるからだ! と、村のみんなの指摘でダイエットを開始。
さて、オバタンはお月さまのかけらでクッキーが作れるかな?
……と、いうのがあらすじ。
オバタンは、努力家なんですね。
飛ぶための努力は惜しまないし、どんなに失敗しても飛び続ける。それが証拠に、家には折れたほうきがいっぱい。
でも、努力の方向性が間違っていたことに気づき、ダイエットすることにしたのでした。
オバタンは頑張り屋なので、ちゃんとダイエットもします。
人って、夢があると努力できるし、努力の方向性がかみ合っていないとうまくいかないけれど、そこがぴたっと合えば難しかったことも簡単にできるようになる。
わりと深いテーマもひそんでいます。
かなりのロングセラーなので、小さい頃に読んだという人も多いのではないでしょうか。でも、安定の面白さ。
文章は平易で読みやすく、漢字とひらがなの配分ではひらがな多め。すべての漢字には振り仮名が振ってあるので、賢い子なら小学校低学年からでも読めます。もっと小さな子でも読み聞かせなら大丈夫。
でも、とにかくゆかいで楽しくて、愛嬌がある。垂石先生の挿絵も表情豊かで生き生きとしています。
こういうドタバタコメディは、低学年のほうが楽しめますから、小学校低学年からチャレンジしてみるのもいいかもしれません。
「ぞくぞく村」シリーズは、一話完結。それぞれの村の住人が主人公のお話なので、どのお話から読んでも楽しめます。
この秋、朝のテレビドラマでも空を飛ぶ女の子のお話がはじまったようですし、魔女オバタンの空飛ぶ雄姿を親子で楽しんでみてはいかがでしょう。
読み聞かせもおすすめです!
繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)
ネガティブな要素はありません。底抜けに明るくゆかいなオカルトコメディです。ふつうの人間は登場しません。みんな、どこか抜けている、おばけやモンスターばかり。
でも、オバタンは頑張り屋なのがとてもいいところなのです。
読後はお月さまみたいなクッキーとお茶でひと休みしましょう。
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