【クレストマンシー】魔法使いの一族たちのひそかな攻防。大魔法使いのファンタジー【キャットと魔法の卵】【小学校高学年以上】

2022年10月26日

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キャットと魔法の卵 大魔法使いクレストマンシーシリーズ  ダイアナ・ウィン・ジョーンズ/作 田中薫子/訳 佐竹美保/絵 徳間書店

クレストマンシー城で魔法を学ぶことになったキャットは、ある日城下でマリアンと言う女の子に出会う。マリアンは魔法を使う一族で、祖母はもうひとつの一族と対立しているらしいのだ。大魔法使いの城下でひそかに繰り広げられる魔法の抗争。さて、どう解決する?

この本のイメージ キャット大活躍☆☆☆☆☆ 次世代の大魔法使いたち☆☆☆☆☆ 魔法一族の抗争☆☆☆☆☆

キャットと魔法の卵 大魔法使いクレストマンシーシリーズ  ダイアナ・ウィン・ジョーンズ/作 田中薫子/訳 佐竹美保/絵 徳間書店

<ダイアナ・ウィン・ジョーンズ>
1934年イギリス生まれ。オックスフォード大学セントアンズ校でトールキンに師事。イギリスを代表するファンタジー作家。作品に「魔法使いハウルと火の悪魔」など。 

<田中薫子>
田中薫子(たなか かおるこ1965年~)は科学書・児童書の翻訳者。幼少期をニューヨークとシドニーで過ごす。慶應義塾大学理工学部物理学科を卒業。ソニーを経て93年よりフリー翻訳者。科学書としては「ザ・サイエンス・ヴィジュアルシリーズ」(東京書籍)の叢書の翻訳者。児童書の分野では、宮崎駿監督の映画「ハウルの動く城」の原作者ダイアナ・ウィン・ジョーンズの魔法ファンタジーシリーズの翻訳者として有名

 

キャットと魔法の卵 大魔法使いクレストマンシーシリーズ  ダイアナ・ウィン・ジョーンズ/作 田中薫子/訳 佐竹美保/絵 徳間書店

 大魔法使いクレストマンシーシリーズ六作目のご案内です。原題はThe Pinhoe Egg.イギリスでの初版は2006年。日本での初版は2009年です。

 「魔女と暮らせば」で、姉のグウェンドリンと一緒にクレストマンシー城で暮らすことになったキャットのその後の物語なので、お話を理解するためには最低でも「魔女と暮らせば」を読んでおく必要があります。

 「魔女と暮らせば」のレビューはこちら

 このシリーズは「大魔法使いクレストマンシー」と呼ばれる魔法使いが、魔法にまつわる様々な事件を解決するお話。クレストマンシーとは、魔法が正しく使われているかどうかを管理する役職名で、このシリーズでのクレストマンシーはクリストファー・チャントです。

 世界には実は魔法があふれていて、魔法はしかるべき教育機関で学び国家資格をとるものである、という世界観はアーシュラ・K・ル・グウィンが「ゲド戦記」ではじめて描いたものです。

 これはダイアナ・ウィン・ジョーンズの「クレストマンシーシリーズ」やJ.K.ローリングの「ハリー・ポッターシリーズ」など、多くのファンタジーに影響を与えました。

 「大魔法使い」と言う言葉は、原書ではenchanterと書かれているようです。ジョーンズの造語なのかもしれません。ふつうの魔法使いとは魔法の使い方が違うとされていて、魔女や魔術師よりもはるかに強力な魔法を扱えるようです。

 今回のお話は……

 クレストマンシー城で生活しながら魔法の修行をするキャット。城の生活にもだんだん慣れ、城の外へ外出する余裕もでてきました。

 そんなある日、キャットはマリアンという女の子と出会います。

 マリアンは、城下町で暮らす魔法の一族の娘でした。その魔法の一族は、もう一つの魔法一族とひそかに抗争をしているらしいのです。

 クレストマンシーは間違った魔法の使い方をする人たちを取り締まるのが仕事。だから、彼らはクレストマンシーにばれるのを恐れて、隠れて争っていたのでした。

 しかし、互いの抗争はどんどんエスカレートして……

 ……と、いうのがあらすじ。

 キャットとマリアンのダブル主人公でふたつの視点から物語が進行します。ジョーンズはこのような手法が得意で、大量にちりばめられた伏線が最後に綺麗にひとつにまとまってゆく気持良さがあります。

 おどろくようなところに重要伏線が潜んでいることがあるため、ストーリーを説明しているだけでもネタバレになってしまうことがあり、説明が難しい小説ですが、まあ、読んでみてください。面白いから。

 妙にド派手なファッションで(しかしおしゃれで似合っている)でもちょっと抜けたところのあるクレストマンシー、ふつうの奥様のふりをしているのに実は強力な大魔法使いのミリー様、強いのにまったく強そうに見えないキャットなど、魅力的なキャラクターばかり。

 キャット、マリアン、クレストマンシーの子どものロジャーとジュリア、ロジャーの友だちになったジョーなど、次世代の子どもたちの交流もあり、これから彼らの冒険物語をたくさん書くつもりだったのだろうなと思うと、亡くなられたことが惜しまれます。

 キャラクターの数がかなり多く、また文章量もボリュームがあります。今回のお話のキャラ数は特に多いので、メモをとりながら読むとわかりやすいでしょう。

 複雑な構成も含めて楽しむお話なので、たっぷり時間をとれるときに。雰囲気のいい英国風紅茶専門店などで読むとクレストマンシー城にいる気分で読めるかも。秋にぴったりの読みごたえのあるファンタジーです。

 不思議な世界や魔法が大好きな方、「ハウルの動く城」でジョーンズに興味を持たれた方、「シンデレラ」を読んだときにシンデレラじゃなくて魔法使いになりたいと思ったお子さまには、おすすめです。

 でもまずは「魔女と暮らせば」を読んでから。
 読書の秋、クレストマンシーワールドにはまってみてくださいね。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素はとくにありません。怪我をするシーンなどはあるのですが、注意深く書かれています。

 本格派の魔法ファンタジーです。魅力的なキャラクターだけでなく、魔法の体系や世界観がしっかりとしており、ストーリーと世界観を没入して楽しみたい方向けです。

 読後は、濃くいれたミルクティーとビスケットが食べたくなるはず。ご用意を。

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