【きつねのスケート】湖をこえてきつねがスケートでやってくる……。愛されるロングセラー、のねずみときつねの、奇妙な友情物語。【小学校低学年以上】

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きつねのスケート  ゆもとかずみ/文 ほりかわりまこ/絵 徳間書店

秋になったばかりのころ、みずうみのほとりの小さな森に、若いきつねがやってきました。やんちゃなきつねは小さなのねずみと奇妙な友情を築きます。「この森はたいくつだ」と言うきつねに、のねずみは「あと二かい、お月さまがまんまるになったら、みずうみのむこうにいけるよ」と言いますが……

この本のイメージ 動物ファンタジー☆☆☆☆☆ きつねとねずみ☆☆☆☆☆ ツンデレ☆☆☆☆☆

きつねのスケート  ゆもとかずみ/文 ほりかわりまこ/絵 徳間書店

<ゆもとかずみ>
1959年東京都生まれ。東京音楽大学作曲家卒。小説「夏の庭 The Friends」で児童文学者協会新人賞、児童文芸賞を受賞。同作品は十カ国以上で翻訳され、ボストン・グローブ=ホーン・ブック賞、ミルドレッド・バチェルダー賞などを受賞。その他に、小説「ポプラの秋」、童話「くまって、いいにおい」(絵:ほりかわりまこ)、絵本「おとうさんは、いま」(絵:ささめやゆき)、「あなたがおとなになったとき」(絵:はたこうしろう)など。絵本の翻訳も手がける。

<ほりかわりまこ>
1965年東京生まれ。東京藝術大学大学院終了。絵画による個展で作品を発表するいっぽう、子どもの本に絵を描く。絵本も多数制作 。今昔物語絵本シリーズ「大納言とおどるきのこ」「童のおつかい」など(偕成社)、「おへやだいぼうけん」(教育画劇)、「げんくんのまちのおみせやさん」(徳間書店)、「くまちゃんとおじさん、かわをゆく」(ハッピーオウル社)、「氷河鼠の毛皮」(三起商工)、挿絵に「立原道造」(あすなろ書房)ほか。

きつねのスケート  ゆもとかずみ/文 ほりかわりまこ/絵 徳間書店

<この季節おなじみのスケートトーク。不要な方はスクロールしてね>

 先週末は、フィギュアスケートグランプリシリーズ日本大会、NHK杯でした。会場は北海道は真駒内です。
出場した選手の方々は、おいしい海鮮丼など楽しまれましたか?北海道はパフェもおいしいですよ!

 さてさて、今回のNHK杯、なんでこんなに強豪が揃ってしまったのだと言う熾烈な激突になってしまいました。グランプリシリーズはポイント制で、1位から順番にポイントをもらえて、二戦戦ったあとの合計数で上から6人がグランプリファイナルに進みます。なので、強い選手はなるべくばらけたほうがよいのですが……どうしてこうなった……。

 まずは、宇野昌磨選手、優勝おめでとうございます! さすがはチャンピオン、強くなりました……。 完璧とはいえない内容だったのですが、ミスをしても別の要素でカバーしきれてしまうので、とにかく強いのです。それぞれのエレメンツが美しいだけでなく、表現力も増してきています。ショートもフリーも、完成形が楽しみです!

 山本草太選手、銀メダルおめでとうございます!ショートすばらしかった!そして、フリーの最終滑走、お疲れ様でした。この緊張感のなかで踏ん張りました。山本選手もどんどん強くなっています。個人的には、エキシが「ポエタ」だったのが嬉しい!背中の線が美しいのでフラメンコのポーズがビシッと決まって最高でした。

 友野一希4位おめでとうございます。悔しい結果かもしれませんが、すばらしかったです。とくにショートのステップ、一歩一歩でくるくると表情がかわるんですよ。こんなことできる人、友野選手しかいない。見ているだけで幸せ気分になって、気持ちが明るくなる演技ができる人です。コツコツと実績を積み重ね、実力をつけてきた友野選手。スポンサー、見つかりますように。

 女子は、坂本花織選手、銀メダルおめでとうございます。本人的には悔しいとは思うのですが、安定してアベレージをとれるのは頼もしい。パワフルでかっこいい演技で、坂本選手を見ているといつも元気をもらえます。ファイナルでは、緊張しすぎないでぶちかましてください。

 住吉りをん選手、3位おめでとうございます。手足がすらっと長くてほっそりしていて日本人離れしたプロポーションの選手です。フリーの四回転は残念でしたが、あとちょっとという感じでした。若いのに大人っぽくて、きりっとした美しさがあります。これからも応援しています。

 渡辺倫果選手、おつかれさまでした。基本的なお顔立ちが「笑顔」の形になっている魅力的な人です。きりりとしたショートもかっこいいし、ふんわりとしたフリーも素敵。今回はショート、フリーでひとつずつジャンプが抜けてしまいましたが、それなのにこの得点はすごい。フリーではかなり長い間「Rinka Watanabe」の名前がいちばん上にあって、世界にアピールできたんじゃないかと思います。

 アイスダンスは、日本のレジェンドカップル、「かなだい」こと村元高橋組、おつかれさまでした。村元選手が肩にテーピングをしていて、たぶん本調子ではなかったのでしょうけれども、素敵でした。とくに、「オペラ座の怪人」は物語を感じるプログラム。会場中を巻き込むオーラが別格。技術的にはさらにのびしろがあります。

 小松原組も、キレキレでスピード感があって、素敵でした。息がぴったりのふたり。全日本も楽しみにしています。

 海外選手を少し。
 アイスダンスフィンランド代表、折原裕香/ユホ・ピリネン組、NHK杯出場おめでとうございます。折原選手、アイスダンスを極めるために海を越えてゆく勇気がすばらしい。これからも、応援します。

 アイスダンス中国の「ワンリウ」ことシーユエ・ワン/シンユー・リウ組、日本へようこそ。今回のグランプリシリーズは中国選手がほとんど出場していないので、来てくれてうれしい。羽生選手との心温まる交流でいつもほっこりさせてくれていた二人です。いつも羽生選手に親切にしてくれてありがとう。(もはや親戚のオバチャン気分)
 厳しい練習の成果を見せてくれました。キレキレでかっこよかった! 札幌でおいしいものたくさん食べてくださいね。

 そして、ペアの「りくりゅう」こと三浦璃来/木原龍一組、優勝おめでとうございます! 
 ひええ、日本人のペアがNHK杯優勝ですよ!グランプリファイナル決定ですよ! うわわ、川原泉先生、日本はやりましたよ!(←誰に向かって叫んでる定期)
 このふたりの演技には、いつも言葉にならない多幸感があふれ、見ているだけで柔らかな気持ちになります。日々熟練して技術的には進化しているのに、瑞々しい魅力にあふれているペアです。まだ見たことがない方は、ぜひ、グランプリファイナルや全日本でふたりの演技を見てみてくださいね。本当におめでとうございます。

きつねのスケート  ゆもとかずみ/文 ほりかわりまこ/絵 徳間書店

<ここからが本題。本日の本紹介>

 本日ご紹介するのは、ゆもとかずみ先生の「きつねのスケート」。1998年初版の、愛されるロングセラー児童小説です。

 ストーリーは……

 秋になったばかりのころ、みずうみのほとりの小さな森に、若いきつねがやってきました。

 ぼろぼろの行き倒れだったきつねを、森の動物たちは介抱して助けてあげますが、元気になったきつねは恩返しところかいたずらばかり。

 やんちゃなきつねは、大きな湖の向こうの深い森へ行ってみたくなります。けれど、湖の水は冷たくて深くて、きつねの力では渡れません。

 そんなとき、きつねは、のねずみに出会います。
 のねずみは、「あと二かい、お月さまがまんまるになったら、みずうみのむこうにいけるよ」ときつねに教えます。

 本当なのか? 信じられないきつねは、のねずみをつかまえて……

 そして、奇妙なふたりの友情がはじまるのでした……

 ……と、いうのがあらすじ。

 このきつねがねえ、ろくでもないいたずらばかりして、まったく良い子じゃないんです。
 それなのに、なんだかんだと言って森の動物たちは、彼のことを心配するし、のねずみも仲良くしようとします。

 きつねは、どうしても湖の向こうに行きたくて行きたくて、泳いだりいかだを作ったりするのですが、自力でわたることはできません。あたまは湖のむこうにわたることでいっぱいです。

 こんなにたくさんの人に親切にされているのに、こんなにねずみはきつねのことが大好きなのに、どうしてきつねは、まだ行ったこともない、なにがあるかわからない湖のむこうのことばかり考えているのだろうか……

 そんな不満がちょっぴり浮かんできたりもします。
 けれど、きつねは、友情を忘れたわけではなかったのです。

 クライマックスは、思わず「うわあ、そう来たか!」と声に出してしまうくらい感動的。
 優しさや好意を表現することが苦手なきつねの精一杯にじーんと来てしまいます。

 人の性格、性質はひとそれぞれ。違うからこそ、出会うと面白いし、一緒だと楽しい。
 伝わっていないように見える優しさも、実は深いところでちゃんと伝わっています。

 同じような人たちが集い、同じようなことをして「同じ」を共有することで仲良くするのもいいけれど、こんなふうにまったく違った者どうしが、互いに相手に「自分のふつう」を押し付けることなく、それぞれの気質や価値観、生き方を尊重し、共にいることを楽しむ、そんな関係になれたら素敵ですね。

 文章は平易で読みやすく、ひらがなが多め。漢字も使っていますが、すべての漢字にふりがながふってある「総ルビ」です。だから、50音が読めれば、コツコツ読めるので大丈夫。
 けれど、これは大人が読んでも心が癒される本です。ぜひ、読み聞かせしてあげてください。

 まったくちがう者同士が、それぞれの形で相手を思いやりあう、友情の動物ファンタジー。
 おおらかで、やさしくて、あたたかいお話です。
 だんだん寒くなるこの季節、おうち時間に、ひとりで、親子で、ぜひどうぞ。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素はありません。やんちゃなきつねが懲らしめられるお話かと思いきや、気質や性格、価値観の違うもの同士が、不器用ながら友情を育む、多様性のお話でした。
 やんちゃなきつねくんのような子にも、大人しいのねずみくんのような子にもおすすめです。

 読後はレモン入りソーセージとチーズで、ひと休み。

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