【家守神】あなたは欲しい?妖怪が見える力。怖くて楽しい、オカルトアドベンチャー第三巻【金色の爪と七不思議】【小学校高学年以上】
家守神たちのすがたが見える拓の生活もずいぶん落ち着いてきた。ところが、今度は学校で怪奇事件が。学校七不思議を解明するため、拓たちは「サカショー七不思議調査隊」を結成するが……
この本のイメージ オカルトファンタジー☆☆☆☆☆ 学校七不思議☆☆☆☆☆ 友情☆☆☆☆☆
家守神 いえもりがみ 3 金色の爪と七不思議 おおぎやなぎちか/作 トミイマサコ/絵 フレーベル館
<おおぎやなぎちか>
秋田県生まれ。日本児童文学者協会、日本児童文芸家協会、全国児童文学同人誌連絡会「季節風」会員。「しゅるしゅるぱん」(福音館書店)で第45回児童文芸新人賞、「オオカミのお札」シリーズ(くもん出版)で第42回日本児童文芸家協会賞受賞。児童書の創作に「どこどこ山はどこにある」(フレーベル館)、「ぼくらは森で生まれかわった」(あかね書房)など多数。
<トミイマサコ>
埼玉県生まれ。イラストレーター。装画を手がけた児童書に「まぼろしの薬売り」(楠 章子・作/あかね書房)、「わたしのチョコレートフレンズ」(嘉成晴香・作/朝日学生新聞社)など。
おおぎやなぎちか先生の「家守神」シリーズ第3巻。初版は2022年11月です。
お話は、一話完結の形式をとってはいますが、完全に続いているので、まずは第1巻「妖しいやつらのひそむ家」からお読みください。
「家守神 妖しいやつらのひそむ家」のレビューはこちら↓
今回のお話は……
佐伯家の騒動が一段落し、平和を満喫していた拓。
しかし、今度は学校で謎の怪奇現象が。
前田さんの机に不思議な爪あとのような傷ができ、風花ちゃんに疑いがかかってしまったのだ。
平井君は拓たちと「サカショー七不思議調査隊」を結成し、爪あとの謎を解こうとする。金魚ちゃんたち家守神も参加だ。
そんなとき、担任の楠先生が佐伯家に家庭訪問に訪れ……
……と、いうのがあらすじ。
今回は、拓の友だち、雨宮風花の成長が描かれます。
妖怪が大好きな風花ちゃん。眼鏡をはずして、精神を集中すると、なんとなく「妖怪の気配」を感じ取るとることはできますが、拓のように「見る」ことはできません。
風花ちゃんは妖怪が見たくて見たくてしかたがないため、なんとか見える力を手に入れられないかと四苦八苦するのですが……
この複雑な思い、霊感や超能力でなくても身近な問題としてありがちなこと。
拓は、「佐伯家の子」という立場と生まれつきの繊細さなどから、妖怪を見る力を身につけたようです。別に努力して得たものでもなければ、欲しくて得た力でもありません。
風花ちゃんは、妖怪が大好きで、見たくて見たくてしょうがない。妖怪のことは誰よりも調べているし、本人的にはできることはなんでもしている。妖怪を見るために努力をしろというなら何でもできる、という子です。
でも、妖怪が見えるのは、別に見たいと願ったわけでもない拓で、どうしても見たいと願う風花ちゃんには見えません。
自分の力ではどうすることもできない現実に、風花ちゃんはうちのめされて、暗い考えになってしまいます。
子ども時代には「努力すればどんなことでも成し遂げられる」と言う努力神話がありますが、現実はそこまで単純ではないのが残酷なところです。
お金も才能も環境も、すごく願って努力した人だけが手に入る、というわけでもなく、努力もしていないし本人も望んでいないけれど手に入ってしまうものもある。
どこかの誰かが喉から手が出るほどほしいものでも、持っている人からしたら、とくに欲しくもなんともないというものもある。
でも、自分が欲しいものを楽々手にしている人がなんの苦しみもないかと言えば、そこには別の、他人には想像もつかない苦しみもあるわけで……
本当は、長い人生、努力をして無駄なわけでもないし、いつしかつじつまがあってくるものなのだけど、苦しいときはそんなふうには考えられないもの。
風花ちゃんは、一度は苦しみますが、がんばって心の穴から抜け出します。
今回は、クラスメイトの前田さんという新キャラも登場。学校にはミニョンとフォルトという新しい仲間が。どんな仲間なのかは読んでのお楽しみ。
字はほどよい大きさで読みやすく、ごく簡単な漢字以外は振り仮名がふってあります。総ルビではありませんが、非常に読みやすく、本来は小学校高学年以上向けだとは思いますが、賢い子なら中学年から読めると思います。
だんだん仲間が増えてゆく、「家守神」シリーズ。
これから、どんな事件が待ち受けているのでしょうか。続きが楽しみです。
繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)
ネガティブな要素はありません。今回は、人間の心の負の部分とそれを乗り越える強さを描いているので、HSPやHSCの方のほうがより多くのメッセージを読み取れるでしょう。
読後はおいしい和菓子と緑茶でティータイムを。
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