【やくやもしおの百人一首】百人一首のおふだが時空を超える!キュートでかわいい和ファンタジー!【小学校高学年以上】

2023年1月8日

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やくやもしおの百人一首  久保田香里/作 坂口友佳子/画 くもん出版

ある日、古い百人一首の箱から、「来ぬ人をまつほの浦の夕なぎに」のふだが消えてしまった。対となる「やくやもしおの身もこがれつつ」のふだが、「来ぬ人を」のもとへ行きたいと神様にお祈りすると、なんと貴族の女の子の姿になって、百人一首成立の時代にタイムスリップ! 奇想天外でキュートなファンタジー。

この本のイメージ 和ファンタジー☆☆☆☆☆ 百人一首☆☆☆☆☆ 歴史ミステリー☆☆☆☆☆

やくやもしおの百人一首  久保田香里/作 坂口友佳子/画 くもん出版

<久保田香里>
岐阜県生まれ。2004年、「青き竜の伝説」(岩崎書店)で第3回ジュニア冒険小説大賞を受賞しデビュー。「氷石」(くもん出版)で第38回児童文芸新人賞、「きつねの橋」(偕成社)で第67回産経児童出版文化賞・JR賞を受賞。他の作品に「きつねの橋 巻の二 うたう鬼」(偕成社)、「緑瑠璃の鞠」(岩崎書店)、「駅鈴」「もえぎ草子」(くもん出版)、「千に染める古の色」(アリス館)など。

<坂口友佳子>
1989年大阪府生まれ。東京在住。京都造形芸術大学キャラクターデザイン学科卒業。書籍、雑誌、広告などでイラストレーターとして活躍。絵本に「どこどこけだまちゃん」(ニコモ)、児童書の挿画に「トラからぬすんだ物語」(評論社)、「ガラスの犬 ボーム童話集」 (岩波書店)、「ひみつの地下図書館」シリーズ(ほるぷ出版)など。

 あけましておめでとうございます!
 2019年の年末からはじめたこのブログ、四年目となりました。

 あいかわらず試行錯誤、四苦八苦しながら続けている毎日です。
 でも、素敵な本に出会うのはうきうきするし、感想を書くのは楽しい。そんなわけで、おかげさまで飽きることもなく楽しく続けられています。

 今年も、たくさんの素敵な本と出会えますように。

やくやもしおの百人一首  久保田香里/作 坂口友佳子/画 くもん出版

 さて、今年一冊目の本は、「きつねの橋」の久保田香里先生の「やくやもしおの百人一首」です。初版は2022年11月。
 これは「百人一首のふだが、行方不明の対になったふだを探して時空を超えて藤原定家に会いにゆくお話」

 基本設定を読んだとき、「まさかそのままではないだろう。何かの比喩なのでは」と思ったのですが、なんとなんと、「そのまま」でした!

 お話は……

 三年前に亡くなられた佐藤夫妻の持ち物だった、古い百人一首。
 今は、村の資料館に保管されていて、学芸員の凪さんが展覧会を開こうと意気込んでいた。

 ところが、二百枚揃っていたはずの百人一首のふだのなかから「こぬ人をまつほの浦の夕なぎに」のふだが忽然と消えてしまったのです。

 慌てたのは凪さんだけでなく、「こぬ人を」と凪さんの仕事を心配するほかのふだたち。「こぬ人を」と対になる「やくやもしほの身もこがれつつ」は、祈りの力で「こぬ人を」のもとへと飛び立ちます。
 時空を超えて……八百年前の日本へ。

 鎌倉時代に飛んだ「やくやもしほ」のふだは、なんと女の子のすがたになっていました!
 百人一首の生みの親、藤原定家(ふじわらのていか)と偶然出会った彼女は「もしお」と言う名をもらい、定家の孫、為氏と親しくなります。

 為氏とともに、「こぬ人を」を探すうち、もしおはその時代の人々と交流し、やがて……

 ……と言うのがあらすじ。

 ……久保田先生、天才過ぎる。これ、2022年にわたしが読んだ本のなかで、ダントツの奇想天外大賞です。
 いや、今日日、五教科の教科書が人間になるんだから、百人一首のふだが人間になるのくらいで驚いていてはいけないのかも。
 
 でも、ちゃんとつじつまが合った歴史ファンタジーになっているのが、これがまたお見事。
 このトリッキーさと、緻密な構成の塩梅が絶妙なのです。

 主人公のもしおちゃんは、元気はつらつ、素直でまっすぐな女の子。(百人一首のふだだけど)
 勝手のわからない鎌倉時代の風習にもすぐなじんでしまいます。

 好奇心旺盛で知りたがりなので、わからないことを定家さんの孫の為氏(ためうじ)くんに素直に質問し、教えてもらいながら生活しているという流れなので、物語を読みながら読者がもしおちゃんと一緒に百人一首の由来や、鎌倉時代について、自然と詳しく知ることができるつくりになっています。

 この時代といえば、去年の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の舞台だった時代。承久の乱や隠岐の院など、聞きなれた言葉や名前が登場するので、親しみがあるかもしれません。

 読み進めてゆくと、当時の人々が、和歌や書物、絵などをどれだけ大切にしていたかもわかってきます。

 やがて、もしおちゃんは「こぬ人を」を見つけるのですが、「こぬ人を」には百人一首の持ち主だった佐藤信夫さんの想いを継いで願いをかなえようと時を超えてきた、すぐには帰れないと言われ……

 はてさて、もしおちゃんたちはどうなるのでしょうか。

 正直に言うと、予想もつかない展開でラストへとなだれ込んでゆきます。
 これがまた最高に面白い。

 ふつうのファンタジーなら「そうはならないでしょう」という展開ですが、そもそもふつうのファンタジーでは百人一首のふだが人間にはならないですからね。

 百人一首の由来だけでなく、その時代の人々の謎やミステリーもスパイスとしてふりかけてあり、歴史ミステリーが好きな人にはたまらないはず。

 児童文学として子どもが読むのはもちろん、大人が読んでも楽しめる歴史ファンタジーです。

 これを読んで百人一首をすれば「ああ、このふだだ」とより楽しめるでしょうし、お正月に百人一首で遊んでから読んでも百人一首の由来を知れて面白いことまちがいなし!

 お正月にぴったりの本です。
 冬休みのおうち時間に、親子で読んでみてはいかがでしょう。
 読後は「鎌倉殿」を見たり、百人一首のふだを読んで楽しむのもいいですね。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素はまったくありません。もしおちゃんの性格が明るくてさっぱりしていて、でも一生懸命でかわいらしい。友人の薫さんとの友情も熱いです。
 読んでいるうちに、自然と歴史や百人一首に詳しくなるように書かれており、歴史を知るのが楽しくなります。

 読後は和菓子でひとやすみ。
 作中に登場する「ふずく」は、この本につくり方が掲載されているようです。

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