【バタシー城の悪者たち】架空の世界のイギリスの少年の大冒険。色あせない名作。「オオカミ年代記」シリーズ第2巻【小学校中学年以上】

2024年4月5日

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バタシー城の悪者たち ジェーン・エイキン/作 こだまともこ/訳 冨山房

舞台は架空の時代のイギリス。「ウィロビー・チェースのオオカミ」のその後、孤児のサイモンは、医師のフィールド先生に誘われてロンドンに絵を学びに来ました。ところが、訪ねてみればフィールド先生の姿はなく、サイモンは世のなかを転覆させる大きな陰謀に巻き込まれてしまいます……

この本のイメージ 冒険☆☆☆☆☆ 陰謀☆☆☆☆☆ ハッピーエンド☆☆☆☆☆

バタシー城の悪者たち ジェーン・エイキン/作 こだまともこ/訳 冨山房

<ジェーン・エイキン>
1924‐2004。アメリカの詩人コンラッド・エイキンの娘として、イギリス、サセックスのライで生まれる。5歳のころから物語や詩をノートに書きつけ、十代の後半から作品を雑誌などに発表しはじめる。若くして夫を亡くしたのちに、本格的な作家活動に入る。作品は児童文学だけではなく、大人向きのミステリー、詩、戯曲など多岐にわたり、生涯で約100点の本を出版した。1969年「ささやき山の秘密」でガーディアン賞を受賞

<こだまともこ>
東京生まれ。本名・小玉知子、旧姓・相磯。1964年早稲田大学文学部英文科卒業後、文化出版局に勤務。1967年退社し、翻訳家となる。2008年日本国際児童図書評議会賞受賞。英米児童文学の翻訳のほか、自身で創作もおこなう。

 お正月は読書をしてすごそう、と心にきめたものの、あれこれと忙しく自分が思い描いたような、本を積み上げて思う存分読むと言うようなお正月にはなりませんでした。

 だけど、お正月なんだもの、いちばん好きで、今はまってる本を読もう、と選んだのはこれ。「ウィロビー・チェースのオオカミ」でファンになったジョーン・エイキンです。

 「バタシー城の悪者たち」の原題はBlack Hearts in Battersea.イギリスでの初版は1964年。日本での初版は大橋善恵訳 冨山房 1976年、こだまともこ訳 が2011年に出版されています。

 これは「ウィロビー・チェースのオオカミ」を第1巻とする「オオカミ年代記」シリーズの第2巻で、第1巻の主役ボニーとシルヴィアは登場しませんが、このふたりを助けてくれた勇敢な少年サイモンが主人公として登場します。
 日本ではこの「バタシー城の悪者たち」の次の巻である「ナンタケットの夜鳥」までが翻訳版入手可能で、その後の「ささやき山の秘密」「ぬすまれた湖」は絶版、Dangerous Gamesは未訳、「かっこうの木」は絶版となっています。その後のお話、「ダイドーと父ちゃん」「少女イス 地下の国へ」「コールド・ショルダー通りのなぞ」は翻訳版がまだ入手可能のようです。

 「ウィロビー・チェースのオオカミ」が恐ろしく面白かったので、クオリティにまったくの疑いなく手にしましたが、やはり面白かった! 絶版や未訳などで入手困難なシリーズですが、最後まで全部読んでみたいと思っています。
 このブログは個人のサイトなので、新しい本も古い本も、有名な本も超有名とはいえない本でも、とにかく自分が読んで好きだなと思った本を推してゆきます。そこのところは、完全に独断と偏見です。好みなのです。

 「オオカミ年代記」のシリーズは、どの本をどこから読んでもわかるように書かれていますが、サイモンとフィールド先生の出会いやこの世界の「イギリス」の設定が詳しく書かれているのでまずは「ウィロビー・チェースのオオカミ」からお読みになったほうがわかりやすいでしょう。

 「ウィロビー・チェースのオオカミ」のレビューはこちら

 さて、今回の「バタシー城の悪者たち」のストーリーは……

 前作でボニーとシルヴィアを助けて大活躍したサイモン。彼は、医師フィールド先生に気に入られ、フィールド先生の部屋に下宿して美術学校で絵の勉強をするためにロンドンにやってきました。

 ところが、ロンドンのローズ横丁まで来たものの、フィールド先生はいません。近所の人もフィールド先生なんて知らないといいます。

 きつねにつままれたような気持ちで、行方不明のフィールド先生を探しつつ、リヴィエール美術学校に通うことになったサイモンですが、彼の知らないうちに恐ろしい陰謀が計画中だったのです。

 何も知らないサイモンは、世の中を転覆させようとしている悪者たちの陰謀に巻き込まれてしまいます。
 はたして、サイモンの運命は?

 ……と、いうのがあらすじ。

 フィールド先生の行方を追う謎解きから始まり、バタシー城の秘密、幼馴染のソフィーとの関係、サイモンの出生の秘密、そしてヒロインとして登場する野生児のようなダイドーと、わくわくする展開と魅力的なキャラクターたち。
 児童文学はこうでなくちゃ! という正統派の展開なのに、複雑に絡み合った伏線と、予想を裏切るラストのどんでん返しなど、ありきたりではない面白さ。

 時を越えて愛される名作とはこういうものか……とうならされます。
 現在絶版のものは復刊してほしいですし、未訳のものはぜひとも翻訳してほしい、そして、できるだけ多くの方々にお読みいただきたい名作です。

 ジョーン・エイキンは岩波少年文庫のほうでも何作か翻訳されており、そちらもこれから読むつもり。ああ、この作家、子どもの頃に知っていたら! いまだと入手困難な本が多すぎる……!

 というわけで、出版社さま、お願いします!(と、テレパシー)

 「ウィロビー・チェースのオオカミ」と「バタシー城の悪者たち」はまだまだ入手できますので、ぜひ。また、もしかしたら絶版になった旧訳版は、古書店や図書館にはあるかもしれません。興味をもたれた方はお探しになってみてくださいね。

 次巻はストーリー上は「ナンタケットの夜鳥」日本での出版順だと「ダイドーと父ちゃん」になるようです。どちらも読むのが楽しみです。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 アクションシーンはありますし、かなり荒唐無稽な展開はありますが、ネガティブな要素はほとんどありません。流血シーンなども気をつけて書かれており、ありません。
 心躍る冒険物語です。

 謎また謎、冒険また冒険ですが、正統派の勧善懲悪のハッピーエンドで、読後感はさわやかです。

 読後は、濃い紅茶とバターたっぷりのケーキでティータイムを。

 

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Posted by kagurat