【火狩りの王】ついにアニメ化! 終末後の混沌に光を灯す、ダークファンタジー第4巻。完結編【星ノ火】【小学校高学年以上】

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火狩りの王 <四>星ノ火   日向理恵子/作 山田章博/絵 ほるぷ出版

雷によって破壊された首都、「蜘蛛」「神族」「人間」の混乱する戦いのなか、灯子たちはついに神宮へとたどりつく。「姫神」とは、首都の意味とは? 「千年彗星」の選択は? 人類はどこへ流れ着くのか、怒涛のダークファンタジーついに完結。

この本のイメージ 緻密な世界設定☆☆☆☆☆ ダークファンタジー☆☆☆☆☆ 世界の謎☆☆☆☆☆

火狩りの王 <四>星ノ火  日向理恵子/作 山田章博/絵 ほるぷ出版

<日向理恵子>
児童文学作家。主な作品に「雨ふる本屋」シリーズ、「魔法の庭へ」(いずれも童心社)、「日曜日の王国」(PHP研究所)など。日本児童文学者協会員。

<山田章博>
漫画家、イラストレーター。主な漫画に「ロードス島戦記~ファリスの聖女~」、挿絵に「十二国記」シリーズ(小野不由美著、新潮社)、「ドリームバスター」シリーズ(宮部みゆき著、徳間書店)など、作品多数。第27回星雲賞(アート部門)受賞。

火狩りの王 <四>星ノ火   日向理恵子/作 山田章博/絵 ほるぷ出版

 ついにWOWWOWでアニメ化された日向理恵子先生のダークファンタジー「火狩りの王」第4巻。初版は2020年。角川文庫から文庫版も発売されはじめました。

 非常に緻密な世界観で描かれた、過酷なファンタジーです。バイオレンスシーンなども真正面から描かれており、容赦なく血が流れ、人が死にます。

 ストーリーは……

 最終戦争後の世界。人体発火病原体に犯された人類は、「ほんものの火」が少しでも傍にあると燃えてしまう体質に変貌してしまっていた。この世界で、「火」として人類が扱えるのは、黒い森に巣食う「炎魔」と呼ばれる獣を倒したときに体内から取れる金色の液体のみ。

 犬を連れ、炎魔を倒して火を採集する人々は「火狩り」と呼ばれた。

 「火狩り」たちには、ある噂がある。それは、
 「虚空を彷徨ったとされる人工の星・千年彗星(揺るる火)を狩った火狩りは、『火狩りの王』と呼ばれるであろう」……

 「蜘蛛」たちの侵攻を皮切りに、大混乱に陥る首都。混乱と破壊のなか、灯子と煌四。
 やがて彼らは、神宮へとたどりつき、神族と姫神「手揺姫」の秘密を知るのだった。

 はたして「火狩りの王」は誰なのか? そして、この世界の運命は?

 ……と、言うのが今回のあらすじ。

 前世代の大人たちが破壊した世界で、あどけない子どもたちが自分たちなりにせいいっぱい生きる、そのひたむきさが美しい。

 はっきりとした善も悪もなく、悪を倒して問題が解決するわけでもなく、理不尽と悲劇は世界にいくらでもあるなかで、主人を愛するけなげな犬たちと誰かを助けたいと願う純粋な気持ちだけで動く子どもたちが、ただひたすらに前へ前へと進むうちに世界の謎にたどりつきます。

 最初は何もかもにおびえ、火狩りを死なせた自分を責め、流されるように首都に来た灯子。
 しかし、読み進めてゆくうちに、この破壊と混乱の世界に光を灯してくれるのは、灯子のような純粋さなのかもしれないと思えてくるのです。

 灯子は、相手が神でも、人間でも、蜘蛛でも、犬でも、態度がまったくかわらない。
 まっすぐに相手の魂を見て、言葉をかける。
 相手がどんなに強くとも苦しんでいれば心配し、相手がどんなに偉くても傷ついていればいたわる。どんなに小さな好意でも喜び、どんなに小さな恩でもできるかぎり返そうとする。

 彼女の素朴な心こそが、滅びかけた世界の希望なのかもしれません。

 人は、どうしても生きる意味を探し、苦しみを解決しようとし、問題を乗り越えようとするけれど……

 生きている意味なんかなくても、苦しみが解決しなくても、問題を乗り越えられなくても、ただひたすらに命のかぎり生きていれば、それでいいのかもしれません。

 十人の人がいれば十通りの解釈があるだろう物語です。はっきりとした「答」のようなものは提示されていません。しかし、わたしは読めてよかったと思います。

 面白いのですが、かなりヘビーなお話ですので、気力体力のあるときにお読みになることをおすすめします。漢字は多いのですが振り仮名はそれなりにあります。小学校高学年から読めると思います。

 ただし、固有名詞に難しい漢字が多いので、ファンタジーに慣れていない方はメモを取りながら読むとわかりやすいでしょう。様々な種族が入り乱れるので、相関図を書くとわかりやすいかも。

 山田章博先生の美麗な挿絵がふんだんに入っていて、それも魅力です。

 「世界とは何か」「生きるとは何か」などを考え始める年齢になったらおすすめです。簡単に答をくれない物語ですが、灯子と犬たちと共に駆け抜ければ、読み終わったときに必ず心に何かが残るはず。

 さあ、この混沌の世界を共に走り抜けましょう。

 ※この本には電子書籍もあります。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 非常にシビアな世界観の本格ファンタジーで、人も死にますし、暴力・流血シーンもあります。手加減無く真正面から書かれているので、そういうものがダメな人にはおすすめしません。

 「そういうシーンがあるのだな」と身構えていれば読める、と言う方には、名作なのでおすすめします。ただし、読むのに体力気力が必要なので、万全なときに。

 読み終えたら、甘いものを食べて脳に栄養を上げてくださいね。丸くて大きい飴玉がいいかも。

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