【都会のトム&ソーヤ】「究極のゲーム」を目指すコンビ、二人のふつうの学園生活を描く、シリーズ12作目【IN THE ナイト】【小学校高学年以上】
「究極のゲーム」つくりを目指す創也と内人。非日常の日々を送る二人だけど、ふつうの学園生活だってある。今回は、そんな二人の学園生活を覗いてみよう。Are you ready?
この本のイメージ 非日常の日常☆☆☆☆☆ サバイバル☆☆☆☆☆ 学園ドラマ☆☆☆☆☆
都会のトム&ソーヤ 12 IN THE ナイト はやみねかおる/作 にしけいこ/絵 講談社
<はやみね かおる>
日本の男性小説家(1964年4月16日~ )。三重県伊勢市出身。代表作は「都会のトム&ソーヤ」「怪盗クイーンシリーズ」「名探偵夢水清志朗シリーズ」など
はやみねかおる先生のヤングアダルト(ライトノベル)小説、「都会(まち)のトム&ソーヤ」シリーズ12作目です。初版は2015年。
お話は、一応、どこから読んでも面白く読めるようには書かれているのですが、創也と内人の出会いや、栗井英太チームなどの詳しい設定を知ったほうが読みやすいので、第1巻から順番にお読みになったほうがわかりやすいでしょう。
第1巻のレビューはこちら↓
さて、今回のお話は……
「究極のゲーム」を作るためにタッグを組んでいる竜王創也と内藤内人。
いつもは、「非日常」の連続なふたりだけれど、今回はふつうの学園生活を描きます。
栗井英太も参加する、危険な体育祭。サバイバルゲームにも似た、大障害物競走。
文化部たちの生徒会への熾烈な予算交渉。
そして、内人に届いたラブレターの謎。
素敵な「おまけ」もついて、今回はこの三本です。
……と、言うのがあらすじ。
今回の物語にはちょっとしたしかけがあって、ラストに種明かしがあります。
そして、みんな大好き卓也さんのおまけエピソードも。
前回のお話で自転車に乗れた創也でしたが、今回は少しだけ内人が前進したようです。
アウトドアの知識を極限まで教え込まれた究極のサバイバル人間の内人が、現在目指しているのは文筆、創作なんですね。
サバイバルは教えられておぼえたことだけど、創作は内人が心からやりたかったことなのかもしれません。
最初は創也に頼まれて仕方なくはじめたシナリオ作成だけど、内人も楽しそうです。
今回登場するキャラクターは、女の子がとても魅力的。
予算を確保するために、文字通り「できることはすべてやる」山際さんや、お昼寝大好き美月ちゃん。
どちらも、自分の目的のためには全力を尽くすタイプ。
栗井英太の麗亜さんも、チャランポランに見えてきちんと仕事をしているところからも、「都会トム」の女性キャラたちはおおむね努力家です。
努力の方向性と規模が常人離れしている人が多いけど……
わたしは自分の学生時代が、わりと堅苦しくて味気なかった記憶があるので、こんなふうに友だちどうしで何もかもを面白がることが出来たら楽しかっただろうなと思うことがあります。
創也と内人のふたりは、平凡な日常すら冒険にしてしまう力があり、それが独創性というものなのだなと。
「赤毛のアン」のアン・シャーリーは、平凡な日常や身近な困難を想像力の翼を広げて楽しいものにする魔法を知っていました。「少女ポリアンナ」のポリアンナは、辛い出来事を解釈の力で楽しいことにしてしまいます。
児童文学の主人公たちは、「辛いこと」を「辛いこと」のままにはしておかないのです。
創也と内人は、気持ちや解釈で問題を乗り越えることは少ないけれど、知識や推理を使って、または身近なモノの別の使い方を発見・工夫することによって、物理的に問題を解決してゆきます。
ゲームが大好きなふたりは、日常生活をゲームにしてしまう。
もしかしたら、この世界は神様が創ったゲームなのかもしれません。ゲームだとしたら、プレイヤーが楽しむためにあるのだから、どこかに楽しくプレイしてクリアする方法があるのかも。
創也と内人の冒険を読んでいると、そんな気持ちになってきます。
辛いことやたいへんなこと、どうしようもないことが起きても、せいいっぱいの知恵と勇気で、楽しく乗り越えてゆくことができたら……。
まだまだ人生が始まったばかりの若者たちへ、あたたかいエールに満ちた作品です。
繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)
ネガティブな要素はありません。
明るく軽快な冒険小説です。女の子も強いので、男女どちらにもおすすめです。大人が読んでも楽しく、ノスタルジーと和みの要素が必ず入るので、癒されます。
読後は丁寧に淹れたダージリンティーでティータイムを。
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