【ねこと王さま】なにがあっても、ずっと一緒! ねこと王さまのほのぼの友情ストーリー【小学校中学年以上】
ある日、ドラゴンのせいでおしろがもえてしまった王さまは、いちばんのともだちのねことともに町へひっこして小さな家にくらすことになりました。「王さまのおしごと」のほかには何もできなかった王さまでしたが……
この本のイメージ ねこがかわいい☆☆☆☆☆ ほのぼの☆☆☆☆☆ ユートピア☆☆☆☆☆
ねこと王さま ニック・シャラット/作 市田泉/訳 徳間書店
<ニック・シャラット>
英国のイラストレーター。大学卒業後、雑誌のイラストレーションからパッケージデザインまで幅広く活躍。現在は、子どもの本の制作に精力的に取り組む。訳書に、「ちゃんとたべなさい」(ケス・グレイ作/小峰書店)などがある。本書は、シャラットが初めて文章も書いた児童文学作品。
<市田泉>
翻訳家。お茶の水女子大学卒。主な訳書に「ねこはまいにちいそがしい」「銀のらせんをたどれば」(徳間書店)、「ボーンシェイカー」(早川書房)、「翼のある歴史 図書館島異聞」「図書館島」「ずっとお城で暮らしてる」(以上東京創元社)など。
もうすぐ猫の日なので、かわいいメルヘンをご紹介。原題はTHE CAT AND THE KING.イギリスでの初版は2018年。日本語版の初版は2019年です。
お話は……
とあるところに小さなお城で平和に暮らす王さまがいました。お城には一匹のねこがいて、ねこは王さまのいちばんの友だちでした。
ところがある日、「運の悪いできごと」(ドラゴンの襲来)があり、お城は燃えてしまいました。召使たちもみんなやめてしまいました。
わずかに残ったもちものと、親友のねこと一緒に王さまは「おしろ横丁三十七番地」の新しい家に引っ越しました。
ほとんどのもちものを失ってしまった王さまは、ねこと一緒にイチから出直します。
「狩り」のつもりでフリーマーケットやスーパーマーケットに行ったり、自分でおさらを洗ったり……
やがてお隣に住むクロムウェルさんご一家とも仲良くなり、幸せなひと時をすごしますが……
……と、いうのがあらすじ。
このねこがスーパーねこで、お城で暮らしていた頃からお城のお仕事の差配をしてたのはこのねこでした。お城を出てからも、トラックの運転から大工仕事、パソコンの操作まで、とにかくなんでもできるねこなのです。
ねこは王さまが大好きで、お城の生活以外何も知らない王さまが小さなおうちで暮らしていけるよう、いっしょうけんめい働きます。けれど、ねこは王さまの「家来」ではなく、「友だち」なのです。
そして、この王さまも、とても良い人で、突然のドラゴンの襲来で何もかもを失ってしまったのにもかかわらず、文句や愚痴をひとつも言いません。ときどきは、昔を思い出してしょんぼりすることはあるけども。
いつだって、新しい体験のすべてを好奇心いっぱいで楽しみます。そして、ねこと王さまはどんなときでも仲良しなのです。
王さまたちがお引越ししてきた「おしろ横丁」の新しい家は、ふたつの家が一つに合体した形のセミダッチドハウスで、そこにはお隣さんが住んでいました。
お隣さんは「クロムウェル」さん。旦那さんのオリーさんは「王さま」と言うものが大嫌いです。
でも、気さくで優しい奥さんのキャロラインと娘のクレシダ、息子のクリストファーはあっと言う間に王さまと仲良くなってしまいました。
この旦那さん、名前が「オリー」ということはおそらくオリバー・クロムウェルがモデル。ピューリタン革命で王様と戦った人です。(今調べた)
日本でいうなら、後鳥羽上皇と北条泰時が仲良くしているみたいな感じ? 豊臣秀頼と徳川家康が仲良くしているみたいな感じでしょうか?(乱暴すぎるたとえ)
そう考えると、この王さまとねこがクロムウェルさん一家とお隣さん同士で幸せに暮らす世界は、最高のユートピアです。
世間知らずだけれど心は優しく、不平不満は口にせず、目に映るものすべてを楽しみ、新しいことに挑戦し、生活の中のささやかな喜びを満喫できる王さま。そして、王さまのためならどんなことでもできちゃう、スーパーねこ。
読んでいるだけで心がほっこりと温かくなり、読み終わったときは、しみじみと幸せな気分が湧き上がってきます。
すべての漢字に振り仮名が振ってあるわけではないので、だいたい小学校中学年以上におすすめの本ですが、読み聞かせなら、低学年からでも。読んでいると大人の心も癒されるので、ぜひ読み聞かせで。
もちろん、大人の和み本としてもおすすめです。
ユーモアあふれるナンセンスファンタジーがお好きな方に。ねこが大好きな方に。
日常生活にちょっぴり疲れて、ほのぼのしたファンタジーが読みたい方に。
熱々の紅茶をお供に読みたい本です。
王さまが大好きなロイヤル・ショーブレッドのレシピも載っていますよ!
繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)
ネガティブな要素はまったくありません。パソコンさえある現代社会で、中世ふうの暮らししかしらなかった王さまが万能ねこと一緒に新しい生活をする、ユーモアあふれるほのぼのファンタジーです。
王さまの心があまりにもピュアで、いっさいのネガティブな気持ちを持たないため、読んでいると心が洗われます。
読後は、ロイヤル・ショートブレッドと紅茶でひと休み。
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