【少年冒険家トム】めちゃくちゃになったおとぎ話を救え。小さなトムの冒険ストーリー【盗まれたおとぎ話】【重版希望】【小学校中学年以上】

2024年4月11日

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盗まれたおとぎ話 少年冒険家トムⅠ イアン・ベック/作 松岡ハリス祐子/訳 静山社

トム・トゥルーハートは冒険家一家の末っ子です。兄のジャックたちは、毎年「おとぎ工房」からの指示でおとぎ話の結末をつけるために冒険の旅に出ていました。そろそろトムも冒険家としてデビューのときです。ところが…… (盗まれたおとぎ話 少年冒険家トムⅠ イアン・ベック/作 松岡ハリス祐子/訳 静山社)

この本のイメージ おとぎ話☆☆☆☆☆ ファンタジー☆☆☆☆☆ 物語を作る☆☆☆☆☆

盗まれたおとぎ話 少年冒険家トムⅠ イアン・ベック/作 松岡ハリス祐子/訳 静山社

<イアン・ベック>
1947年、イギリスのサセックスに生まれる。幼少期から絵よりも本を書きたかったが、中学の恩師に画才を見いだされて美術を学び、イラストレーターとして活躍。レコードジャケット制作では、エルトン・ジョンのアルバムのデザインが有名。絵本の制作は60冊を超え、ザ・ベスト・トイ金賞を3回受賞している。英国芸術家協会理事。「少年冒険家トム」シリーズは、イラストに加え、文章も手がけた初の児童書である。「暗闇のファントム」(静山社)など、ヤングアダルト向けの小説も次々に発表している。

<松岡ハリス祐子>
同時通訳者、翻訳家。国際基督教大学卒、モントレー国際大学院大学国際政治学修士。日本ペンクラブ会員。「ハリー・ポッター」シリーズの翻訳のほか、エッセイストとしても活躍。

 原題はThe Secret History of Tom Trueheart was originally.イギリスでの初版は2006年。日本での初版は2012年です。

 お話は……

 トム・トゥルーハートは「冒険家」一家の末っ子。
 彼には六人の兄がいます。兄たちの名前はジャック。上から、ジャック、ジャコット、じゃっく、ジャッキー、ジャクソン、ジェイクです。

 トゥルーハートの兄弟たちの仕事は「おとぎ工房」から生み出された「おとぎ話」の結末をつけること。彼らの冒険譚は、おとぎ話としておとぎ工房から出版され、販売されるのでした。

 ところが、おとぎ工房で働くおとぎ話作家のオームストーンは、自分の書いたおとぎ話の結末をトゥルーハート一族が勝手に作ってしまうのが気に入りません。

 ついに、おそろしい陰謀を企てて……

 ……と、いうのがあらすじ。

 ドラマ「ワンス・アポンア・タイム」シリーズや、「ザ・ランド・オブ・ストーリーズ」など、おとぎ話オールスターズが登場するファンタジーが最近増えてきています。

 というのも、伝統的なおとぎ話を知らない子どもたちが増えてきているという、世界共通の悩みがあるからのよう。

 漫画やアニメーションなど、子どもの好きな娯楽が増えてきているからなのでしょうが、おとぎ話は世代を超えて交流できる貴重な共通言語でもありますから、失われてしまうのはもったいない。

 幸いにして伝統的なおとぎ話は著作権フリー。様々なおとぎ話を合体させたオリジナルのファンタジーが次々と生み出されるようになりました。

 日本でも某携帯電話会社のCMで桃太郎や浦島太郎、金太郎などが仲良く出演しています。おとぎ話の主人公たちはもともとキャラが濃くて魅力的ですから、彼らが集うとおもわぬ相乗効果で面白い作品が出来上がるというわけ。

 この「少年冒険家トム」のシリーズは、その「おとぎ話オールスターズ」ファンタジーにさらにもうひとつひねりを加えていて、伝統的なおとぎ話は妖精たちの「おとぎ工房」で作られ、冒険家一家トゥルーハート家の兄弟たちがその結末をつくりに旅に出るという筋立てになっています。

 おとぎ話の要素にやミヒャエル・エンデの「はてしない物語」やコルネーリア・フンケの「魔法の声」のような要素が加わっています。

 自分たちの冒険がおとぎ話になり、そのおとぎ話の世界にふたたび自分たちが入ってゆく……この循環構造がこの作品の面白さです。

 主人公は、12歳になったばかりのトム。
 冒険家として立派に活躍する兄たちに憧れ、自分も冒険家として旅立つのを心待ちにしています。

 そんなトムにもたらされた、奇妙な手紙……
 めちゃくちゃになってしまったおとぎ話の結末の回収と、兄たちの救出にトムは旅立ちます。

 登場するおとぎ話は「ジャックと豆の木」「ラプンツェル」「白雪姫」「眠れる森の美女」「カエルの王子さま」「シンデレラ」。

 さて、おとぎ話はめでたく完結するのでしょうか?

 この小説を一冊読むだけで伝統的なおとぎ話と、トムが冒険するファンタジーの両方が楽しめます。なんてお得。
 登場するおとぎ話のなかで知らないものがあったら、ネットでストーリーを確認するのも楽しい。どれも昔のアニメーションやバレエなどで作品化されているおなじみのお話ばかり。

 文章は読みやすく、簡単な漢字以外には振り仮名が振ってあります。そんなに難しい漢字もないので小学校中学年から。モチーフになっているおとぎ話を推理するのも謎解きのような楽しさもあります。

 伝統的なおとぎ話に親しめる「少年冒険家トム」のシリーズは、おとぎ話が好きなお子さまにもおとぎ話を知らないお子さまにもおすすめのファンタジーです。

 ※この本は現在、Amazonでは入手困難です。古書でお求めになるか、図書館、書店にある場合があるので、お近くの書店の書店員さんにお尋ねください。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素はありません。
 伝統的なおとぎ話が多数登場するので、それらがそれぞれどんなふうにそれぞれ完結するのか、わくわくしながら追いかけることができます。

 読後はジンジャーエールでほっと一息。

 

商品ページはこち

 

 

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