【黒ねこの王子カーボネル】猫の王子と大冒険!少女と猫のないしょの魔法【小学校中学年以上】【電子化希望】
10歳の女の子ロージーは、ある日、あやしいおばあさんから、ほうきと黒猫を買います。それは魔法のほうきと、黒猫で、しかも彼は黒ねこの王子様だったのです。
この本のイメージ かわいい魔法☆☆☆☆☆ ほのぼの日常☆☆☆☆ ねこかわいい☆☆☆
黒ねこの王子カーボネル バーバラ・スレイ/作 山本まつよ/訳 岩波少年文庫
この本は、現在、市場には中古しかありません(おそらく絶版)。図書館でお探しになるか、中古での入手になります。ただ、現在、岩波少年文庫は、急ピッチで電子化をすすめている気配があるので、もしかしたら重版はなくても、電子化はあるかもしれません。とてもかわいいファンタジーで、ファンも多い作品なので、重版希望です。
貧しいロージーは、お針子のおかあさんと二人暮らし。夏休みに遊び行くところもない上に、お母さんは大量の受注で大忙し。自分も何か働きたいと思ったけれど、できることといえばほうきで掃除することくらい。
誰かがわたしにお掃除の仕事をくれないかしら、とまずは市場にほうきを買いに行きます。
ところが市場でロージーが怪しげなおばあさんから買った、みすぼらしいほうきと黒猫は、じつは、魔女のほうきと黒猫だったのです!
いきなり魔女になってしまったロージー。相棒、黒猫のカーボネルの呪いを解いてあげるために、不思議な大冒険が始まります。
呪いで縛り付けられているカーボネルは、じつは猫界の王子さま。小さいときにさらわれてしまい、王国を未来を案じる流浪のプリンスです。たいへん気位が高く、アニメなら、かっこいい声の声優さんが担当するタイプ。
ロージーは、がんばりやで優しい、根性のある女の子。
魔法のことはぜんぜんわかりませんが、カーボネルに教えてもらいながら、だんだんとマスターしていきます。
見習い魔女の女の子が、困難を乗り越えて一人前になっていく話……と思いきや、違いました。
流浪の王子、カーボネルが猫の王国の玉座を取り戻すために、人間の女の子ロージーが協力して助けてあげるお話なんです。ロージーとその友達ジョンは貧しい家の子どもで、ふだんから様々なことを窮屈に感じていたからこそ、呪いに縛られるカーボネルに素直に同情できて助けてやろうと思えたのかもしれません。
必要なのは、魔女の大釜、魔女の帽子、そして魔法の本。
ロージーは、カーボネルにかけられた呪いの秘密を解き明かしながら、その過程で出会った様々な人たちの悩みを解決していきます。その結果、みんなが幸せになり、猫たちの王国にも平和がおとずれるというストーリー。
カーボネルが上からの街の風景をロージーに見せて、「あれががぼくの王国、まぎれもないネコの国なんだ」と言うシーンがあります。自分たち人間のの街だと思っていた場所が、家々の屋根と塀が、まったく別の世界として浮かび上がってくるのが印象的。
次元なんて超えなくても、ほんの少し物の見方を変えるだけでパラレルワールドが見えてくる、小さな「魔法」を教えてくれる場面です。
日常のカーテンをちょっとだけめくると、向こう側に隠れていた世界から魔法があふれ出してくる。ちょっと角度を変えるだけで、「別の世界」を見つけられるとしたら?
この現実の世界の裏側にも、わたしたちが気がつかないだけで常に魔法が満ちているとしたら、ただの平凡な日々の繰り返しも、すごくワクワクしてきます。
文章は平易で読みやすく、陶器のことを「せともの」と言う以外はそんなに古い言葉も使っていないので、今のお子様にも楽しく読めると思います。だいたい、小学校中学年以上。
夏休みのアニメ映画にしてくれたらなと思える、さわやかなファンタジーです。たぶん、スタジオジブリが「魔女の宅急便」をアニメにしてしまったので、「ほうきに乗った10歳の女の子と黒猫のコンビ」を映像化しにくくなってしまったのでしょう。
でも、とっても面白いので、おすすめの物語です。
ネットで話題になって電子化してくれないかしら。カーボネルの声は、お好きな声優さんの声で脳内再生してみてくださいね。
繊細な方へ
ネガティブな要素はありません。王道の、ほのぼのファンタジーです。ラストは、すっきりしたハッピーエンド。ロージーが本当にいい子なので、親子で読み聞かせにもおすすめです。
休日に、おいしい紅茶とビスケットなどをお供にぜひどうぞ。
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