【なぜ世界には戦争があるんだろう。どうして人はあらそうの?】どうして人は戦争をしてしまうの?真正面から悩む、子どものための哲学入門【10代の哲学さんぽ】

2024年3月28日

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なぜ世界には戦争があるんだろう。どうして人はあらそうの?  10代の哲学さんぽ 3  ミリアム・ルヴォー・ダロンヌ/文 ジョシェン・ギャルネール/絵 伏見操/訳 岩崎書店

戦争が好きな人はいない。だけど、戦争はおきてしまう。どうして、人間は戦争をするのだろう?簡単に答えが出ない疑問がこの世にはある。けれど、考え続けたほうがいい問題でもあるのだ……

この本のイメージ 哲学☆☆☆☆☆ 戦争とは☆☆☆☆☆ 人間とは☆☆☆☆☆

なぜ世界には戦争があるんだろう。どうして人はあらそうの?  10代の哲学さんぽ 3  ミリアム・ルヴォー・ダロンヌ/文 ジョシェン・ギャルネール/絵 伏見操/訳 岩崎書店

<ミリアム・ルヴォー・ダロンヌ>
哲学者であり、パリ高等研究学院の教授。精神哲学と政治哲学を専門にしている

<ジョシェン・ギャルネール>
1970年生まれ。ナンシー美術学校卒。画家、作家。「リベラシオン」「ル・モンド」といった新聞や本の世界で活躍。2008年、2009年と連続して「いちばん美しいフランスの本」賞を受賞している。パリ、ニューヨーク、リールに暮らし、現在はナンシー在住

<伏見操>
1970年生まれ。英語、フランス語の翻訳をしながら、東京都に暮らす

 子どもに哲学の扉を開く「10代の哲学さんぽ」シリーズ第3巻です。
 原題は、Pourquoi les hommes font-ils la guerre? 原書のフランスでの初版は2006年。日本版の初版は2011年です。

 「10代の哲学さんぽ」シリーズは、小さな子どもに哲学的思考を促すために書かれた哲学入門書シリーズです。
 第3巻のテーマは「戦争」。かなり重いテーマに切り込んでいます。

 最初に申し上げておきますと、この本は「どうして戦争が起きるのか」を教えてくれる本ではありません。戦争について、詳しく語っている解説書ではなく、「どうして戦争が起きてしまうのか、考える」ための本です。

 ですから、「わかりやすい回答」が書いてある本ではないため、期待はずれと感じてしまう人いるかもしれません。

 このシリーズ「10代の哲学さんぽ」は、おそらく小学校中学年くらいの子どもを哲学にいざなう目的で書かれたもので、哲学的思考で子どもの「なぜ?」に寄り添い、共に考える形式になっています。

 10歳といえば、子どもの自我がはじめて芽生えてくる時期です。

 いままで、食べて、寝て、学校に通って、遊んでと、ある意味シンプルだった人生に「人生とは」「人間とは」「生きるとは」など、哲学的な悩みが芽生えてくる頃。

 そんなとき、「どうして戦争がおきるの?」と言う、生まれてはじめての問いに、階段の一段目から一緒に考えよう、と言うのがこの本です。ちなみに、第1巻には、「のら犬」と「教授」の会話形式でストーリーらしきものがありましたが、2巻と3巻にはストーリーはありません。第1巻のレビューはこちら

 「どうして戦争はおきるの?」と言う疑問に対して、哲学書らしく、人間の攻撃性や縄張り意識など非常に根源的な理由から説明しています。
 また、文明が発達しても戦争はなくならず、規模が大きくなり被害が増え続けていることなど、戦争は社会的な生き物である人間特有の行為で文明の発達では戦争を止められないことなどが書かれています。
 次に戦争にもルールがあること、「ジュネーブ条約」についても触れています。

 この本は哲学からのアプローチであるため「どうして戦争が起きるのか」「どうしたら戦争はなくせるのか」と言う問いについて、残念ながら、子供が理解できる具体的な回答が書かれているわけではありません。大人が読んだ場合「これでは不十分だ」と感じられる方もいると思います。

 「戦争」は様々な国同士の事情がからんだ複雑な問題なので、小さな子どもにわかる形で単純化して説明するのは困難なテーマです。

 しかし、小さな子どもにも「どうしてなのか」と考えることはできます。人生は「どうして」の連続なので、小さな頃から自分の頭で「どうしてだろう」と考えてきた人は、最終的に人生の困難をなんとかして乗り越える力を得られるのではないでしょうか。

 安易に答をくれる本ではありませんし、この本一冊で積み上がった大人の世界の問題や困難を解決できるわけではありませんが、「難しい問題について自分なりに考える」第一歩にはなります。

 どのように与えるか、どのように読むか、読書に「これ」という答えはありません。
 また、一冊の本が知りたいテーマについてすべてを教えてくれているわけでもありません。しかし、重いドアをすこしだけ開けてくれ、扉のむこうの世界を少しだけ見せてくれます。

 この機会に、時間をかけて読んでみるのもいいかもしれません。

 ※この本には電子書籍もあります。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 重いテーマに取り組んでいるので、楽しい内容ではありません。また、安直に答えを出している本でもないので「だからどうなの?」と言うふうに思われるかもしれません。

 生まれてはじめて「戦争」と言う概念に触れた小さな子どもに、階段の最初の段から一緒に考える本です。
 解決策は提示していないので、まさに「考える」世界への戸口としての、「哲学入門書」です。

 

商品紹介ページはこちら

 

 

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