【天才のら犬、教授といっしょに哲学する。人間ってなに?】人間とは?人生とは?哲学者たちと一緒に考えよう。子どものための哲学入門【10代の哲学さんぽ】【小学校中学年以上】

2024年3月27日

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天才のら犬、教授といっしょに哲学する。人間ってなに?  10代の哲学さんぽ 1  セシル・ロブラン/ジャン・ロブラン/文 リオネル・コクラン/絵 伏見操/訳 岩崎書店

ある日突然、「教授」のところに人間の言葉をしゃべる犬が訪ねてくる。教授は、犬と人生について、生きることについて、討論をかわすことになるのだった……

この本のイメージ 哲学☆☆☆☆☆ 生きるとは☆☆☆☆☆ 人間とは☆☆☆☆☆

天才のら犬、教授といっしょに哲学する。人間ってなに?  10代の哲学さんぽ  1  セシル・ロブラン/ジャン・ロブラン/文 リオネル・コクラン/絵 伏見操/訳 岩崎書店

<セシル・ロブラン>
パリ近郊、ドランシーのポールベール中学で、近代文学を教える。哲学的討論を、自分の授業によく取り入れている。文学博士であり、ジュール・ヴァレスと宗教の関係について研究。19世紀のフランス文学についての記事をいくつも書いている

<ジャン・ロブラン>
1949年生まれ。有能な哲学の教授で、フランスのブザンソン、ルーアン、ニーズの大学で教鞭をとった。権力と生産の関係についてや、社会における個人の関係について研究している

<リオネル・コクラン>
1948年、パリ生まれ。パリ国立高等美術学校卒業。70年代より絵本制作をはじめ、フランスではすでに80冊以上が出版されている。伝説的ロックバンド「ジェネシス」のアルバム「DUKE」のジャケットやパトリス・ルコント監督の映画「タンゴ」のポスター(1994年度国際ポスター賞グランプリ受賞)もてがけた

<伏見操>
1970年生まれ。英語、フランス語の翻訳をしながら、東京都に暮らす

子どものための哲学書「10代の哲学さんぽ」第1巻。原題はQUEST-CE QU’UN HOME? DIALOGUE DE LEO,CHIEN SAGACE,ET DE SON PHILOSOPHE. フランスでの初版は2006年。日本での初版は2010年です。

 日本は教育熱心な国なので小学校の頃からきちんと勉強すれば、九九を使って計算ができ、五十音を覚えて長い文章が読めるようになります。それは本当に、日本の良さだと思います。

 でも、日本の教育の中には「考える」と言う授業があまりないため、内向的な子どもが内省してさまざまな悩みにぶつかったとき、解答を求める手段がないのです。

 つまり、読み書きや計算など、物理的な行動で解決できる問題は解決手段を教えてくれる人がいるのですが、自我が生まれた頃に一部の子供が抱く「生きるとは何か」「人生とは何か」と言うような哲学的な問いに対して、道筋を示すような学びの手段がないのです。そこは、家庭と、そして宗教にゆだねられがちです。

 しかし、小さな子どもが「人生って何?」と親に「なぜなに攻撃」をしてきたら、親子の会話がたいへん面倒くさいものになるのは容易に想像できます。とくに、子どもが内向的で、親がそうではない場合、子どものもどかしさと親の面倒臭さのぶつかり合いは不幸な結果になりそう。

 「人生とはなにか」なんて、小さな子どもでは結論を出すのは難しい問題です。もちろん、こういった問題は「考える」ことが大切で、人生かけて自分なりの答えを見つければいいのですが、小さい子どもはそれすらわかりません。

 たくさんの本を読んで自分なりの答えにたどり着く人もいれば、不幸にして途中であやしげな何かにハマってしまうこともあります。そういう意味でも、「子どものための『人生を考える本』はないかな」とずっと探していました。

 偶然、見つけた本がこれです。

 この本は、内省的、内向的な子どもがぶつかる悩みについて、「教授」と「しゃべる犬」の会話形式でわかりやすく書いています。

 子どもは、だいたい10歳くらいで自我がはっきりと確立してくるので、それくらいの子どもが読んで理解できるように書かれているのがうれしいところ。

 「教授」は人間の素晴らしさを、ルールを守り、努力し、熟練し、成長し、できなかったことができるようになること、社会的生物としてルールの中で交流できること、仕事をすることで人生を豊かにして充実したものにできることなどであると主張します。

 「犬」は、動物のすばらしさを、「過去」や「未来」を心配せず「今」を精一杯、自分を偽らずにありのまま生きられることや、「なにもしない」と言うゆとりのある時間を持てること、嘘をつかずに誠実に生きられることだと主張します。

 人間の「教授」の目には、小屋や籠に閉じ込められた動物は不自由に見えますが、犬の目からは動物のほうが自由で、しがらみに縛られた人間たちは不自由に見えます。

 人間と動物、いったい、どちらの生き方のほうがすばらしいのでしょうか。

 巻末には、歴史上の偉大な哲学者の言葉と引用元が掲載されているので、さらに深く学びたい人への扉が用意されてます。

 二者択一の二元論的な本ではないので、明確な結論は出していません。一冊読むことで、深く考えることができ、小さなお子さまが生まれてはじめて哲学的な悩みにぶつかったとき、心の友だちになってくれそうです。

 「子どもがこんなことで悩むはずないでしょ」とお思いの方もいると思いますが、小さな子って案外、禅問答みたいなことで悩むものなんですよ。
 また、子ども同士の口論で屁理屈の応酬になったときに、生真面目な子だと言い争いを真正面から受け止めて悩んでしまうこともあります。

 たぶん、そう言う子にはこの本が、すべての疑問を解決するとまではいかなくても助けになってくれるでしょう。

 字がわりと大きめで、挿絵が多くて読みやすい本です。総ルビではありませんが、かなり手厚くふりがながふってあり、小学校中学年以上なら読めると思います。「10代の哲学さんぽ」と副題がついているので、だいたい小学校四年生から。

 必要とする子としない子がはっきりと別れてしまいそう。でも、必要な子には出会ってほしい本です。ちょっと心が疲れた大人の和み本としても案外役に立ちます。

 ゴールデンウィークのおうち時間、教授とのら犬と一緒に、人生について考えてみませんか。

 ※この本には電子書籍もあります。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 HSCのお子さまにおすすめです。

 「生きること」や「人生」について、なぜなに攻撃をはじめた年頃の、大人から見ると「メンドクサイ」お子さまに。だいたい、10歳から読めるように書かれています。

 内向的な子どもが一度は考えるようなことについて、わかりやすく書いてくれています。

 

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