【ナンタケットの夜鳥】「オオカミ年代記」シリーズ三作目。遭難したダイドーの運命は?色あせない古典名作。【小学校中学年以上】
海で遭難し、行方不明になっていたダイドー。捕鯨船に救われて10ヶ月間昏昏と眠り続けていたのでした。怖がりの少女ぺ二テンスと仲良くなり、ピンクのクジラを追うキャスケット船長の船で地球を半周り。ダイドーの冒険が始まります……
この本のイメージ ファンタジー☆☆☆☆☆ 海洋冒険物語☆☆☆☆☆ 女の子の友情☆☆☆☆☆
ナンタケットの夜鳥 ジェーン・エイキン/作 こだまともこ/訳 冨山房
<ジェーン・エイキン>
1924‐2004。アメリカの詩人コンラッド・エイキンの娘として、イギリス、サセックスのライで生まれる。5歳のころから物語や詩をノートに書きつけ、十代の後半から作品を雑誌などに発表しはじめる。若くして夫を亡くしたのちに、本格的な作家活動に入る。作品は児童文学だけではなく、大人向きのミステリー、詩、戯曲など多岐にわたり、生涯で約100点の本を出版した。1969年「ささやき山の秘密」でガーディアン賞を受賞
<こだまともこ>
東京生まれ。本名・小玉知子、旧姓・相磯。1964年早稲田大学文学部英文科卒業後、文化出版局に勤務。1967年退社し、翻訳家となる。2008年日本国際児童図書評議会賞受賞。英米児童文学の翻訳のほか、自身で創作もおこなう。
このところ、長い文章が読めないので絵本を読んで癒され時間を作って生活していたのですが、やっぱり長い文章を読みたい欲はあり、好きな本を手にとってみました。
最近はまっているジョーン・エイキンです。
この「ナンタケットの夜鳥」の原題は Nightbirds on Nantucket. イギリスでの初版は1966年。日本での初版は大橋善恵訳 が 1976年、現在のこだまともこ訳が2011年。ともに冨山房さまから出版されています。
ストーリーは、第1巻「ウィロビー・チェースのオオカミ」から続いているので、興味を持たれた方は、順番にお読みになるほうがわかりやすいでしょう。
「ウィロビー・チェースのオオカミ」のレビューはこちら↓
日本ではこのシリーズ、「ナンタケットの夜鳥」までが翻訳版入手可能で、その後の「ささやき山の秘密」「ぬすまれた湖」は絶版、Dangerous Gamesは未訳、「かっこうの木」は絶版となっています。その後のお話、「ダイドーと父ちゃん」「少女イス 地下の国へ」「コールド・ショルダー通りのなぞ」は翻訳版がまだ入手可能のようです。
このブログはわたしの趣味のブログで、読書記録も兼ねているため、古い本も新しい本も「好きだな」と思った本はすべてご紹介しています。たまに絶版本もご紹介しています。(ローリングやジョーンズに影響を与えたE.ネズビットなど)
新しい本ももちろん大切なのですが、時代を超えて生き残った児童文学のパワーも、ぜひともご紹介したい。
所詮、1人の人間ができることはたかが知れています。けれど、新しいものも古いものも、それぞれに必要性があり、それぞれの魅力をわたしの力の及ぶ限りお伝えしたいのです。
この「オオカミ年代記」シリーズも、おそらくわたしが幼い頃ならば、もっと流通していて読めたと思うのですが……そこが悔しいところ。
ジュール・ヴェルヌの「海底二万里」などが書かれた当時、まだまだ海には未知の部分が多く未発見の島や陸地があった時代、船で航海する海洋冒険ロマンは最新のSFでした。
当時の児童文学に登場する科学技術は、現代の知識で読むと荒唐無稽だし、ありえない記述も多いのですが、今読むとそのぶっとんだレトロ感に味わいがあって、面白く読むことが出来るのです。古い時代考証で書かれた時代小説も、今読んでもやっぱり面白いですからね。
もちろん、子どもには正しい科学知識を、と考えると、昔の古典SFはよろしくない部分もあるのですが、逆にそこはファンタジーだと考えると楽しめます。
この時代の児童文学はまさにそういった、SFとファンタジーの融合した魅力があるのです。
今回のストーリーは……
サイモンと一緒に海で遭難し、その後行方不明になっていたダイドーですが、捕鯨船に救われて10ヶ月ものあいだ昏々と眠り続けていました。
眠りから醒めたダイドーは船員の少年ネイトとキャスケット船長の娘ぺ二テンスと仲良くなります。
気弱なペニテンスが無事に陸地で生活できるようになるまで面倒をみることにしたダイドー。
ところが、例の「ハノーバー党」の面々がここでも悪だくみをしていて……
……と、いうのがあらすじ。
「ウィロビー・チェースのオオカミ」では勝気で天真爛漫な女の子ボニーと繊細で気弱なシルヴィアの友情が描かれましたが、今回の物語ではおてんばなダイドーと病弱で怖がりのペニテンスが友情を育みます。
怖いもの知らずのダイドーの大冒険とだんだんと勇気を出して強敵に立ち向かってゆくペニテンスの成長が今回の物語の魅力。
そして、ピンクのクジラや巨大大砲など、荒唐無稽な要素もお楽しみの一つ。
展開はスピーディーで起伏に富み、先が気になりすぎて読んでいるとあっと言う間に読めてしまいます。こだまともこ先生の訳もテンポよく、読みやすい。
かなりのボリュームがありますが、文章は平易で難しい漢字には振り仮名が振ってありますので、小学校中学年から。
物語好き、本好きのお子さまにおすすめ。もちろん、大人が読んでも楽しめます。
帆船、気球、巨大な大砲、ピンクのクジラ……摩訶不思議なエイキンの世界にようこそ。
※まだ市場には中古がありますし、小さな本屋さんには置いてある場合もあるので、近くの書店でお問い合わせしてみてください。(お問い合わせが増えると重版される可能性が上がります)
繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)
ネガティブな要素はほぼありません。良質の冒険物語です。おてんばなダイドーと気弱なペニテンスの友情が熱く、小さな女の子の冒険ものが好きならぜひ。
50年以上前の物語なので、科学的にみるとありえない描写はあるのですが、ファンタジーとしてお楽しみください。
ラブスカウスや貝のチャウダー、バブル & スクイークなど、食べたことがないけどおいしそうな料理がたくさん登場します。
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