【ふしぎな目をした男の子】コロボックル物語第4巻。コロボックルと人間の子どもの偶然の出会い【コロボックル物語】【小学校中学年以上】

2024年3月17日

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ふしぎな目をした男の子 コロボックル物語 4  佐藤さとる/作 村上勉/絵 講談社

コロボックルの老人、つむじ曲がりのツムジイは、ひょんなことから、コロボックルの山から離れ、ひとりで町で暮らすことになりました。ところが、彼はそこで、高速で走るコロボックルのすがたを見ることができる、不思議な少年タケルと知り合います。

この本のイメージ ファンタジー☆☆☆☆☆ 環境問題☆☆☆☆☆ ほのぼの☆☆☆☆☆

ふしぎな目をした男の子 コロボックル物語 4  佐藤さとる/作 村上勉/絵 講談社

<佐藤さとる>
日本のファンタジー作家。「コロボックル物語」は日本発のファンタジーとして知られる。

 このサイトはわたしの読書記録をかねながら名作児童文学をご紹介しています。自分自身、「これを知らないままではいられないな」と思う名作、「子どもの頃一度は読んだけど、もう一度読みたい」と言う本を優先しています。

 もちろん、新しい本もご紹介していますが、児童書で人気の本は同じ世界観のシリーズだったりすることが多く、最初から順を追って読まないと本当の意味で楽しめなかったりするので、最初から順番にコツコツご紹介しています。いろいろとスローペースなのは、ご容赦ください。読みたい本がたくさんあるんですよ……

 本日ご紹介するのは、「だれも知らない小さな国」からはじまる、日本発ファンタジー不朽の名作「コロボックル物語」の4巻「ふしぎな目をした男の子」です。初版は1971年。現在、入手困難なシリーズで、最も入手しやすいのが青い鳥文庫版なので、そちらをリンクしておきます。

 「新イラスト版」とされているものは、三巻までしか出版されていません。文庫版もあるのですが、一部品切れのようです。電子書籍はあります。なつかしさで紙版がほしい方は、青い鳥文庫版を。リニューアル版や重版されたら、随時またリンクします。

 今回のお話は……

 ずいぶんと大きくなり、発展したコロボックル王国。そこに、ツムジイと呼ばれるつむじ曲がりの老人コロボックルがいました。本名はウメノヒコと言いましたが、みんなは、ツムジとかツムジイとか呼ぶのです。

 コロボックルの昔の言い伝えや歴史を調べている学者さんのツムジイには、未来がすこしだけ予知できると言う不思議な力がありました。

 あるとき、コロボックルたちの厳しいおきてに大きな変化がありました。
コロボックルは、一人に一人まで、人間のトモダチをつくってもいいことになったのです。

 この変更に腹を立てたツムジイは、コロボックルの山を下りて、町のほうへ家出してしまいます。ところが、この家出先で、彼は不思議な赤ちゃんに出会います。高速で走るコロボックルの姿をしっかり目でとらえることができる男の子でした。それがタケルです。

 ツムジイとタケルの交流が始まりました。

 やがて、タケルとコロボックルたちの交流は、開拓で汚染された池を救出する奇跡を起こします……

 というのがあらすじ。

 前半で登場する、コロボックルのツムジイは、ちょっととぼけたところもある、ゆかいな頑固ジジイです。これが愛嬌たっぷりに描かれているのですが、知識があって賢くて、きちんとしているところもちゃんと描かれているのが大切なポイント。
 水滴を使った予知も、妄想とか勘違いとかではなく、ちゃんと見える。そして、コロボックルたちにもちゃんと尊敬されている。

 これが今風だと、「古いことを言っていばっているだけで、予知は勘違い、知識は古くて時代遅れ」、みたいなダメキャラになっちゃいがちだと思うんですが、この作品ではツムジイの賢いところと、つむじ曲がりで頑固でちょっぴり抜けているところは、両方あって、それがとても魅力になっているのです。これは逆に、今読むと新鮮です。

 ツムジイの家は土に半分埋まった土瓶で、注ぎ口のところが煙突になっています。これ、「こそあどの森」のポットさんの家と同じですね。あれは、コロボックル物語のオマージュだったのだと気がつきました。このデザイン、ほんとうにかわいいんです。

 「人間とトモダチになってもいい」と言う新しいおきてに反発して山を下りてしまったツムジイが、人間の男の子とトモダチになっちゃうところがかわいい。

 タケルくんは、ようするに、たいへんな動体視力の持ち主で、高速で走るコロボックルの姿が見えたのでした。これはコロボックルたちにとって特別な男の子だ、と思ったツムジは、タケルくんと仲良くなります。

 そして、やがて人間とコロボックルの交流は、美しかった山の用水池と湧水の救出作戦を生み出します。

 前半は、この話はどこへ行くのだろうと思って読んでいたのですが、後半でツムジイが代替わりして若い「ツムジ」くんに「タケルのトモダチ」をバトンタッチし、用水池の問題が持ち上がったあたりから、どんどん話が盛り上がります。

 ラストは、あっと驚く、ハッピーエンド。

 もちろん現実にはコロボックルはいないし、こんなに上手くことは運びませんが、人間とコロボックルと言う、ふたつの種族が協力することで起きた奇跡は、疲れた心に希望を与えてくれます。

 コロボックルシリーズは、読むと、澄んだ川の水に素足をひたしているような、さわやかな気持ちになるのです。
 時代がかなり古いので、ちょっぴりレトロな雰囲気も漂いますが、この清らかなファンタジーの世界に、ぜひ触れていただきたいです。

 「コロボックル物語」は一話完結なので、どの巻から読んでも楽しめますが、前後関係をきちんと把握するには、1巻の「だれも知らない小さな国」からお読みになることをおすすめします。

 子どもから大人まで。全年齢におすすめの良質ファンタジー。日本の児童文学、ファンタジーに多大なる影響を与えた不朽の名作です。まだの方はぜひ。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素はまったくありません。純真で、かわいらしいファンタジーです。
 土地開発で汚染された用水池が綺麗になってゆく流れには、わくわくします。山や野原の自然描写が美しく、光景が目に浮かびます。

 お子さまから大人まで。全年齢楽しめて、心がほっこりするファンタジーです。プレゼントにもおすすめ。
 残念ながら現在、入手困難で、いちばん入手しやすいのが青い鳥文庫です。電子書籍もありますので、お仕事の合間や、リフレッシュタイムにお楽しみください。

 

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