【ムーミン】夏至祭の直前に大洪水?大人も子どもも楽しめる、不思議な仲間たちのファンタジー【ムーミン谷の夏まつり】【小学校中学年以上】
洪水によって家が沈んでしまったムーミン一家。うつり住んだ奇妙な家は流されている劇場だったのです。
この本のイメージ 大洪水 ☆☆☆☆☆ 演劇☆☆☆☆ 夏至祭☆☆☆☆
ムーミン谷の夏まつり トーべ・ヤンソン/作 下村隆一/訳 講談社
今年の夏至は、6月21日です。夏至と言えば、一年の中でいちばん昼が長い日。海外の神話ではたいてい、太陽神の力が一番強くなる日とされています。
この物語は、季節としてはまさに今頃、夏至の少し前になります。
講談社から刊行中のムーミン全集四巻目です。
ムーミンのお話って、天変地異の話が多くて、ちょっと世紀末感があるんですよ。
平和な時代は、これが摩訶不思議な異世界感になっていたのですが、今は現実が疾風怒濤、自然災害の連続なので、「異世界」 というよりリアリティになってきてるのが皮肉です。
突然、火山が噴火して洪水がおき、ムーミン谷は水没してしまいます。スナフキンはまだ冬の旅から戻っていません。ムーミン一家は屋敷の屋根の上で水を避けていましたが、遠くから不思議な建物が流れてきました。
家のほとんどが水没してしまったムーミン一家は、家具と持ち物を持ち込んで、不思議な漂う建物に移住します。
それは、実は、劇場だったのです。
劇場とともに漂流するムーミン一家。途中で、ムーミンとスノークのおじょうさん(アニメーションではノンノンとかフローレンとか言われてる子です。原作では明確な名前が出てきません)は、家族とはぐれ、公園を荒らした冤罪で牢屋に入れられてしまいます。
なんとか脱出したムーミンたちは、劇場で公演中のムーミンママたちや、小さな子供たちを(やむなく)連れて旅をしてきたスナフキンたちと合流します……
という、お話。
今回のお話は、冒頭からサバイバル感満載です。
火山の噴火や洪水など、日本人にはちょっときつい描写が多いため、苦手な方はこの巻は飛ばしてもいいと思います。ムーミンたちはどんな状況でも、元気で明るく、ほんわかしながらも、たくましく乗り越えていきます。
途中からお話が三つのルートに分かれていきます。
漂流している劇場に流れ着き、そこで劇を公演しようとするムーミンママたち。(脚本はムーミンパパ)
夜の間に、みんなとはぐれてしまったムーミンとスノークのおじょうさん。
そして、冬の旅から戻ってきて公園番と対決したあと、どういうわけか24人の子どもたちの面倒をみることになったスナフキン。
彼らが最後は合流します。
あ、ミイがいました!ミイは1人で漂流していましたが、途中でスナフキンと合流します。
こんな感じでお話が進みますが、最後に三つのお話がひとつにまとまり、全員めでたしめでたしで終わるので、すっきりと気持ちのいいラストです。
ムーミンたちの冤罪はどんな事情だったかと言うと、
1. 小さい公園に厳格な公園番がいる
2. そこに身寄りのない24人の子どもたちが行き場がないのでやってくる
3. 公園番は、そこらじゅうに「○○するべからず」「○○禁止」と言う立て札を無数に立てて、遊ぶことも休むことも、くつろぐこともできなくして、公園を監視する。
4. 腹を立てたスナフキンは、公園にニョロニョロの種をまく
5. 公園にニョロニョロが生えてきて、公園番にとりつく。→公園番逃げる
6. スナフキン立て札を引っこ抜く
7. 孤児たち、スナフキンについていく
8. 何も知らないムーミンたち、公園にやってくる
9. 引っこ抜かれた立て札が山になっているのを見て、ゴミだと思い、焚き木として使う(夏祭りだから)
10.ちょうどそのとき、公園番が戻ってきて逮捕
という、コントのような流れなのですが、このあたりも、最後はちゃんと解決していきます。
ムーミンママの動じない魅力や、ミイのたくましさは今回も健在。
今回ちょっと迷惑なスナフキンですが、その後、24人の孤児たちや、ちっちゃなミイの面倒はちゃんと見ます。そりの合わない親戚と無理に仲良くしようとしていたフィリフヨンカは、無理するのをやめたら念願の家族ができて大喜び。
落ち込みがちなミーサや、気の弱い小さなヘムルも、ムーミンたちとの交流で、だんだん強く明るくなっていきます。
今回の名言はスナフキンの
「そうかい。大切なのは、自分のしたいことがなにかを、わかってるってことだよ」
と、
ムーミンママの
「友だちが、それぞれ自分にぴったりのことを見つけられるのって、うれしいものでしょ?」
です。
毎回、ほのぼのとしたあたたかさの中で大切なことを教えてくれるムーミン。一度に成長できなくても、一歩一歩自分のペースで歩いていけばいいと思わせてくれます。
※ムーミン全集は電子書籍もあります。
繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)
火山の噴火と洪水のシーンがあります。苦手な方にはおすすめしません。それが大丈夫であれば、他はネガティブな要素はなく、ほのぼのとした中にも教訓も多いファンタジーです。
休日のお風呂上りなどに、のんびり読むのにおすすめの本です。
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