【電子化希望】【E.ネズビット】数々のファンタジー作家に影響を与えた名作!「あの」きょうだいたちの、もうひとつのファンタジー。【火の鳥と魔法のじゅうたん】【小学校高学年以上】
サミアッドと別れたシリル、アンシア、ロバート、ジェインのきょうだいとヒラリー赤ちゃんは、ある日、不思議なじゅうたんを手に入れます。それは魔法のじゅうたんで……
この本のイメージ 日常ファンタジー☆☆☆☆☆ 不死鳥かわいい☆☆☆☆☆ 願いとは☆☆☆☆
火の鳥と魔法のじゅうたん E.ネズビット/作 猪熊葉子/訳 岩波少年文庫
現在、入手困難な本です。中古か、図書館でお探しください。
ネズビットは150年ほど前に活躍した作家ですが、J.K.ローリングをはじめとして現在大活躍しているファンタジー作家に大いに影響を与えた方なので、ぜひ電子化してほしい作家の1人です。
これは福音館文庫から出版されている「砂の妖精」の直接の続編です。内容的にはサミアッドとかは出てこないのですが、時系列的には、そのすぐあとのお話になります。その後のお話が「魔よけ物語」です。
サミアッドと別れたシリル、アンシア、ロバート、ジェインのきょうだいは、子供らしいいたずらで子ども部屋のじゅうたんをダメにしてしまい、新しいじゅうたんを買ってもらいます。
それは、魔法のじゅうたんで、不思議な卵がおまけについていました。
その「おまけ」とは、不死鳥の卵だったのです。
きょうだいたちは、不死鳥と一緒に不思議な一ヶ月間をすごします。
先に、講談社青い鳥文庫の「魔よけ物語」を読んでしまったので、今読むと、子どもたちの心がかなり幼いとわかります。まだまだ、「魔よけ物語」のときほど成熟していないのです。
「砂の妖精」のときもそうでしたが、この子どもたちは基本的には心が優しく善良なのですが、上流階級の子ども特有の欠点があって、短絡的だったり、思慮に欠けたところがまだまだたくさんあります。
この、時代ゆえの描写は今のお子様には難しくて大人の解説が必要かもしれません。だから、どちらかと言うと、これは、そのような時代背景を理解できる大人向けのファンタジーだと思います。
今回の不思議生物は、不死鳥。
砂の妖精サミアッドより、ずっと精神的に大人で優しく、親切です。ただ、やはり不死鳥なので、人間のことが理解できず、勘違いでおかしなことをしてしまうこともあります。ここらへんは、子どもたちが召使たちにしてしまうこととよく似ていて、おそらくネズビットは計算して書いていたのではないかと思えてきます。
そして、「願いを叶える」魔法のじゅうたんも出てきます。じゅうたんは、子どもたちを運んで空を飛ぶだけでなく、物を運んできたり、時空を超えたり、いろんなことができます。
この子たちが善良だけど上流階級の子だとしみじみわかるのは、召使や労働者階級の人たちに対する無自覚なきびしさと、(サミアッドのときと同様に)なんでも願いを叶えてくれる「魔法のじゅうたんのために願う」っていう、一番簡単な解決方法を思いつかないところ。
サミアッドのときも、結局はそれがいちばんの正解だったのですが、そこに思い至らないうちに別れてしまいました。今回もまた、そんな感じで物語は決着します。
読んでいるほうは、「ああ、じゅうたんのために願ってあげればいいのにな」と思うのですが、子どもなので、最善と思ってもおかしなことをしてしまうんですよね。
辛抱強く、様々な教訓を与えようとする不死鳥とのすれちがいが、コメディタッチで描かれています。
この不死鳥は、さすがに不死鳥らしく、サミアッドのようにひねくれてはいなくて、誇り高くちょっとナルシストだけども義理堅くて優しい鳥です。自分を火の中で孵化させてくれたロバートに恩義を感じ、困ったときには彼なりのやり方で全力で助けてくれるのです。
映像化されたときには、ぜひ、イケメンな声でお願いしたい。
次から次へと事件が起きるので、たった一ヶ月のあいだの出来事だと思えないほどの密度なのですが(事実、不死鳥は一ヶ月で500年分くらい老けたと言っている)、赤ちゃんを含めた小さい子ども五人と一ヶ月、全力で付き合うとそんな気持ちになるかもしれません。不死鳥も、じゅうたんも本当におつかれさまでした。
文章は平易で読みやすく、難しい言葉は使われていません。
小学校高学年~中学生あたりから読めると思います。若い方が1人で読む場合は、150年ほど前のイギリスをすこし調べてみましょう。お子様が読む場合は、そのあたりを解説してあげてください。
部屋の照明が電気ではなくガス灯だったり、暖房器具が暖炉だったり、移動手段が馬車だったりと、当時の生活を知ることが出来ます。
このあたりの時代の小説って、本当に面白くて、エジソン以前とエジソン以後で、たった10年くらいの間でも違う国に来たくらいに違うんです。現代のインターネット以前とインターネット後みたいに。
それでも、子どもの心理や成長は、時代を経ても変わらないので、子どもが読めば共感できるでしょうし、大人が読めばなんとも言えないほほえましい気持ちになります。
これからは、電子書籍で過去の作品も手軽に読める時代になりましたので、岩波さま、ぜひ電子化してください!
「砂の妖精」を好きになった方は、図書館で探してみてくださいね。
※この本は現在、Amazonでは新品は入手困難です。中古(古書)でお求めになるか、図書館、または書店に置いてある場合があるので、お近くの書店の書店員さんにお尋ねください。
繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)
不死鳥の話なので、とにかくぼんぼん燃えます。火が苦手な人はご注意ください。また、150年前の本なので、労働者階級に対して人によっては「うーん」な描写があるかもしれません(虐待などはありませんが、ニュアンスとして)。それ以外はほとんどネガティブな要素はありません。
お茶とお菓子が頻繁に出てきますので、食後にティータイムができるよう、お茶とお菓子をご用意ください。
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