【グリーン・ノウ物語】時を越えて出会ったグリーン・ノウの子どもたち。60年以上前に書かれた静かでやさしいファンタジー。【グリーン・ノウの子どもたち】【小学校中学年以上】

2024年2月13日

広告

グリーン・ノウの子どもたち L.M.ボストン/作 亀井俊介/訳 評論社

お母さんが死に、新しいお母さんとはなんとなくうまくいかないトーリー。そんなトーリーは、夏休みをひいおばあさんの古いお屋敷ですごすことになりました。ところが、そこには不思議な住人がいたのです……

この本のイメージ  怖くないオカルト☆☆☆☆☆ 映像美☆☆☆☆ 家族愛☆☆☆☆

グリーン・ノウの子どもたち グリーン・ノウ物語 1   L.M.ボストン/作 亀井俊介/訳 評論社

<ルーシー・M・ボストン>
英国の女性児童文学作家。ランカシャー州(現マージーサイド州)サウスポートにルーシー・ウッドとして生まれ、サセックス海岸の女子寄宿学校に学ぶ。1917年ハロルド・ボストンと結婚、夫と別れた後、1939年にケンブリッジシャー州ヘミングフォード・グレイのマナーハウスに転居。60歳を過ぎてから「グリーン・ノウ」シリーズを書き始める。『グリーン・ノウのお客さま』でカーネギー賞を受賞。林望が英国に留学した際、ボストンの家に下宿していたことでも知られる。(Wikipediaより)

 古い本です。1972年に評論社から出版されましたが、2008年に改訂版が出たようです。それでも12年前ですね。

 わたしは古い世代で、子供の頃は祖母から昔の話を聞かされて育ちました。たいていはホラーな話で「昔は幽霊なんて、そこらじゅうにいたよ」って、真顔で言うのです。

「火の玉なんてしょっちゅう見えた。そこらじゅうで人がいっぱい死んだんだからしょうがないね」とか、けろりと言うので、子供の頃はわりと怖かったのです。
でも、終戦10年後くらいで、ぐっと減ったそうです。十回忌で成仏したのか、街が綺麗になったからなのか……

 オカルトものでいちばんあるのは、強い恨みや執念で怨霊になった霊と出会い、事件に巻き込まれ、解決して成仏させてあげる話。「これで天国にいけるわ、ありがとう~!」的なやつです。

 けれど、この物語はちょっと違う。

 ネタバレしてしまうと、この本はオカルトファンタジーなんです。でも読んでみると、まったくオカルト色がありません。死者の魂は出てきますが、聖歌隊になって教会に来ちゃいますしね。それにとっても美しくてかわいらしい。

 そんな不思議なファンタジーです。

 海外の古いファンタジーは、たいてい夏から始まります。それは子供たちが長い休暇に入る季節だから。この物語も、主人公トーリーが夏休みをひいおばあさんの古いお屋敷で過ごすために、やってくるところからはじまります。

 主人公のトーリーは、お母さんと死別し寄宿舎で生活していました。新しいお母さんとは打ち解けることが出来ず、両親はビルマで働いているので、夏休みに会いに行くこともできません。

 そんなとき、ひいおばあさんのお屋敷に招かれ、夏を一緒にすごすことになりました。

 それは、古い古いお屋敷。
川に囲まれた場所に建っていて、川が増水すると水の中に建っているように見える幻想的な館です。

 そこには、ひいおばあさんよりずっと昔から、大先輩の住人たちがいたのです。その、かわいらしい住人たちは…… 

 というストーリー。

 ぶっちゃけ幽霊屋敷なのですが、そういうホラーな要素はひとつもなく、天界と下界の狭間に存在している館で精霊と交流するような美しい物語です。

 グリーンノウの子どもたちに現世への未練や恨みなどがまったく感じられず、ただただ純粋で美しい存在として描かれているのも印象的。おそらく、よくいる幽霊ではなく、半分天使みたいな存在になっているのでしょう。

 トーリーが、目に見えない住人たちを恐れずに、なんとか交流しようと工夫しているうちに彼らとだんだんと打ち解けていく様子も、ほほえましく、あたたかい気持ちになります。彼には、相手に肉体があるとか無いとかは関係ないんでしょうね。文字通り、「心の交流」です。

 内向的で優しいトーリーだからこそ、相手がどんな存在であろうともごく自然に心を開いて仲良くなれるのでしょう。トーリーの子どもらしい好奇心と純粋さが、読んでいるほうの心にもしみこんできます。

 小さな章に分かれて、細かいエピソードの連続で進むお話なので読み聞かせにもおすすめです。

 今は、すこし前とちがって天変地異も多く、不安な時代になっています。そんなときに、こんな美しくてあたたかな幽霊屋敷のお話もいいんじゃないかと思うようになりました。

 文章は平易で読みやすく、難しい漢字もそんなにないので、小学校中学年以上からおすすめです。賢い子なら低学年から読み聞かせで。

 想像力をかきたてられる、美しいファンタジーです。あたたかい紅茶を用意して、静かな部屋でお楽しみください。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 過去のグリーンノウの子供たちが病気で死んでしまう記述があります。三行ほどのことですが、つらい方のために「そういう記述がある」ことをお知らせしておきます。ネガティブな要素はほとんどありません。美しく穏やかなファンタジーです。
感受性の鋭い、内向的な方におすすめです。 温かい紅茶かハーブティーをお供に、ぜひどうぞ。

商品紹介ページはこちら

 

 

この本の続きはちら

お気に入り登録をしてくださればうれしいです。また遊びに来てくださいね。
応援してくださると励みになります。

にほんブログ村 本ブログへ

広告