【グリーン・ノウ物語】ニューベリー賞に輝いた名作。野生の呼び声と哀しくも美しい夏休み。【グリーン・ノウのお客さま】【小学校中学年以上】

2021年11月24日

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グリーン・ノウのお客さま グリーン・ノウ物語 4  ルーシー・M・ボストン/作 亀井俊介/訳 評論社

みんなで川下りをした翌年の夏、アイダはピンをグリーン・ノウですごさせてあげられるように、オールドノウ夫人に手紙を書きました。ピンは、オールドノウ夫人とグリーン・ノウで夏を過ごすことになります。そんなとき、はるかアフリカからはるばる動物園に運ばれ、孤独に暮らしていたゴリラのハンノーは……

この本のイメージ 夏休み☆☆☆☆☆ ゴリラ☆☆☆☆☆ かなしい☆☆☆☆☆

グリーン・ノウのお客さま グリーン・ノウ物語 4  ルーシー・M・ボストン/作 亀井俊介/訳 評論社

 グリーン・ノウシリーズ四作目。
 最初に申し上げますと、哀しいお話です。

 このサイト「マジカル・マナーハウス」は、毎日をいっしょうけんめい生きる方々のために、癒される児童文学や絵本をご紹介しています。

 基本的にハッピーエンドのお話をご紹介しています。アンハッピーエンドや、バッドエンド、デッドエンドのようなお話は、除外するように心がけ、作品中に暴力シーンなどがある場合は、レビューの最後にコメントとして書き添えてあります。
 はげしいネタバレがお好みでない方のためには、冒頭で「本のイメージ」を☆で表現しています。

 というのも、人によっては、そのときの精神状態で、どうしても暗い話やダークな話、つらい展開を受け付けないことがあり、そんなときでも安心して読書を楽しめるようなお手伝いをしたいと思ったからです。

 もっとフラットな状態で書評を読みたい、とお考えの方にはこのサイトは不向きかもしません。
 けれども、わたし自身、身体を壊して寝込んでいた時期に、知らない本を読む前にはかなり詳しく書評を確かめてから読んでいた経験があり、そんなサイトがこの世にひとつくらいあってもいいのではないかと思い、運営しています。

 グリーン・ノウは、しみじみと心にしみる物語シリーズなのですが、このお話は、哀しいお話となっています。
 最後には幸せな展開もあり、放り出されるようなバッドエンドではないものの、読む方の精神状態によっては、ダメージを受ける場合もあるため、最初にお知らせしておきます。

グリーン・ノウのお客さま グリーン・ノウ物語 4  ルーシー・M・ボストン/作 亀井俊介/訳 評論社

 これは「グリーン・ノウの川」の翌年のお話です
 今年は、トーリーはそりのあわない継母に連れ去られ、グリーン・ノウで夏をすごせなくなりました。ちょっとさみしいオールドノウ夫人。

 そんなとき、アイダという少女から手紙が来るのです。その手紙には、去年の夏グリーン・ノウで楽しく過ごしたお礼と、ピンと言う少年が夏休みにグリーン・ノウで過ごせるようにしてあげてもらえないか、と言うお願いが丁寧に書いてありました。

 オールドノウ夫人は、ピンに興味を持ち、一緒に夏をすごすことにします。

 一方、遠い遠いアフリカから、さらわれるように連れてこられたゴリラのハンノーは、動物園の檻の中で孤独に暮らしていました。学校の催しで動物園に見学に行ったピンは、檻の中でひとりぼっちで暮らすゴリラに衝撃を受けます。

 そして……

 と言うのがあらすじ。

 冒頭、アフリカで、しばらくゴリラの視点でお話が進みます。以前、「世界一幸せなゴリラ、イバンの物語」レビューでも書きましたが、ゴリラ視点とか、ゴリラの一人称とかって、かなり読むのが大変です。

 そこを超えると、舞台がイギリスの、人間の視点になります。

 今回の主人公は、中国人の難民の子、ピン。
 難民のための収容所のようなところで暮らし、そこから学校に通わせてもらっています。去年、グリーン・ノウで楽しく一緒に遊んだオスカーは、同じ施設にいた親友でしたが、やさしい夫婦に養子としてもらわれていきました。

 「グリーン・ノウの川」では、オスカーの生い立ちが少しだけオスカーの視点で書かれていましたが、ピンについては何も触れられていませんでした。オスカーはポーランド人で、どうやら父親は思想家であったらしいこと、そして家族は処刑されてしまったらしいことが想像されました。子ども視点の記憶なので、はっきりとしたことはわかりませんが、オスカーが「自分自身の考えをもつ」ことがどれほど大切なことかを力説するシーンがあります。

 今回は、はじめてピンの過去が明らかになります。
 お父さんが「ある人」を家に匿ったことから、ピンが出かけているあいだに家族全員が死に、家が焼き払われていたのでした。ピンは子どもだったので、子ども視点では詳しいことがわからず、「遊びに行って帰ってきたら家がなかった」くらいしか覚えていません。

 そんな哀しみと寂しさを胸に抱いていたピンは、オールドノウ夫人のもとで、のびのびと夏休みをすごせるようになりました。

 オールドノウ夫人が、食器棚の奥から出してきた蛍焼きのお茶碗でお茶をふるまったとき、ピンが「お母さんがこんなお茶碗でお茶を飲んでいた気がする」と言うのが泣けます。

グリーン・ノウシリーズ ルーシー・M・ボストン/作 亀井俊介/訳 評論社
グリーン・ノウ六巻セット

 やがて、行く場もなくグリーン・ノウに流れ着いたようなピンと、遠いアフリカから運ばれてきたゴリラのハンノーの運命が交錯します。

 最初は二つのお話の流れがあまりにも遠すぎるので、どうやって合流させるのだろうと思うのですが、最後は見事に太い川となってラストへ流れ込んでゆきます。

 ラスト近くに胸が潰れるようなシーンがあるため、あまり詳しく書くことが出来ません。
 でも、最後は「幸せとは何か」と言う、本質的なところまで物語は問いかけてきます。

 たった三日間であっても自分らしく生き、短い生涯を終えるのと、自分らしさを捨てて孤独だけれど安全で長い人生を選ぶのとどちらが幸せなのでしょう。そんな永遠の謎のような問いです。

 ただ、そのふたつしか選択肢がない、と言うのがそもそもの理不尽なんですけれども。

 読んだ後、ただ「読んだ」だけではすまない、様々な想いが湧き上がってくる物語です。哀しいお話が受け止められない状態の方にはおすすめできませんが、状態のよい時、「いまなら読める」と言うときには、ぜひ。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 哀しいお話です。精神的に限界で、哀しいお話を受け止められないときはおすすめしません。けれども、感受性の鋭い方のほうがたくさんのことを受け止められる、美しい話でもあるので、「今なら大丈夫かも」と言う時があれば、そのときに挑戦してみてください。
 著者の自然や庭、動物たちへの愛が伝わってきます。とりわけ今回は、ゴリラへの愛があふれています。

 フルーツを食べるシーンが多いので、読んだら食べたくなるかも。お好きな果物とお茶をご用意ください。

グリーン・ノウシリーズ順番

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